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サン・ファン号解体始まる 建造から29年 歴史に終止符

 県は10日、木造復元船「サン・ファン・バウティスタ号」の解体工事に着手した。老朽化のため、現存のままでの保存を断念してから約4年。係留先の県慶長使節船ミュージアム=石巻市渡波=では、ついにマストの撤去作業から開始された。平成5年10月に竣工式が華々しく行われ、東日本大震災でも流出を免れた復元船は、建造から29年で歴史に終止符を打ち、来年3月末までに姿を消す。

市民団体「もったいない」と声

 午前9時すぎ、サン・ファン号のマストに直結する板敷の通路が渡され、近くにはクレーン車が横づけされていた。1日に村井嘉浩知事が10日からの解体を表明し、3日から6日間でミュージアム入館者は通常の3倍近い1183人に上った。

 1613年、仙台藩主伊達政宗の命を受けた支倉常長ら使節団はサン・ファン号に乗り込んで石巻を出航。日本で初めて太平洋、大西洋を巡航する偉業を成し遂げた。それから約380年、船は原寸大で復元され、船体建造費17億円のうち、約5億円は県民の募金で賄われた。

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場内にクレーンが入り、解体作業が始まった

 設計図が残っていなかったため、船舶工学の第一人者だった横浜国大の寶田直之助教授が海外船を研究して精密に再現。村上定一郎さんら船大工数十人の技術を結集し、二度と作れない最後の大型木造船と言われた。

 使われた木材は宮城、岩手の松約4千本、杉約1300本など。全長55.35メートル、最大幅11.25メートル、メインマストの高さ34.43メートル、500トンの雄姿は、石巻市をはじめ、県民に大きな夢と希望をもたらした。

 平成8年にミュージアムが完成し、船はドック入り。震災では難を逃れたが、後に強風でマストが破損。休館していたミュージアムは25年11月に再開するもサン・ファン号の老朽化が判明。一般乗船を取りやめ、有識者の提言を受けて県が解体を決めた。

サンファン解体工事始まる (82)

船を見下ろす場所からコールを上げる想う会のメンバー

 これに対し、市民団体の「サンファン号保存を求める世界ネットワーク」(白田正樹会長)は、検討不十分のまま解体するのは違法として工事差し止めの訴訟を起こし、現在係争中。別の市民団体「サン・ファン・バウティスタ号を想う会」の足立弦子共同代表らはこの日、現地で工事の様子を見ながら「もったいない」などと声を上げ、工事延期を訴えた。

 サン・ファン号は解体後、4分の1の大きさの繊維強化プラスチック(FRP)で後継船が作られ、令和6年度のミュージアムのリニューアルに伴い展示される予定。【本庄雅之】

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