読書記録 沼田真佑 影裏

宗教を理由に彼女と別れてたから、宗教について調べている。ネットやYouTubeには案の定、その異常さを表現しているものが多い。僕の知りたいことは彼女がそれを信じる理由であったり、宗教自体が生まれる過程であったり、信者の喜びや悲しみだった。悲しみがあるのは独り決めしていてよくないが、世間の風当たりはよくなく、つらい境遇をしているのは想像できた。そこで手に取ったのは今村夏子の星の子だった。星の子を読んで何を思うかはきっと何かを信仰している人と、していない人では感じることが違うだろう。登場してきた春ちゃんカップルの描写は私の選択とは真逆のものであり、重く受け止めてしまった。ただ私はこれを読んで、私は小説を書かなければならないと思った。私が感じた世界の混沌さを剥き出しに投影できるのは小説しかないと感じたのだった。
今年は小説を書き、賞に応募すると心に決めた。

小説を書くからには、それ相応の文章を書く力がいる。まずは本物の小説らを読むことから始めた。文芸の新人賞の傾向を調べ、私が応募するのは文學界新人賞にしようと思った。受賞作を調べ、図書館にて貸し出し可であった沼田真佑の影裏を手に取った。

影裏 沼田真佑
文學界新人賞受賞 芥川賞受賞
38文字×12行×94ページ=40608文字以下

難解だった。日浅という友人が、離職して喪失感が漂ったかと思えば、呆気なく再会した。何度も再会を果たすことは描写の多い釣りを現すのだろうか。主人公の今野がセクシャルマイノリティと明かされてからは今野という人物の孤独が描写以上に増し、より日浅が拠り所になっているのだと感じた。
構成的にはおそらく難しい書き方をしており、新人が真似できる物ではない様に思う。
岩手の自然豊かな情景の描写は自然の鼓動が聴こえてくるくらいに美しいものがある。
短いゆえにこの描写には何の意図が隠されてるのだろうと考察を試みるが、私には技量がなく分からない箇所がいくつかあった。
日浅を現す表現として「巨大なものの崩壊に陶酔しがちな傾向がある」とされており、これがこの小説の肝的な部分であるのだろうとは思う。結局日浅は1度馴れ親しんだ関係になると、もう馴れ合わないと日浅の父によって語られる。今野にとって拠り所であった日浅だが、日浅にとっては崩壊するための利用にすぎなかったのだろうか。

日浅の不穏さと今野の孤独、釣りや情景の描写が丁寧に書かれた少し難解な純文学であり、これもまた世界の混沌さをリアルに現した文章に感じた。

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