アルモンデごはん 知らないところで繋がってる
歳を重ねるごとに、世界は知らないことばかりだと知るのです。無知の知。それは私にとって嬉しいこと。新しい出逢いがこれからもたくさんあるのだから。
毎年のように筍掘りをしていたのに、土の中であんなにも強固に、無限に竹のネットワークが広がっているなんて知りませんでした。表層しか見てなかったんだな。この春、ほんの少しだけ竹世界の深淵を覗かせてもらいました。我が家に持ち帰った筍は、一つ残らず大切にいただきます。捨てたりしたら、この地球の竹族に「こいつに筍を食う資格なし」の烙印を押されてしまう。これ、あながちファンタジーではない気がするんです。
<4月15日>
お世話になっている農家さんから、ちんげん菜が10株ほど届きました。嬉しい。ちんげん菜って年中店頭に並んでいるけど、路地ものの旬はもうすぐ終わりです。毎日満遍なく色々な種類の食材を食べる、というのは畑から離れている証拠だね。畑にはその時期育つ野菜だけが山のようにあって、季節外れのものはない。毎日同じ味じゃ飽きてしまうから、調理法や味付けを変えて最後まで味わい尽くす知恵が生まれたのかもしれませんね。アルモンデやりくりする楽しさもあります。
大量の何かが届いたら、祭りのスタート。ちんげん菜祭りの始まり始まり♪初日は定番の炒めもの。新生姜と干しエビの塩炒め。多めの油に新生姜と干しエビを入れて、弱火で香りを移してからちんげん菜を炒めるのが、私のスタンダードです。早いかな?くらいで火を止めて、余熱で熱を入れるとシャキとろに仕上がって最高なのです。
<4月16日>
ちんげん菜祭り2日目。今日は煮込もうかなぁ、とストックをガサゴソしていたら、油麩と目が合いました。ふふ、今夜はこの組み合わせに決まり。
馴染みがない方も多い油麩だけど、VEGAN&プラントベース食では大活躍する食材です。私は煮物にして食べるのが好き。揚げたお麩なので、油のコクがあるし、旨みをたっぷり吸い込んでくれるんです。
ちんげん菜の上にぬるま湯で戻した油麩をのせて、味醂だけでコトコト煮込んだら、仕上げにお醤油を加えて甘辛味に。甘辛いお汁が染み込んだふわふわの油麩と、甘くトロトロになったちんげん菜の組み合わせ。米が止まらない…。よっ、飯泥棒!おかわり回避なんて無理。
<4月17日>
朝から猛烈にキャベツを欲した日。キャベツにかぶりつきたい欲求に駆られて、顔を洗ってすぐに春キャベツを焼き始めました。煩悩に満ちた一日のスタートだ…。
冬のむっちりしたキャベツを弱火でジクジク焼くのも好きだけど、春の軽いキャベツを強火でジューと焼くのも好き。塩だけで食べようかどうしようか、冷蔵庫を覗くと柔らかくなり始めたミニトマトを発見。ラッキー。キャベツを取り出したフライパンに、横半分にカットしたミニトマトを並べて煮崩します。形が崩れたら塩麹で味をつけて、食べるソースの準備完了。大きな口を開けてキャベツとトマトを頬張りながら、春っていいなぁと思うのでした。
<4月18日>
ちんげん菜祭りも終盤。締めは大好物の和えものです。無水で茹でたちんげん菜を塩昆布と和えただけという、シンプル過ぎる一品。うっすらした葉の苦味、ジューシーな軸の青い甘みをしっかりと味わうことができるから。煮ても焼いても茹でても蒸しても、少しずつ個性を変容させて自己主張しすぎない。ちんげん菜の魅力を再確認する祭りの日々でした。あっという間だったなー。名残惜しいくらいがちょうどいいのかもしれません。来年もまた祭りが開催できますように。
<4月19日>
昨年に引き続き、友人の家に筍堀りへ行ってきました。到着後すぐに探索開始。ひとつ見つけると、ここにも、あそこにも!と、筍のもぐらたたき状態。汗をかきながら夢中で掘り出しつつ、おしゃべりしつつ、気づけば1時間が経っていました。一息ついたら火を起こし、その場ですぐに筍を茹で始めます。鮮度が命と言われる筍。掘って数十分後に茹で始められるなんて…。用意してくれた友人には本当に感謝です。
今回筍を掘り起こしながら、初めて知ることがたくさんありました、筍には立派な根っこがあること。竹の地下茎である筍は、本当に竹と繋がっていること。大地の下には無限に竹のネットワークが張り巡らされていました。分かりづらいかもしれませんが、画像の真ん中の黄色い棒は竹の根っこ。ここに筍がくっついてるんです。臍の緒を切り落とすかのようにこの接続部分を切り落とすと、王蟲のような食指(若い根っこ)がぎっしりついていました。竹の生命力、恐るべし。食べる側にも力がないと、受け止めきれない。芽吹きの力、小さな命のエネルギー。本来は動物だけでなく植物をいただくときも、食うか食われるかという覚悟が必要とされてきたんじゃないかな。火の番をしながら、そんなことを考えていたのでした。
<4月20日>
昨日の筍。それは初めて食べる筍の味でした。友人の家の筍だからなのか、掘ってすぐに茹でたからなのか、井戸水で茹でたからなのか、この美味しさの理由と思われることはたくさんあるけど、きっと全てが重なってこの味になったのでしょう。口に入れた瞬間のほんのりと香ばしい香り、噛み締めた瞬間に感じる甘み、爽やかな後味。エグミなんて全くなくて、しばし呆然とするほどでした。茹でた筍を薄くスライスしてひと塩パラリ。美味しくて美味しくて、鼻の穴を広げながら無心で食べました。筍を口に入れて鼻からふーっと息を抜くと、それはそれはいい穀物の香りがするんです。そっか、筍ってイネ科だったね。
<4月21日>
我が家は絶賛筍祭り中。あれもこれも作りたいのに、一人ではそんなに一気に食べられない。悔しい。大家族になりたい。
祭り第一弾は、定番の筍ご飯(写真撮り忘れ)。第二弾はグリーンカレーです。グリーンカレーに入っている筍、大好き!だけどお店で食べるグリンカレーでは、筍はセリフのない通行人Bみたいな存在。今こそ主役になる時です!(大興奮)
グリーンカレーは大好きだけど、辛いのは得意じゃなくて、いつも鼻水垂らしながら食べている私。冷凍の青唐辛子と先日買っていたパクチーがあったので、久しぶりにペースト作りから始めました。自分で作ると、辛さの調節ができるからいいな。グリーン要素のバジルはなかったので、代わりに紫蘇を使ってみました。出来上がりは緑色の主張がない、ほぼホワイトカレーになってしまったけど、ごろごろの筍を思う存分食べて大満足です。筍とココナッツミルクの組み合わせ、神!と手を合わせたくなるくらい美味しかったな。おかわりをよそいながら、「次は何を作ろうかなぁ」と妄想してる、頭の中までお花畑な春です。(一年中春)
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