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旬直撃 ホヤ貝毒で出荷規制 生産者悲鳴「打撃深刻」 県8海域に細分化検討

 宮城県産のホヤから国の規制値を超すまひ性貝毒が検出され、出荷の自主規制が続いており、最盛期を迎える中で生産者は悲鳴を上げ、販売店も頭を抱えている。韓国への輸禁措置や新型コロナウイルスの影響に伴う販売不振に追い打ちをかけ、北部、中部海域では飲食店が徐々に再開する中でも出荷ができない苦境にある。出荷再開は3週間連続で規制値を下回る必要があるが、今も出荷のめどは立っていない。【渡邊裕紀】

 ホヤ貝毒は、北部海域(気仙沼市から南三陸町)、中部海域(石巻市と女川町)から検出され、出荷が停止されている。南部海域(石巻市黒崎から山元町)は検出されておらず、通常通り出荷されている。ホヤの最盛期は6―7月であり、出荷自主規制の解除には3週間連続で規制値を下回らなければならない。

 中部海域にある石巻市雄勝町水浜の漁業者で構成する㈱海遊(伊藤浩光社長)は、鮮度や品質にこだわった海産物を個人や飲食店に届けている。新型コロナ禍で出荷先の仙台市や関東圏の飲食店が営業自粛し、そのあおりで売り上げは昨年の2割以下まで落ち込んだ。

貝毒検出でホヤ出荷規制 (9)

5月初旬は幾分水揚げがあったが、18日以降は自主規制に(雄勝町水浜沖)

 ホヤのシーズンを迎え、巻き返しを図ろうとした矢先、貝毒で5月18日から出荷ができない状況となった。昨年は約10トン出荷していたが、今年はほぼゼロ。中部海域では9日の検査でも規制値を超えていたため、今後値が下回っても、規制解除は早くて来月以降になりそうだ。

 伊藤社長は「貝毒でホヤが出荷できないのは初めて。例年なら今が最盛期で、年間の半分近く出荷しているだけに打撃は深刻」と頭を抱える。現在の検査海域は北部、中部、南部の3つであり、規制範囲はカキやホタテと比べても広い。

 伊藤社長は「検査海域を細分化し、漁業者の影響を小さくしてほしい」と話す。海域再編は多くの漁業者の声でもあり、県では検査海域を北中南の3海域からホタテと同じ8つに細分化する見直しに前向きな考えだ。


販売店「先見えない」

 同市大森でホヤ直売所「ふみの家」を開く阿部ふみさん(42)も出荷自主規制の影響は大きい。例年、夫の智和さん(43)が同市鮫ノ浦で養殖したホヤを店頭に並べるが、今年は規制前の5月17日までに水揚げした少量にとどまり、店頭にあるホヤは、むき身の冷凍パックが2つ。

 阿部さんは「昨年は約3トンの扱いがあったが、今年はほぼゼロの状態」と話す。旬の時期を待ちわびていた常連客から電話が来るたび、貝毒で出荷できないことを説明する日々が続く。

貝毒検出でホヤ出荷規制 (7)

冷凍のまま保存されているホヤのむき身はあるが、需要は生食であり、水揚げを待つ日が続く(5日、ふみの家)

 「多くの人に届けられるよう、しっかりと段取りしてきたが、先が見えない」と阿部さん。5、6月は売り上げが厳しく、夏のイベントも軒並み中止となる中、出店の収入も見込めない。

 漁業者や販売店に追い打ちをかける貝毒検出は、今のところ出荷再開の道筋が見えない。旬の時期における影響は大きく、生活を直撃している。


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