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流れに身を委ねて、ゆっくりこのまちの一員になっていく。

移住を考えるタイミングは人それぞれですが、結婚や出産など、ライフステージの変わり目がきっかけになることは珍しくありません。

今回ご紹介する笠原辰徳さんもその一人。
結婚を機に自然豊かな場所で暮らそうと、縁もゆかりもない福井県の山奥のまちにやってきました。

地域おこし協力隊として3年の任期を終え、現在は宿泊施設「ファームハウス・コムニタ」のスタッフとして働き、地域にもすっかり溶け込んでいます。

見ず知らずの土地で自分らしく暮らす秘訣は何なのでしょうか。

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笠原辰徳さん
東京都出身。神奈川県出身のパートナーとの結婚を機に自然豊かな場所で過ごしたいと2015年に池田町に移住。地域おこし協力隊として3年間働いた後、同じ町内の宿泊施設「ファームハウス・コムニタ」に勤務。宿泊者の対応や商品開発などを手掛けている。

ーー池田町を見つけたきっかけは何だったんですか?

笠原さん(以下、笠原):結婚したら、都会よりものびのびとした自然豊かな場所で暮らしたいなと全国いろんな場所を探していました。僕はもともと音楽をやっていたのですが、移住しても音楽を続けるつもりはありませんでした。とはいえ、ほかに特別な経験もありません。農業だったら未経験から学べそうなイメージがあったので、農業を始められる場所を探していたんです。そんな時に福井県越前市の農家さんに問い合わせたら、家族で移住するなら池田町がいいよと、別の農家さんを紹介していただきました。


ーー池田町の印象はどうでしたか?

笠原:まずは福井県の場所すらよく分かっていなくて。福井に行く新幹線の中で初めて場所を確認するくらいでした(笑)。初めて福井に来たのはちょうど冬で、駅を降りるとあまりの雪に、「この場所で住めるのか!?」と思ったほどです。でも、池田町に入ると道が綺麗で驚きました。池田町は豪雪地帯なので逆に除雪が整っているそうで「これなら住んでも安心だな」とホッとしたことを覚えています。

それに、想像していた田舎ほどではなかったですね。池田町は人口2500人のまちですが、子育て世代もいるし移住者も多い。まちの中心部はにぎわいもあるし、明るいまちだなと思いました。

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▲池田町の中心部にある「こってコテいけだ」。週末にはマルシェなどのイベントも行われます


ーー池田町ではほかにどんなところを見て回ったんですか?

笠原:紹介していただいた農家さんが事前に僕たちのことを周りに話していてくれたらしく、地域のキーマンのような方を紹介してくださったんです。夜は宴会も開いていただき、このまちの暮らしのこともいろいろと聞くことができました。この出会いがすごく大きなきっかけでしたね。今もその農家さんにはとてもお世話になっています。

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▲笠原さんの移住を後押しした長尾農園の長尾さん夫妻。長尾さん自身も20年以上前に大阪から池田町に移住しました


ーー最初に会う人で、そのまちの印象がほぼ決まりますよね。

笠原:役場にも行き、仕事がないか相談したら「今、ちょうど地域おこし協力隊を募集しているからすぐにでも働けるよ」と言われて。農業を考えていましたが、仕事があるならぜひ!と受けました。しかも、池田町は移住者への制度が手厚く、ファミリー向けの町営住宅の空きもあったので、一気に家と仕事が見つかったんです。


ーー移住は「仕事と家探し」が一番のハードルだと言われているのに、ラッキーでしたね!
 
笠原:そうですよね(笑)。池田町はご覧の通り、山に囲まれたまちなので、木を資産にしたまちづくりをしようとさまざまな取り組みをしているんです。なので雇用も多く、田舎のまちなのにすごく活気があるなと思ったのも移住を決めたポイントでした。

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▲「ツリーピクニックアドベンチャーいけだ」は西日本最大級の森のアスレチックが人気

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▲木のおもちゃを100種類以上揃えた「こどもと木」など、木育施設も誕生しています


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2015年、パートナーと池田町に移住した笠原さん。地域おこし協力隊として3年間池田町の木育施設の運営に携わり、現在は「ファームハウス・コムニタ」のスタッフとして働いています。ここからは一緒に働く澤崎美加子さんにもお話に加わっていただきます。

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澤崎美加子さん
福井県池田町出身。1989年に池田町に戻り、農業や食、レジャーなどを通した体験交流施設「ファームハウス・コムニタ」を立ち上げる。笠原さんをはじめ、池田町への移住者の良き相談役として頼りにされている。


ーー澤崎さんは笠原さんが池田町に来た時のことを覚えていますか?

