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第2信 縄文時代の石巻へ|拝啓、博物館より

 拝啓、新緑の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 先月の第1信はお読みいただけたでしょうか。ありがたいことに第1信掲載後、早速、新聞を見て来館されたお客様が多数おり、当館としてもうれしい限りです。さて、今月からは常設展示室の各コーナーをご紹介していきたいと思います。毎月1コーナーずつ展示の見どころをご紹介しますので、お楽しみいただけますと幸いです。

海のめぐみと縄文時代の石巻人

 今月は、歴史文化展示室より先史時代をご紹介します。
 石巻地域は親潮と黒潮がぶつかり合い、世界三大漁場にも数えられるほど資源の豊富な海を有しています。この豊かな海は、縄文時代の石巻人にとっても漁撈活動の格好の舞台となりました。国指定史跡である沼津貝塚に代表される、貝塚が特に多いことも、この地域の特徴です。

牡鹿半島給分浜にある中沢遺跡の発掘調査を現場を再現した展示

 縄文時代、現在の北上川流域の平野部はほとんどが海水面でした。縄文時代早期末から前期はじめ(約7千年前~6千年前)にかけて、陸地だった部分に海面が侵入する「縄文海進」がみられました。沼津貝塚や南境貝塚にもその痕跡を見ることができます。

発掘調査は当時の暮らしを知る手がかり

 先史時代の展示でまず目に飛び込んでくるのは、実際の発掘調査の現場を再現した展示です。牡鹿半島の給分浜にある中沢遺跡の発掘調査の様子を再現しています。文字のない縄文時代は、発掘調査によって得られる情報が、当時の人びとの様子を知る大きな手がかりとなります。発掘調査によって発見される建物の跡や出土する土器・石器などから、その時代の人びとがどのような暮らしをしていたのかが見えてきます。

先史時代展示室

 地層は下の層になればなるほど時代は古くなります。今、私たちが立っている地面の下には、その土地の歴史が層として積み重なっているのです。どの層がどの時代に対応するのか、各層の年代を特定する上で、出土する土器や石器がポイントとなります。特に土器の文様が地層の年代特定において重要です。

縄文時代と土器の編年

 縄文時代は草創期、早期・前期・中期・後期・晩期の6つに区分されます。早期・前期は、煮炊きに適した深鉢型が多く、早期は底が尖(とが)っている尖底(せんてい)土器、前期になると底が平らな平底になります。中期になると深鉢(ふかばち)型、浅鉢型、壺型、注口(ちゅうこう)など用途に応じた様々な土器があらわれます。ダイナミックな渦巻文も特徴です。後期になると、さらに土器の種類は増え、薄く小型化し、曲線的になります。晩期には、後期と同じく小型のものが多いのが特徴ですが、装飾的な文様はなくなり、洗練された美しい土器が増えていきます。

土器の編年展示

 縄文時代と一言で言っても、とても長く、縄文土器も時期により、特徴は大きく異なります。文字がない縄文時代には、出土する土器から得られる情報は、非常に重要になるのです。

貝塚ってどんなところ?

 冒頭で石巻地域は貝塚がとても多いと書きましたが、そもそも貝塚とはどんなところなのでしょうか。貝塚とは、その名のとおり、たくさんの貝殻がみつかる場所のことです。他にも動物や魚の骨、壊れた土器や石器なども見つかっています。これまで貝塚は、単なるゴミ捨て場と考えられてきましたが、ペットとして飼われていた犬の骨や丁寧に埋葬された人骨も見つかっており、縄文人にとっては神聖な場所であったことが分かってきました。また、貝塚をみていくと、貝殻の種類などから、時代によって食べ物が変化していく様子も分かり、そこから当時の気候や風景の変化も知ることができます。

南境貝塚出土土器(毛利コレクション)… 南境貝塚から縄文時代後期前葉の特徴を示す文様が描かれた土器がまとまって出土していることから、南境貝塚標識遺跡となっており、仙台平野から三陸南部の縄文時代後期前葉の土器を「南境式」と呼びます。

 現代人にとって貝塚は、当時の暮らしを知るタイムカプセルのような場所なのです。市内には、沼津貝塚、南境貝塚、宝ヶ峯貝塚などの大規模な貝塚があります。特に沼津貝塚は、国指定史跡にも指定され、毛利総七郎や東北大学考古学研究室などにより、幾度も発掘調査が行われてきました。釣針や銛などの漁具、櫛やかんざしなどの装身具をはじめ、種類・質ともに優れた骨角製品がたくさん出土し、学術的にも高い評価を得ています。その一部は昭和38年(1963)に重要文化財に指定されています。

 ここまで先史時代の展示の紹介をしてきましたが、ほんのごく一部です。ぜひ博物館に足をお運びいただきいただけたら幸いです。次回は古代のお話しです。どうそお楽しみに。(学芸員・佐藤麻南)

 6月1日から始まる企画展。1300年前と1250年前に石巻地方で起きた二つの蝦夷の反乱にスポットをあて、古代の石巻地方の姿をひもときます。



石巻市博物館

〒986-0032 石巻市開成1-8(マルホンまきあーとテラス内) ☎0225-98-4831
利用案内
開館時間 9:00~17:00(最終入館16:30)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌日休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料  常設展 一般 300円、高校生 200円、小・中学生 100円 

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