二月に読んだ本と憂う年

2月に読んだ本。

・火花 又吉直樹
・ひとり日和 青山七恵
・グランド・フィナーレ 阿部和重
・沈黙 遠藤周作

2月は1月よりゆっくり読んだ。そしてじっくり考ることができた。

火花は又吉直樹さんを映し出した鏡みたいな作品だと思う。なんだろう、お笑いや人間に対する純真さが文体から伝わってきた。僕は彼に憧れている。

ひとり日和はその淡々と物事が過ぎていくリアルさがどこか胸をしめつけた。人生は綺麗事じゃない。そして、ある種誰しもが孤独の檻の中にいる。それに向き合っていてみんな強いと思う。

グランドフィナーレは絶望の中にある光にも満たない物質をすくうような本だった。罪とか喪失とか苦痛とか。そんな感情を想像すると、全てを非難できない自分がいて、そんな自分は非難されるべき人間なのかとか。人を許容できる隙間を空けておきたい。その隙間が生まれていくような人生は決して幸せではないかもしれないけど、僕はそれでもいい。

沈黙は表面では語れない。信仰という人間の深層部を描いている。僕はこの本を読んで救われたと思う。唯一この本だけ、本が僕を選んだと思った。分からなかった感情が分かった気がして、涙が止まらなかった。僕の涙かどうかも分からなかった。色んな人間の魂が僕の体を借りて泣いている気がした。そういう意味で本が僕を選んだのだと思った。


大学時代の友人から結婚報告があった。嬉しさと寂しさが入り混じっていた。他人の幸せを心から喜べていない自分に気付いて貧しかった。幸せ者が僕に近況を聞くもんだから、僕は精一杯、野良犬に追いかけられて逃げ切った話をした。自分の情け無い話を全力でぶつけてやった。
友人は幸せそうに笑っていた。

二月が四年に一度、一日だけ本気を出す。その一日はいつもより平凡で、いつもより苛立った。僕は缶チューハイで、この憂鬱で特別な平凡と孤独に乾杯した。

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