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文化拠点は白亜の殿堂 複合施設 まきあーとテラス船出

 被災前から老朽化で建て替えが決まっていた石巻市民会館と東日本大震災による津波をもろにかぶって壊滅状態となった石巻文化センター。その両方の機能を併せ持った複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」が石巻市開成に完成した。道路などハード面の復興が目に見えて進む中、人々の心を癒やす場所が日の目を見るまで10年の歳月が費やされた。動き出した施設に血が通うのは、これからだ。

 こけら落としと言う会館の誕生祝いは、コロナで吹き飛んでしまった。感染者の急増で3月18日に県独自の緊急事態宣言が発令され、同28日に予定されていた開場記念式典のほか狂言の人間国宝、野村万作さんらを招いての公演は、直前になって中止が決定した。

 震災から10年という節目の3月11日に行われた追悼式が最初の行事。正式な開館日の4月1日は静かなスタートとなった。

 実質的に最初の公演となったのは、4月29日に大ホールで行なわれた「宮川彬良×ぱんだウインドオーケストラ」のコンサート。宮川さんの軽妙なトーク、父の宮川泰さん作曲の「宇宙戦艦ヤマト」などで盛り上がり、大きな拍手が新たな施設誕生の喜びを感じさせた。

青空に映える真っ白な外観の「マルホンまきあーとテラス」

 ホールの音響は、30年ぶりに石巻公演を行ったNHK交響楽団の指揮者尾高忠明さんがお墨付きを出して、関係者を勇気づけた。ほかに三山ひろしさんが演歌歌手第一号として公演。11月には、人気番組「笑点」の公開収録が行われた。

 これらは会館の自主公演ではないが、各方面に積極的にアプローチした側面もあり、今後も会館の努力が期待される。

 6月から9月にかけて開かれた「アニメージュとジブリ展 一冊の雑誌からジブリは始まった」みやぎ石巻展も大きな話題を呼んだ。

 11月3日には、石巻市博物館がオープン。郷土が誇る彫刻家、高橋英吉の主要作品、全国的に知られる毛利コレクションはそれぞれ独立した展示室に。石巻地方の歴史を紹介する常設展も公開されたが、十分な広さがないこともあって、総花的であっさりした印象は否めない。

 博物館を含め、まきあーと全体の公式サイトが、利用者ファーストになっていない点にも不満の声が聞かれた。楽屋の使い勝手のよさなど出演者側の評判はおおむねよさそうだが、日本語のデザイン文字の案内表示が読みにくいといった意見も寄せられたという。マイカーを持たない人たちのアクセスの問題も大きな宿題だろう。

 ともあれ、ようやく船出はした。コロナの状況を見ながら「課題にはその都度対応して、やれることをやっていきたい」と勝又正司支配人は気を引き締めた。【本庄雅之】


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