海外大学院・専攻選び…の前の「探し方」②何を、どうやって探して、どこを見る?

※はじめに:既に分野として確立されてるResearch degree志望の人には、このレベルの話はあまり該当しないかもしれません。

こんにちは。

前回は大きな話として「”海外進学に関して”そもそも学位とは?」について書きました。今回はそれを踏まえてプログラムと専攻/コースの探し方(…の基礎となる考え方)、を書いていきます。

ここでのポイントは(相変わらず)「組織と構造で考える」という事です。大学の組織・構造は国毎に違いますが、一般的には下記のような「容れ子」になっています。
↑大
・法人としての大学:(学位を授与する→卒業証書の発行名義)
・School:学部や研究科として学位プログラム(Master's/Doctoral program)を運営する
・Department:School内での分野別の教育組織(自分のDepartment以外には一般的に用事が無いが、一部のコースは分野共通かもしれない。)
・Course:専攻、プログラム内での実際の教育が行われる(Master of Education (Higher Education)←という学位プログラム内での専攻の部分)
・ConcentrationやSpecialization:大学によってはある、副専攻様なもの。「ある分野の所定の科目を履修するとコース以外に得られる、分野の履修証明のようなもの」
↓小

この構造のプログラムや専攻を探すに当たっての意味合いは、「国によって構造が異なるため、大学のサイトに行ったときどこのページを見るのかが変わってくる」という事です。日本で大学院とその専攻を見るとなると「大学のページから学部/研究科のページを見に行く」という流れになると思いますが、それが国によっては容れ子の組織構造に応じて「大学→Graduate School→Academic Programs(出願・手続情報はここにある)→個別のSchool/Departmentの詳細案内」(北米)となったり、「大学→Academic Programs」で情報が完結したり(ヨーロッパ、オーストラリアはこっちの方が多い気がする)、「情報がそれで終わりなのか、他に見た方が良い所があるのか」が異なってきます。

本日の小技①「まずはキーワードの当たりを付ける」
最初の問題は「まずどういう括り(検索ワード)が適切かが分からない」事かと思います。

上述の組織上の差異は言い換えると「とりあえず検索して当たりを付ける」時に、「大学名、プログラム、分野、国名(例:”Masters program, education, Canada, Toronto”)検索すると、同じ大学の複数の異なるページ(大学レベルとSchoolレベルの情報)が出てきて、微妙に中身が違う」場合がある、という事を意味します。またこの構造と括りの問題は(前回の話のように)「大学によって『あるプログラムを、どのSchoolが、どういう名前と形式で提供しているか』が微妙に異なる」ため、単純なキーワードをだけの検索ではプログラムやコースの名称が異なれば見つからない場合がある、という事も意味します。

そこで、まずは「一般的な語の使われ方/分類のされ方」のコーパスを作るという作業、「そもそも自分のやりたいことに、どういう名称が付いているか」をいくつか見て、それを元に他の大学でも似たようなプログラムがあるか(○○ university, master's "コースの名前")を検索する、を行います。

特に学際系の分野の場合、大学によっては「あるSchool/Departmentの分類外」にそのテーマ様に独立した研究組織とプログラムを持っていたり(”大きい”扱いをしている)、既存のコース内でのSpecialization/Concentrationとしていたり(”小さい”)します。例えば、Women, gender studies, feminism…という分野の学位プログラムは社会学の中にあるかもしれないし、独立の組織(SchoolやCenter)があるかもしれないですし、大学の規模によっては学位プログラムとしては無いけども副専攻の様な形で付けられるかもしれない、という。(以下一例)
・Toronto: 学位としてのMaster’s Program in Women and Gender Studies (MWGS)
・Toronto:School of Graduate StudiesのCollaborative Specialization内のWomen and Gender Studies (Collaborative Specialization)
・Queens:School of Graduate Studies内のMAのGender Studies
・Western: Department of Gender, Sexuality, and Women's Studies内にある学位としてのMA
Ottawa: 学位として大学のプログラム一覧ページにあるMaster of Arts Feminist and Gender Studies