澤崎さん(以下、澤崎):もちろん覚えていますよ。初めて来た時にここに泊まってくれたの。うちのスタッフは移住者が働いていたことも多かったから、私も何人もの移住者を見てきたけど、笠原くんはこの場所に馴染みそうだなって思ったねぇ。


ーーやっぱりそういうことってわかるものですか?

澤崎:そうねぇ。移住って私は“国際結婚”のようなものやと思うの。ちょっとした方言で受け取り方が違ったり、田舎特有の決め事があったり。それに戸惑う人が多いけど、笠原くんは「そういうものなんですね〜」って柔軟に受けとめていたような感じがするから。

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ーー……と澤崎さんは言ってくださっていますが、実際のところどうですか?

笠原:そう思ってくださっていたなら嬉しいですね(笑)。もともと僕は「物事はこうだ!」と決めてもうまくいくタイプではないんです。その場所の環境や周りの人に導いてもらうことが多いんですよね。なので、都会とは違うことがあっても「池田町はこういう場所なんだ」と一つひとつ教えてもらうような気持ちでいたのかもしれないです。


ーー池田町で暮らしはじめて戸惑ったことはなかったんですか?

笠原:地域のなかで草取りや清掃などの仕事や会合が多いのは、田舎ならではだなと思いましたね。あとは集落ごとに町内会費や香典なども金額が決まっていて、お金に関するルールが違うのも驚きましたね。

近所の人と仲良くなれる機会ではあるのですが、その時子どもが生まれていたので、子育てを奥さんに任せきりになってしまうのはちょっと申し訳ないなと思っていましたね。

澤崎:田舎では「山」や「川」がその地域の資産でもあるんです。なので、みんなで共有している資産を守る仕事があったり、集落の規模によってお金の集め方やルールも違いますね。当然、移住者のなかには、戸惑う人もいると思います。なので、池田町では年10回ほど町民会議を開き、移住者のミスマッチが減らせるように集落の決まり事が書かれた「集落の教科書」をつくろうという動きもあるんです。

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ーーそれはありがたいですね! 買い物など、暮らしの面ではいかがでしたか?

笠原:それは問題なかったですね。町内にも「まちの駅」で買い物できますし、車で20分ほど走れば大きなスーパーもあります。池田町は“町内にコンビニがないまち”として有名なのですが(笑)、最近大きなドラッグストアができたので、急な買い物の時もかなり便利になりました。

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▲町内では地元の農家さんによって栽培された無農薬野菜が人気


ーーでは、池田町に住んで良かったことは何ですか?

笠原:これはたくさんありますよ。僕は今3人の子どもがいるのですが、この自然豊かな環境のなかで子育てができるのは本当に恵まれていると思います。子育て世代が多くて、コミュニティがしっかりありますし、子どもを連れて仕事もできるほどよいゆるさもあって助かっています。

澤崎:笠原くんは一軒家をもらったんですよ。


ーーえ、一軒家ですか?

笠原:はい、そうなんです(笑)。子どもが増えて今まで暮らしていた町営住宅が手狭になり、引っ越そうかなと周りの方に相談していたら、「使ってもいい家があるからあげるよ」って。


ーーそんなこともあるんですね〜!

笠原:もちろん古いところも多かったので改修が必要でしたが、それでも普通に購入するのに比べると助かりましたね。

あと、僕たち家族がここに引っ越してきてから、もう一つ嬉しいことがあったんです。うちの集落は高齢化で地域のお祭りがなくなっていたのですが、「小さい子どもがいるなら御神輿をせないかん」って、御神輿が復活したんですよ。

ーーわぁ、それは素敵な話ですね!仕事も家も見つかるし、地域の人とも良い関係を築けている。笠原さんのような移住ができるとすごくいいと思うのですが、移住を検討している人にアドバイスはありますか?

笠原:僕は移住する時にあまり先のことを考えていなかったんです。本来はしっかり下調べをしたり、計画を立てたりすることが大事なのかもしれませんが、「移住後の暮らし」をイメージしすぎても必ずしもその通りになるわけではないので。

暮らす場所の流れに身を任せながら、ゆっくりその土地の人になっていけたらいいですよね。

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【取材先】
ファームハウス・コムニタ
福井県今立郡池田町土合皿尾2−22−1
0778-44-7744
https://comunita.jp/https://comunita.jp/


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