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1-3-2 制度理解≠体験談:先輩や!海外進学志望勢のお気持ち話は!何人聞いても!制度理解にならない!(本編)

こんにちは。昨日5回目のワクチン打ったので理論書読んで解説付けるほど元気でもなく、こちらをつらつらと書いていきます。(写真は本棚から大学関係の一部)

私は以前(2013/03-2019/08)と国際教養大学(AIU)で勤務しており、最初の3ヶ月以外は全て国際センターで「ヨーロッパ留学の中の人」のお仕事、「同大学最大の売り」であり「学生にとっては卒業要件」である、1年間の留学の事務的な諸々(通称「留学派遣」の仕事)をしていました。(コレね。https://web.aiu.ac.jp/undergraduate/abroad/

余り細かいことは書けませんが、大きく言うと
・提携先関係業務(留学先の大学を増やす下準備として制度的にAIUの方向性と合うか+学生が履修できて単位変換出来る科目があるか調べる、出張して下見、イベント出展で提携先大学との情報交換や交渉等々)
・留学派遣業務(学内選考、派遣先決まってからの学生支援、相手の大学の受け入れ担当者との日常的なやりとり、学生のトラブル対応等々)
という柱で仕事をしていました。

お仕事でやる都合、テキトーな事をすると様々な責任問題が発生しますので、EUの制度(Erasmusやボローニャプロセス)を勉強したり、「学生が理解してないと、行くのは当人」なのでどうやって学生にとって理解しやすい形で情報を提供するか試行錯誤したり、という日々でした。

日本の大学事務組織一般は異動のある文化なので、人手不足+専門知識(と仕事出来る英語力)が必要なその仕事を長く担当出来たのは、今に繋がる上でラッキーだったなと思っていますが、公立大学(地方独立行政法人の一種)の中の人として
「公的な組織の」
「仕事として」
留学の業務に関わる上で、お仕事の原理は
・非営利(人数捌いたからってお給料が増えるわけじゃ無い)
・「行政ルール上、手続き的に正しく(公正・公平)」(公式の確定してて裏が取れる情報を、組織の立場で伝え、個人的な見解、不確定な情報は言わない)
というものでした。

というのも、中の人の総体としての組織は業務遂行上、
・学生が知らない情報を持っている+ルールを設定出来る
・組織としての安定性・一貫性・アカウンタビリティが大事
・学生に対しても「公正さを最大限配慮した上で決められた手続きをしない人は、他の学生への公平性の点から手続きから落とす」という権力を、必要な場合は行使出来る

ので、学生もまだ全ての責任が自分で取れない+大学という教育の場(社会の諸々の手続きものへの適応の練習機会)として、多少は教育的な観点から「甘く」制度設計はするにせよ「原理原則は守る」という運用をしていました。

…仰々しくなってきたので平たく言うと「お仕事として、サービス提供者目線でやる情報提供は、消費者としてサービス利用者目線で情報提供するのとは違うよ。」という事です。

例えば、留学学内選考の要件について、国際センターの人は「理解して説明する」だけでなく、「場合によっては要件を変更する」こともします。そういうルールの決定と執行をする為には「なぜ今そういうルールがあるのか、どういう経緯で前はそういうルールとしたのか、その意図・目的は何か」というレベルでの理解が必要です。

もし国際センターで「現状の英語試験の点数では留学先でついていけない傾向がある」と気付いたら、
・今の点数を基準としてる経緯:過去の記録を調べ「昔は留学先が少なく、そこのレベルも余り高くなかったし、入学者の英語力もそこまで高くなく、あまり条件を上げすぎると全体の留学・卒業が遅くなる」のでそうしたらしいと理解
・意図/目的:現地の通常科目に着いていける程度の英語を事前に身につけさせつつも、そのレベルは準備段階として妥当(そりゃ高ければ高い方が良いのだが)
という所を理解した上で、「今は留学先も多様化し、学生の基準も上がったから変えても良いのでは?」という判断をして、「少しだけ」条件を厳しくする(例:IELTS 6.5以上をOverall 6.5だけども5.5が無い事にする)様な変更を内部で提案し、決定するかもしれません。(例だからね、あくまで。)

さて、こうしたルールの決定・執行/サービス提供側に対し、それを利用する学生の側はそうした内部の思惑についての情報を持っていません。賢い学生は「自分がルールの意味を理解していなくて失敗したくない」ので、国際センター窓口まで「これってどういう意味ですか?」と「公式見解」を聞きにきます。そう聞かれたら教えるのが中の人のお仕事なので、もしさっきのIELTSの例だと「もし全体が6.5でも、Writingが5.5なら申請出来ません」と教え、もし「なんで?」と更につっこんで聞かれた場合、親切で理解度の高い中の人であれば「…着いていけない学生が多くてルール変えたんすわ。(遠い目)」とそこにも事実に基づく、納得感がある答えを出してくれるでしょう。

