選抜出場:東海大菅生の歩み【秋季大会】
2020年9月19日に秋季大会1次予選の1回戦。対「都立小川」戦にて彼らの新チームでの公式戦が始動した。
会場校としてはまずは予選を勝ち抜くこと。それは各々会場校として運営する野球部に共通する目標だ。
普段であれば夏休みを通し合宿や練習試合を多く重ね、チームを完成させ挑むのだが、2020年はコロナ禍によりどこの高校も例年通り満足に納得のいくチーム作りが出来たかといえば難しい。それは夏季東京覇者になった「東海大菅生」も同じ。
故に相手がどこであれベストなパフォーマンスを常に発揮し続けることが出来なければ、秋季大会を勝ち抜くことは難しい。
それでいえば「東海大菅生」は最高なスタートを切ったと言える。
「都立小川」戦では毎回得点。本塁打を含む長打を6本叩き出し、21–0と快勝。
続く代表決定戦での対「順天」戦でも勢い衰えず、同じく毎回得点の5回コールドで難なく予選を勝ち抜いた。(19-0)
迎えた秋季大会本戦。初戦の相手は「本郷」。引き続き戦う相手は全てブロック予選を勝ち抜いてきただけに油断は出来ない。しかし「東海大菅生」は圧倒的であった。
レギュラーメンバー、控え選手共に試合に出場した選手全てが大活躍。気付けば15得点を叩き出す猛攻を見せ、5回コールドで初戦を飾った。
背番号一桁から20番まで。選手一人一人の力量の差は少ない。
投げては投手陣も抜群の安定感を見せる。
続く2回戦の対「目黒日大」戦でも勢いは止まらない。
満塁本塁打も飛び出し、10-0の5回コールドで勝利を掴む。
特にこの試合ではエース・本田の抜群の安定感に加え、積極的な盗塁や走塁を魅せ隙のない攻撃力を存分に発揮した。
足と長打を絡ませた攻撃は続く3回戦の「桜美林」戦でも爆発させる。
「桜美林」は過去に甲子園優勝も果たし、2019年の夏季西東京大会では「日大三高」を倒した実力校。
「全国制覇・日本一」を目標に掲げる「東海大菅生」にとっては最初の壁である。
2試合連続完封の桜美林エース・岸を相手に足を絡めた攻撃で先制。
相手のエラーも重なりながらも、決して隙を見せず攻撃の手は緩めない。
本塁打も飛び出し気付けば8回コールドで勝利を収めた。(10–2)
【準々決勝-日大二高戦】
迎えた準々決勝。相手は夏の準々決勝でも戦った「日大二高」。
夏には「東海大菅生」が勝利を収めたが、終始もつれる展開が続き、油断ならない強豪校である。
「日大二高」もブロック初戦から続き、合計「56点」を叩き出し圧倒的な攻撃力と打線の強さを見せている。
注目の1戦は前評判通り、接戦となる。
2回裏に6番・岩井の本塁打で「東海大菅生」が先制点を掴み取り流れを作る。
しかし日大二高先発・大野が踏ん張り、守備の好守もあり傾きかけた流れを均衡に戻す。
スコアボードにはその後両チームともに「0」が並び続ける。
迎えた終盤8回表に、日大二高はバッテリーミスなどで3塁まで進めると、3番・藤井の左前前安打で同点に追いつく。
押せ押せムードの流れを、東海大菅生はエース左腕・本田から右腕・鈴木に変えると、ショート・岩田の好守もあり、後続を断ち切り勝ち越しを許さない。
その裏、疲れが見え始めた日大二高・大野の前についに打線が繋がりを見せる。
1番・千田 の中前安打で出塁し、3番・橋本 の左前安打と左翼手の失策で二、三塁となれば、4番・堀町 の死球で満塁。6番・岩井への四球で押し出しとなって勝ち越し。さらに7番・小山 凌暉の右前安打で2点を追加。失策も加わりこの回東海大菅生は4点を掴み取り試合を決めた。
粘り強い戦いで、ベスト4を決めた「東海大菅生」。
舞台は「神宮球場」へ移し準決勝。迎えた相手は東東京の強豪「関東第一」
【準決勝–関東第一戦】
「関東第一」は「駒大高」「都立日野」「八王子」といった実力校を打ち破っての進出。加えて先発は常時140Km超を投げ込むプロ注目の右腕・市川である。
試合は両者序盤に3点を奪い取り3−3の膠着状態へ。
