見出し画像

冬休み用読み物 Q:海外大学行きたい、は良いとして何が目的か。(その目的に応じてどういうルートがあるのか。)

秋口忙しくメインの続きは滞ってますが、意欲がある方々、意欲は良いとして、何をやりたいかについては雑な話が多い(そりゃ行ったことものを想像と憧れだけで言うから仕方ないけれども)ので、そういう高校生が冬休みにちょっと落ち着いて考える用の小咄を。結論を一言で言うと「学位を取るかどうか」がポイントだと思っています。単に「海外なら何でも良い」なら交換が一番簡単で安いが、学位を取るかどうかでルートが変わってきます。…じゃあ、そもそも学位とはという話で…。(※写真はがOISE分は12/8にあったコロナで中止になってたのに2020と2021の人向け卒業式でっす。2週間ぐらい学部・研究科に分けて卒業式しまくりのトロント大学。)

学位留学
:外国にある大学の正規学生として入学して学位取得(卒業)を目指す
・目的:同上
・期間:修業年限に応じる(3-4年)
・学費:現地制度に応じる(無償な国もあれば、高い国も)
・難易度:国や大学により幅がある
・メリット:現地学位が取れる、長期間行ける、移住を考えると有利
・デメリット:費用、語学力、難易度についての情報が少なく入れるかどうか分かりづらい、個人のお気持ちで制度的根拠に基づかない留学ツイートやブログ書いてる無駄な情報が多い

ダブルディグリー、ジョイントディグリー:日本の大学と国外大学が提携し共同学位プログラムを提供しているものに、日本側から入学して参加する
・目的:学位取得
・期間:双方での要件を満たすまで(最低2年)
例:立命館とAmerican U (アメリカ、ワシントンDC)のプログラム
https://www.ritsumei.ac.jp/studyabroad/program/univ/advanced/program02.html/
・学費:大学に応じる
・難易度:日本の入試で入るので大学次第、学内専攻は最近あんまり人気ないので楽だと
・メリット:現地学位が取れる、長期間行ける、大学の支援を得て渡航出来る
・デメリット:費用(安くはない)、語学力、2年で80単位(昔は90でしたが)取るの結構キツい(アメリカの普通コースロードは学期15単位)、プログラムのある大学が限られている、特に学部レベルは少ない

交換留学(Exchange):日本の大学に入学→提携先の国外の大学に1~2学期行く
・目的:語学や専攻分野についての海外経験を積む
・期間:同上
・学費:日本の大学の学費を払い、現地分は基本的には不要
・難易度:成績や語学のスコアに応じた学内選考
→条件は学内で提示されているので、そこに向け早めに準備すればそこまで難しくはない
・メリット:大学の支援が受けて渡航出来る、最長で1年程度は行ける、学費も安め
・デメリット:大学や学部学科によって行き先や内容の充実度が異なる、単位変換はされるが日本の大学を4年で卒業して就職も通常のスケジュールで、とやると途中留学挟むのは計画性が必要

休学しての留学(Free mover):日本の大学を休学→非提携の国外の大学に行く
・目的:本人次第
・期間:休学可能な期間が限度
・学費:現地の学費を払うので現地制度に応じる(無償な国もあれば、高い国も)
・難易度:現地大学の交換留学枠の「残り」があれば入れる様な、メインではない制度なのできっちり選考はされる
・メリット:大学が提携していない所にいける
・デメリット:全て実費、大学の支援無し、単位変換されるとは限らない、そもそもあまりメリットが無い


学位と、それをその国で取る意味とは:日本では大学・高校の質保証が効いておらず、大学(・高校)ごとにレベルの差がある。質保証を言い換えれば『「高卒や大卒(学士)」という資格の質を、制度的に保とうとしているか』という事で、もし完全に質保証が効いていれば、国内の全ての大学のレベルが同じー大卒/学士号を持っている人が最低限の能力が保証されている、事になる。…少し難しいので、例としては医師免許と医師国家試験の関係。国家試験をパスしないと医者になれないので、その制度は「医大・医学部が大学のレベルとしてピンからキリまであっても、最終的に医師という資格を持つ人々の能力を最低限の所は保証している」という事になる。さて、大卒/学士という資格については…個々の大学が課程を修了した人に与える権限がある(学問の自由と自治という)もので、慶應義塾大学なら同経済学部の条件で学士(経済学)を、田舎の聞いたこと無い私学はそこの条件で与え、国レベルで「学士(経済学)」が分かっているべき内容は統一されていないし、医師免許の様な統一・標準試験も無いため、「学士(経済学)を持ってます」と言ってもその情報が何も意味しない。その代わりに「経済学部出たと。…で、どこの大学を卒業したの?」という所が主に雇用者にとって大事になる。