加えて、中の人は正しい情報を伝えて、学生がそれを理解して正しい対応(手続きで失敗せず、留学申請→留学→帰国→卒業)をする動機付けがあります…というかそうして貰うのが仕事です(逆に言えば「テキトーに伝えて制度がダメになったら最悪クビになる」という。お仕事というのはそういうもの。)

…それに対し、あんまりイケてない学生は先輩や友達という「ルールに乗る側、同じサービス利用者」、言い換えれば「情報を同じぐらい持ってない人達」に聞いてしまいます。実際にルールを決めているわけじゃ無い人達が、推測の元にアレコレ話しても、その推測が合っているかどうかは全く分からない。にもかかわらず噂や憶測で、自分の人生に関わる意志決定をやる人が(中の人々のアピール不足も昔は悪かったですが)…少なくない。

と、この↑の話はあくまで例ですが「中の人達には組織、プログラム運営上の意図と目的があり、それに応じてルールを変える事が出来」ますし、実際に調整レベルから、時として大きな変更もします。これは留学についての学内選考という「内輪の話」を例にしていますが、受験も同様に志願者・入学者の傾向を見て必要に応じてルールが変えられるものです。

ただ学内申請という狭い領域とは違い、国内の入試はそこに関わる一大教育産業があり、過去の入試方式、過去問、結果の蓄積から分析して対応法を商売にしている「外のプロの人達」が居ます。彼らは「中の人の情報へのアクセス」はありませんが、実績ある制度化された分析から、外からでも様々な予想と、出願者にとって適切な情報が提供出来ます。

…なんでこんな話をしているか、というと、これを踏まえて海外進学情報界隈を考え直してみましょう、というお話です。
まず「中の人(ルールを決めて執行)=各国の各大学と、各国教育省や留学推進の業界団体」→当事者だからそこが出す公的な情報は信用出来る、というかこれを信用できないとどうにもならんし、この情報が読んで理解出来ないと何も対応出来ない!
次に「外のプロ(産業化された外野)=海外進学系の予備校(営利)」→当たってなかったら儲からんので、儲けるために多くの情報(情報の出所:過去の利用者+外部データの分析)を集めている。情報の分析力次第だが個人に聞くよりマシ。
この各々の立場からお仕事で組織としてやっている二つは良いとして、ここから個人レベルになるので根拠の乏しさ故の情報の怪しさが…。
インターネットで困ってる海外進学志望勢:同じ立場のお友達ですが、同じように困ってるので不安を共有する意味はあっても、それ以上の助けにはならない…。(困ってるなら公式情報を読んで理解出来るようになろう、読み方が分からないならプロに聞こう…。)
…と、困ってる人同士はまだお互い「不安だよね~」と言い合うだけなので良いのですが、ここからの「外の素人」が思い思いのお気持ちを発揮するのがこの界隈でして…。
インターネットでドヤってる学生:一サービス利用者としての個人の経験(情報の出所:自分一人だけ、少なくとも何かに受かりはしたとしても、だ)だけを根拠にしているにもかかわらず、自己顕示欲で色々な事を薦めてくる→この人が見たこと経験したことを、他の同じ条件の人と比較しないでどうやって妥当か判断するのかしら…?友達に聞いたのでも「個人の意見(最悪お気持ちレベル)」でしかないけど、全く知らない人のそれ、信じられる?(参考にはなる…かもしれないが。)
・インターネットでドヤってる大人(大学の専門家じゃない):↑の学生ノリ+「色んな人の相談に乗った」を売りにするが、サービスの利用者+組織的な分析をしてもいない+そもそも大学制度、国際的な高大接続等々の「専門家じゃない」のには変わりない。
のは…なんだかなあ、と。この二つのヤバい所は、ドヤって色々薦めてはいますが、その情報に対して何の責任も負わない事です。後者はひょっとしたらヲタ的に外の人として趣味でむちゃくちゃ勉強して情報量が多い人かも知れませんが「(自分の領域だけじゃなく組織的な調整が必要な)ルールの決定・執行者としての立場じゃない」のと、その専攻の人でも無い場合「その知識が妥当かをその筋の専門家に評価されていない」という二つの点で根拠が弱い。つまりは私が「近所のスコーン美味しい!みんなも食べた方が良い!」とツイートしてるのと同じレベルの、自分の経験だけのお気持ち表現であって、それ以上の大した物では無いのです。(いや、美味しいですよここのスコーン。https://www.kittenandthebear.com おいでよニョロンニョ。)

…こういう風に並べて書いてみると、まあ、うん、厳しいよね、とインターネットでドヤっていない大人(大学の専門家、中の人もしてたし学位もある)は思うワケです。スコーンなら一つ$5ぐらいの話なので、まあ外してもそこまでの実害は無いとして、進学って皆さんの人生(の大事な3-4年と、結構な金額。それこそスコーン何個買えるか。)かかってますが、そんなアテにならない情報を根拠にしてでいいですか?

エンディングテーマはコチラ。
https://www.uta-net.com/song/268281/


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