父親の実家を住み継ぎ、実感した“生きている手応え”【後編】
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父親の実家を住み継ぎ、実感した“生きている手応え”【後編】

コロナ禍をきっかけに福井県南越前町に移り住み、空き家となっていた父親の実家の改修を決めたノンフィクションライターの吉田智彦さんとパートナーのかおりさん。新しい暮らしのなかで生まれた人とのつながりや価値観の変化について伺っていきます。

前編はこちら

新聞掲載をきっかけに助っ人が現れる

自分たちの暮らしの拠点を整えるため、納屋の改修を始めた智彦さん。
とはいえ、リノベーションの経験はなく、作業は一からの手探りでした。
雪が降り出すとほぼ作業ができなくなってしまうため、
時間に追われながらの大工仕事は思った以上にハードなものだったそう。
ところが、思わぬ助っ人たちが
吉田さんたちのもとに現れるようになりました。

吉田智彦さん(以下、智彦):私たちの改修のことが地元新聞の記事に取り上げられたことをきっかけに、地域の人や新聞を読んだ町外の人たちが手伝いに来てくれるようになったんです。最初は会ったこともない人が手伝ってくださることに面食らっていたのですが、こちらも人手があることに越したことはありません。ご好意に甘えているうちに、手伝いに来てくださった方が、また別の助っ人を連れてきてくださるなど、たくさんの方とのつながりが広がっていきました。

吉田かおりさん(以下、かおり):体力を使う作業も多いのに、みなさん「楽しかった〜」と言って帰ってくださることが不思議で(笑)。せめてお茶やお菓子でも…と出そうものなら「ボランティアは手弁当でするもんや」と言って逆に差し入れしてくださるんです。

作業ででたクズ鉄の処理に困っていた時に、まとめて引き取ってくださった方もいました。「業者に売ってきたよ」ってあとでお金に替えて持って来てくださったんです。あの時は驚きましたね(笑)。

「近所の人も心配して見に来てくださったり、野菜を持ってきてくださったりするんです。ありがたいですね」と話す智彦さんとかおりさん

できることが増える喜び

資格が必要な電気工事以外、ほぼ自分たちの手で直した納屋は、
ようやく住居として住める状態に。
壁に断熱材を入れたり窓を二重サッシにしたりなど、寒さ対策も万全です。

昭和32年に建てられたという納屋。躯体はほとんどダメージを受けておらず、断熱材を入れ、壁には漆喰を塗り、天井には板を貼り付けた
窓がなかった納屋。10箇所ほど壁に穴を開け窓を作った
初めてガスが通った瞬間 (画像提供:吉田さん)

智彦:大工さんに頼めば早いし、きれいだし、そっちの方が合理的かもしれません。すごく時間がかかっていますが、自分の手元で家が出来ていく様子を見られるのはうれしいですし、一つひとつの作業を通して自分にできることがどんどん増えていく面白さがあります。

かおり:電気がついた! 水が出た! など、いちいち感動していました(笑)。まだ水回りの工事は完全に終わっていないので、お風呂はドラム缶の五右衛門風呂を使っていますが、それはそれで周りの景色を独り占めできるので最高です。


不便な暮らしがかすむ豊かさがある

住む場所が完成に近づき、一つひとつ暮らしを整えていく吉田さんたち。
普段の生活にはどのような変化が起きたのでしょうか。
これまで地方で暮らしたことのなかったかおりさんはこのように語ります。

かおり:こっちに住むことが決まった時は車の運転が不安でしたが、逆に車が少ないので、安心して運転に慣れることができました。今は自転車みたいにスイスイ乗っています(笑)。一番近いスーパーまで車で20分ほど。日々移り変わる山の景色を眺めながら運転していると心が洗われます。都会に比べると不便だなぁと感じる人もいるかもしれませんが、手に入る野菜や魚の鮮度が違うので何食べても美味しいし、不便という思いもかすむほど、ここの環境は最高なんです。

そして、何より時間の使い方が変わりましたね。ここでは家事のすべてが普通の家より時間がかかるんです。例えば、お風呂は薪で炊くので最低でも入るまで2時間。でも火を焚きながらお酒を飲んだり、外でごはんを食べたり、風呂焚きも一つのアトラクションになっていて、意外と不便に思っていない自分がいます。最初はこんなに時間がかかるのかと思いましたが、よく考えたら焦るほど時間に追われているわけではないんですよね。都会で暮らしていた時とは違う時間の流れを感じています。

大活躍している五右衛門風呂。「ここから眺める里山の景色が最高!」とかおりさん

仕事とは、生きるために必要なこと

現在、出版社とのやりとりはリモートで行い、
取材・執筆を続けている智彦さん。
かおりさんは町内の観光施設でも働いています。
住む場所が変わり、働くことへの価値観も大きく変わったと語ります。

かおり:私は新卒からずっと会社員として企業からお金をもらう生活でした。毎日会社との往復であっという間に一日が終わる感覚で、思えば当時は仕事の合間になんとか暮らしていた感じだったのかもしれません。ここで暮らすようになってから、今をめいっぱい生きている感じがします。

智彦:今まで「仕事は金に結びつくもの」で、「金に結びつかないことは遊び」だと思っていました。でもここでは生きていくため、暮らすためにやっていることはすべて仕事なんですよね。家を整えることも仕事だし、山から食べられるものをとってくることも仕事。生きるために動くことはすべて仕事なんです。確かにお金は必要ですが、サラリーの仕事だけではないなとものの見方が変わりましたし、何でもお金で解決しない暮らしに清々しさを感じています。

家の作業が落ち着いたら、荒れ放題の畑を手に入れて自然栽培や、川を利用した自家発電にも挑戦したいですね。これからも流れのままに、自分たちが心地よいと感じるような暮らしを一つずつ積み上げていきたいと思います。


窓を開けると目の前に流れる川、満点の星、
箱庭のような美しい里山の景色が広がる吉田さんの新たな拠点。
家が完成した後も二人の営みは続いていきます。


※記事の内容は取材当時のものです。

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