試合は8回表に再び動き出す。一死後2番の福原を四球で出し、4番・堀町の左前安打で一、二塁。5番・小池の左前安打に、俊足を飛ばして福原は一気に生還し勝ち越し。東海大菅生はここまで武器にしていた「走塁力」を持って試合を動かし始めた。更に代打・山田の二塁打で点を加え、2点差のリードを作る。
しかし8回裏・エース左腕・本田に代わりこの大会好投を続けていた鈴木が安打と押し出しにより1点差に縮めてしまう。
だがそれでも「東海大菅生」の勢いは衰えない。
先頭・岩田が四球で出塁するとすかさず2盗を決める。鈴木への代打・藤井の右犠飛で3塁まで進めば、続く1番・千田の中犠飛で追加点を挙げた。
迎えた9回裏。マウンドに上がったのは中堅手の千田。公式戦初登板である。
「気持ちの強さ、勝つことへの執念」を見込まれ、若林監督が起用した千田は見事期待に応え、関東第一の追撃を振り切り、6年振りの決勝進出を掴み取る。
【決勝-日大三高】
迎えた決勝戦。勝利すれば選抜への出場が確定する大事な一戦である。
相手は同じ西東京地区のライバルであり、名門「日大三高」。
日大三高はここまで「小山台」「日大豊山」「二松学舎」の強豪校を打ち破り決勝まで勝ち進んできた。
更には決勝のこの日は準決勝とは大幅にスタメンを変え、これまで先発で好投してきた宇山では無く、準決勝でリリーフでマウンドに上がった岡村を先発投手に起用。
一方「東海大菅生」はエース左腕・本田が先発。
コロナ禍で制限が掛けられている中の超満員。注目の1戦は「東海大菅生」の投打に持ち味を存分に発揮した1戦となった。
1回裏「東海大菅生」は1番・千田が左前安打で出塁し、2番・福原が送り、4番・堀町の左前安打で流れるように1点を先制した。
2回裏には9番・本田 のレフトオーバーの適時二塁打で追加点を手にすると、「日大三」は岡村を諦め、この大会好投している宇山 翼をマウンドに送る。
宇山はキレの良い変化球を持って「東海大菅生」打線を翻弄する。
一方「東海大菅生」先発の本田は抜群の安定度を誇り、4回まで日大三高打線を無安打に抑える。
しかし5回表、先頭の5番・井坪 が四球で出塁、6番・鎌田が送り、8番・安田がこの試合、「日大三高」初安打となるレフト線に二塁打を放ち、1点を追加する。
しかし本田は決して崩れることなく、後続を断つとそのまま7回まで好投。7つの三振を奪う好投を続ける。
そして7回裏。「東海大菅生」は安打と四球により満塁のチャンスを作ると、バッテリーミスにより待望の追加点を挙げる。流れは一気に「東海大菅生」へ傾く。
続く小山は一ゴロ。ここで一塁手の林の送球エラーにより、2人が生還した。
小山も小池の左前安打で生還し、この回一挙4点を挙げ、「優勝」が近付く。
本田へ代打を出したことで、8回からは鈴木がリリーフ。危なげなくイニングを締めると、最終回は準決勝の「関東第一」戦で初登板を果たした千田がマウンドへ。四球と失策の走者は出したものの、最後は6番・鎌田を三振に仕留め、見事6年振り3度目の優勝を決めた。
結局この試合で東海大菅生は3人の投手が登板して、終われば打たれた安打は2本だけという、完璧に近い内容で優勝を飾った。
東海大菅生はこの年、独自大会の夏季西東京大会を制し、東西対決では東東京覇者「帝京」を下し「東京No1」の称号を手にした。
続く秋季大会でも見事優勝を果たし、2020年の公式戦は無敗で終えたことになる。
東海大菅生は「日本一」を目標に掲げ、練習に取り組んでいる。
選手全員が監督を信じ、また監督も発破を掛けながらも選手を鍛え信じている。そして何よりも攻守に渡り隙のないチーム。
春の甲子園では過去3回、勝利はない。
だが今年のチームは充分に全国でも勝ち抜ける戦力を揃えている。
【秋季大会戦績】
2020年度秋季東京都高等学校野球大会 一次予選 第2ブロック
●1回戦 東海大菅生21 - 0 都立小川
●A代表決定戦 東海大菅生19 - 0 順天
2020年度秋季東京都高等学校野球大会
●1回戦 東海大菅生15 - 1 本郷
●2回戦 東海大菅生10 - 0 目黒日大
●3回戦 東海大菅生10 - 2 桜美林
●準々決勝 東海大菅生5 - 1 日大二高
●準決勝 東海大菅生7 -5 関東第一
●決勝 東海大菅生6 - 1日大三高