こうしてキーワードとそのパターンを見つけることで、どういう視点で、どこを探しに行けば良いのか、また国や大学を絞ってそうしたプログラムがあるかないかをある程度絞る事が出来ます。(※私の場合、Higher Educationという括りでコースを提供している、という事が判明した後でも「School/Graduate School/Depertment of Education」はあってもHigher Educationのプログラムが無い大学、という事が多かったので…。)

本日の小技②:「パターンが見えたら、構造を気にして大学のトップページから(古典的に)『Prospective/future students』の階層を降りていく」

さて、ある程度キーワードによる検索が進んで、関連するプログラムやコースを持つ大学が見つかったら、次はそれが学位プログラムなのか、副専攻なのか等々…提供のされ方を確認するために改めて大学のトップページから順にそこのページを探してみましょう。それによって以下の3つのポイントが見えてきます。
・ある大学における制度上の違い(出願先や〆切、学費や出願、修了の要件、倍率が異なる場合がある。実際MAとM.Edではかなり違ったので…。)
その大学内で今自分がどれだけの情報を見られていて、他にどこを見ると情報がありそうか(今見ているのが、UniversityなのかSchoolなのか、Departmentなのか、組織をまたがるのであれば他の学内組織で情報を出していないか等)
・他大学の組織・学位構成と比較が出来る(自分が勉強したいことは学位プログラムレベルなのか、あくまでメインの何かとConcentrationやSpecializationで足す感じなのか、他大学だの構成と比較してより「合う」のはどこか、を比べられる)

本日の小技③:「細かいことは…気にしない?」
「カナダでGender/Women's studies/Feminismを勉強したいかも」の例を挙げましたが、それらの制度上の違いと、実質的な違い(前回参照)は、自分のキャリアプランや、その国での意味合いとしてどの程度あるでしょうか?

まず制度面では「同じ国の同じ分類(修士・博士)の学位」であればその国における違いは無い「筈」です。「国に設置認可を受けた大学がそのルールに則って提供する学位」なので制度上の差はおそらく無い「筈」ですが、国によって何らかの意図で法・制度的に研究系MA/MScとの他の実務系を分けている「かもしれない」ので、個々の事例とその規則を見てみない限りなんとも言えません。

次に実質面ですが、これは「誰が評価するのか」に依存します。自己評価として「異国の学位取ったの偉い」という事が最優先であれば、大学の格は問題になりません。一方その国や地域働くのであれば、その国・地域内での評価だけ気にしていれば良いでしょうし、その学位を「梃子にグローバルな進学や仕事にキャリアアップ!」、となると、一般的には「有名な大学であるに越したことは無い(※学位内での研究MA/MScか実務かMaster of ○○のは無さそう)」という事が言えるでしょう。

つまり、やや暴論で実質面(市場価値)だけを、考えて身も蓋もなく言うと「自分の志望する分野で、より有名な大学の、入りやすくて安い」プログラムこそが労働市場へのハッタリとしては(多分)ベスト…かもしれない、という。

…制度についてとても気にするのは制度の勉強が好きな私ぐらいのもんですよ、多分。

本日のまとめ
・「キーワード」を見つけるための検索⇄キーワード「での」検索で、やりたいことが「どういう言葉でプログラム化されているか」を見つけていく
・プログラムやコースとして見つけたら他と比べる
・後は、見つけた中でよく要件を読んで諸々有利なやつの優先度を上げれば良いのでは…どうせその筋の人しか気にしないので…(※その筋の人は気にするので注意)

私の場合、「Higher Education」が「大学院のプログラムの対象としてある」という事に気づいたのは、カンファレンスで聞いた知らないキーワードをとりあえずググり、「世の中にはそういうのを研究してる人が居る」と気づいて「この人達の所属は?」調べたのがきっかけでした。この最初の「当たり」を付けない限りは効率が悪いので、特に他国の大学院を探す際にはまずはその語彙の確認、コーパス作りから始めるのをお勧めします。

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