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サン・ファン保存案示す 木造文化財専門の日塔さん 「福竜丸修復と考え一緒」

 水爆実験で被ばくした木造マグロ漁船、第五福竜丸の修復保存の設計管理責任者だった文化財修復の専門家、日塔和彦さん(75)が24日、慶長遺欧使節船ミュージアム=石巻市渡波=に係留されている復元船サン・ファン・バウティスタ号を視察した。同ミュージアムの濱田直嗣館長から解体決定に至る経過などの説明を受けた日塔さんは、腐食が想像以上に進んでいることに衝撃を受けながらも「修復、保存する方法はある」と具体案を示した。

 日塔さんは、1月に発足した「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」(白田正樹会長)の招きで現地を訪問。現在、船内は立ち入り禁止になっているが、同ミュージアムの好意で見学が許可された。

サンファン専門家視察

 木造建造物の修復や保存に長く関わってきた日塔さんは、昭和29年に米国のビキニ環礁での水爆実験で被ばくした第五福竜丸の修復保存の現場責任者を務めた。福竜丸は帰国後に廃船となり、都内のごみ処分場に埋もれていたのが発見され、保存運動が始まった。現在は同51年に開館した都立第五福竜丸展示館で公開されている。

 4月に第五福竜丸の保存に関するシンポジウムで日塔さんが講演した際、世界ネットのアドバイザー、横浜国立大の平山次清名誉教授(造船工学)とつながった。以来メールでやりとりを重ね、日塔さんも保存の具体案を提供するなど協力してきた。

保存専門家がサンファン視察

スタッフの説明を受けて船内を視察した日塔さん

 7年ぶりにサン・ファン号を視察した日塔さんは、白く広がったカビやスカスカになった木材、重みでたるんだマストなど老朽化の現状を目の当たりにした。「7年で思った以上に腐食が進んだ」と一言。それでも「約140トンの第五福竜丸はもっとひどかった。サン・ファン号は約500トンと大きいが、構造は一緒だから修復の考え方は同じ」と保存の可能性を示唆。重量のあるマストは外して別に展示し、大きな囲いで船体を覆い、水を抜いて展示する方法などを提案した。

サンファン専門家視察 (2)

 日塔さんは、視察して得た知見を加えた具体案を作成する予定。世界ネットの齋藤祐司副会長は「大変ありがたい。ぎりぎりまで検討材料を示して頑張りたい」と話した。世界ネットは保存を求める署名活動も展開しており、現在は約9700筆と目標の1万筆が目前となった。

 世界ネットが解体に伴う県の予算執行停止などを求めた監査請求結果は、来月上旬には回答が出る。県は10月ごろ解体工事に着手する見込み。【本庄雅之】


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