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「困窮者支援」 ③対応 自発的な行動、相談促す

 東松島市からの委託で「市くらし安心サポートセンター」を運営する同市社会福祉協議会。困窮に伴う援護資金貸付や食料支援などの相談を契機に、各専門機関と連携しながら課題解決や自立への後押しを進めている。相談者の事情を聞き、困窮原因を調べ、金銭の使い道に課題があるなら出費など家計を見直す。生活保護要件に該当する場合は市役所へ。該当・希望しない「制度の狭間」の人も、自立支援法に基づきサポートしている。

 元行員で平成27年度から社会福祉の世界に飛び込んだ同センターの及川貴之所長(44)。「きょう食べるものがないという相談は、銀行時代聞くことのなかったもの。地域にこれだけ苦しんでいる人がいるのかとカルチャーショックを受けた」と当時を振り返る。

 これまで数多くの相談を受けてきたが、「可能な限り生活を維持しようと努め、限界に直面してから相談先を調べ始める人が多い。早期の相談がポイントなのだが、相談窓口である我々からのアプローチにも限界があり、どうしても受け身になりがち」という。

谷地自治会と専門機関が住宅地図をもとに情報共有を実施

 市社協では、日頃の見守りや地域連携の中での声掛け、独自のフードドライブ事業、ハローワーク石巻の協力による就労相談会を実施。今年からは支援対象者の掘り起こしのため、民生委員や自治会役員、包括支援センター職員と地域情報を共有する場を設けた。得た情報を皮切りに支援が必要な世帯へのアプローチを検討している。

 同市の谷地地区での会議では、ゴミ捨て当番や百歳体操への参加状況、病気など心身の変化、空き家の確認など住民ならではの目線から得た細かな情報を共有。「Aさんは先日旦那が亡くなり、身体的にもごみ当番や買い出しが難しい」「その家に野菜やおにぎりを届けている。中部包括でも見守りしてほしい」と対応を確認した。

 一方、地域の困窮世帯に関する話題になると、途端に情報が不足する。安積強谷地自治会長は「たとえ困っていても、簡単に吐露してもらえるものではない。『お金に困っている』という話をすること自体、相手に迷惑をかけると考える人も多い」と分析する。

 民生委員や包括センターも「高齢者には体調どうですかと声掛けできるが、若い世代へのアプローチが難しい」と若年層対応に課題を感じている。民間団体による地域食堂も掘り起こしの貴重な機会だが、「困窮していますか」と聞くわけにもいかず、とにかく困り事がないかを声掛けし、自発的な相談を促すしかない。

 及川所長は「フードドライブ事業に取り組む中、支援要請を受ける機会もあり、それが対象者とのつながりを持つ契機にもなっている。地域の協力を得ながら、早期の発見や自発的な相談につなげたい」と語っていた。

 困窮に関する相談は勇気がいること。一歩を踏み出す際に、後押しする存在はもちろん、相談することの利点を周知することも自発的な行動を促すために必要だ。【横井康彦】


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