質保証が効いてない国(日・米・韓国が露骨、英もそんな感じ)と比べ、それが効いている多くの国では国内の大学は基本国公(州や公共の法人)立で、(基本的には)「国内のどこの大学も大学としてのレベルは同じ」だから社会においては「どこの大学を出ているのか(無意味な質問)」ではなく「(その分野で)大学を出ている(学士号)かどうか」が大事になる。そのため仕事を探すにも、募集要項に「その分野の専攻で卒業している事」と記載がある。

大学の制度は国ごとに異なり、一応多少の互換性はあるにせよ、世界的にかっちり決まっているものではないし、その国・その社会での生活一般では外国の学位は余程の理由が無い限りあまり評価されない。「一国の学位がどれぐらい他国で通用するかと」いう意味で、ハーバードぐらいならどこででも評価される(国際通用力がある、と言う)だろうけど、そんな物はまれで、カナダで仕事を探すにあたっては日本の学位は東大でも評価されないだろうし、それならそこまで難易度が高くなくてもカナダの(ローカルな)学位を持っている方が意味がある。そういう意味で「外国で学位を取るという」事は「その国で、自分は能力的にまともな人ですよ」と証明する方法だと考えるとよいし、逆に言えばその国以外で今後生活したいならあまり意味が無い

それを「海外進学したい→その目的は?」という当初の話題でまとめると、「ヨー分からんけど、単に行きたいから行くのだ」というので「入れそうな所に進学/学位留学して、学位を取ること」自体はちゃんと選べば十分可能でしょうが、「その先を考えないと…そのルートの妥当性が分からない」という事になる。「あるルート(手段)が目的としているものを、安く、簡単に、より確実に得るために妥当(≒正解)か」は「目的による」ので、「行きたい(目的)」から「行ける所に行く(手段)」は確かに正解ではある…が、それは「一番手前の目的に対する」正解で、もしその後の展開に重要な影響を与えるなら…ひょっとしたらもっと妥当な手段があるかもしれない、と。(そして進学は…「その後の展開に重要な影響を与える」という。)

そして、その後の展開がもし「行きたい欲は満たされたので日本でフツーに仕事したいです」というものだったら…確かに色々経験して成長したとしても、雇用者が分からない「国内で評価されない学位」を持っても就職先見つけるのは恐らく苦労すると。つまり、もしも「(手前の目的は)海外行きたい、でも(一つ先の目的は)日本で仕事したい」のであれば、「それを安く、簡単に、より確実に得るために妥当(≒正解)か」という観点からすると、「国内の交換留学が良かったんじゃないかな~」というお話になる。

もしあなたのお友達が急に「私キプロスの大学行くわ」と言ってきたら「…え、なんで?」となり、次にその友達の話を聞いて手段と目的が繋がってて理解出来る(神話や地中海文化好きすぎるとか、トルコ・ギリシャの領土紛争勉強したいとか)ものなら納得出来る。でも、それは理解してあげたい友達だからであって、やってきた後に仕事探して面接するのは別の話なわけで。「海外進学したい!」と、とりあえず言っちゃうのは、(前も書いたけど)それを考えたことの無い大半の人からすれば、そのレベルと大して変わらんので、まず少なくとも自分の中で

・行きたいという意欲自体は良いとして「真の目的」は何か(5~10年ぐらいの長さで見ると良いかも)
・そのための手段(ルート)は何がありそうか、
・手段の中でどれが現実的か(自分の中での「正解」はどれか)、
・そのために足りない物は何か(直に行くならお金か、日本の大学からならまずはそこに入れるのか)

をまとめておかないと…そもそも志望理由のストーリーすら書けないのでは?(という事は、保護者にも、進路相談助けてくれる人も、奨学金出してる団体にも、そして何より志望先にも…下手すりゃ友達のレベルにすら説明出来ないし伝わらない。説明出来ないという事は、相手も何言ってるか分からんので助けられない、となるわけで。)

ご相談はお気軽に。

皆様の課金が、さらに情報を増やし、質を上げる原動力となります。