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顔が見える仕事で、地域に温度を生む【後編】

長年住んでいた横浜から地域おこし協力隊として長崎県東彼杵町に移り住んだ堀越一孝さん。妻であり画家のほりこしみきさんとともにデザイン事務所「UMIHICO(うみひこ)」を立ち上げ、デザインや撮影、カフェの運営など幅広い活動を行っていました。

任期の3年間を終え、建築設計事務所に転職した一孝さんは一家で兵庫県へ移住。そこで福井県小浜市に関わる仕事を担当し、福井に通う日々が始まります。

変わりやすいドラマチックな天気も小浜の魅力!?

転職した会社で
小浜市の観光企画に携わることになった一孝さん。
2017年にはじめて小浜市に降り立ちます。

一孝さん:小浜の第一印象、実は最悪だったんです(笑)。集合場所の小浜駅に着いたものの、待ち合わせた方が急な体調不良で来れなくなって…。とりあえず自転車を借りてリサーチしていたら、土砂降りの雨に降られて、縁石でこけてずぶ濡れに。まぁ、これは自分が悪いんですけど…。

みきさん:天候が変わりやすいのは小浜らしさの一つ。ドラマチックで私は良いところだと思うんですけどね。

はじめて小浜に来た時のことを「ついこの前のよう」と一孝さん(左)。右は妻のみきさん

一孝さん:住むようになってからはそう思うけど、当時はふんだりけったりでした(笑)。しかも駅前にある観光マップには情報がほとんど載っていなくて、まちのことがわからない。これは、地域の人とコミュニケーションを取らないと仕事にならないなと思いました。

そこで、以前地域おこし協力隊の時に進めていた「ローカルフォト」の活動をヒントに、町のキーマンやキーワードになるような産業の現場を訪れて写真を撮らせていただくことをツーリズム化しようと思ったんです。

現地で出会った人やモノの思い出とともに写真を持ち帰り、各自で発信することでまちのファンが増えていく。これを「ローカルラーニングツアー」と名付けて小浜市で活動を進めていきました。

記念すべき第1回目の「ローカルラーニングツアー」

豊かな水のあるまちに惹かれて。

小浜市に定期的に通ううちに、
知り合いが増え、まちの魅力を見つけていきます。

一孝さん:親父の実家が金沢で、昔はよく近江町市場に行っていたんです。小浜は港町で水産市場があり、幼少期の原風景を思い出させる場所でした。「雲城水」をはじめ良質な湧水も出ていて、こんなまちで暮らせたらいいなと思うようになりました。

また、小浜のキーマンと少しずつつながっていくと、みんな自分の仕事や活動に誇り持ってるなという印象でした。しかも穏やかな人が多い。「住んでる人たちが心穏やかに暮らせるまちっていいところなんだろうな」と思いました。

穏やかな小浜に何度も通う一方、
任される仕事も大きくなってきた一孝さん。
コンサル的に外から地域を活性化させる仕事に
限界を感じはじめます。

一孝さん:いち外部業者である以上、プロジェクトが終わると、現場にかかわり続けることは難しくなります。「よそ者ではなく当事者として、全て自分の目に見えて責任を負える範囲の仕事を精一杯したい」と思うようになりました。

みきさん:その頃は抱えきれない仕事量になっていることもあって、堀越(一孝さん)の顔がどんどん暗くなっていくのがわかりました。手に抱えられる範囲でまちに寄り添う仕事が、彼にとってはいいのかなと思っていました。

一孝さん:そんな時に、ローカルラーニングツアーで出会った老舗塗箸メーカー、株式会社マツ勘の松本啓典さんに「僕のことを雇いませんか?」と逆プロポーズみたいなことを言ったんです。いきなりだったので面食らっていましたが、すでに関係性もあったのでトントン拍子に面接が進み、転職とともに家族で小浜に住むことを決めました。

直接会うことの温度感を大切に、地域を彩る。

2019年3月に小浜にやってきた堀越さん。
現在は、箸の企画開発の仕事と並行して
デザインや執筆、イラストなど
UMIHICOの活動を行っています。

その一つ「小浜をまもる風景」は
小浜の環境をつくり、まもる“人”に
フォーカスした広報誌。
撮影から執筆、デザインまで
すべてふたりで制作しています。

9号まで発行した広報誌「小浜をまもる風景」


一孝さん:
小浜のまちってあまりゴミが落ちていなくてきれいなんですよ。そういう風景をつくっているのは、草刈りをしたり農道を整えたり、地道な活動をしている人たちだというのを、小浜に住むようになってから知りました。

はじめは冊子をつくるというアイデアはなかったんです。でも、報告書だけ見ても、実際に誰がどんな空気のなかでやっているのかはわからない。だからこそ紙メディアで地域の人の手元に届けて、知ってもらいたいなと思いました。予算に限りがあるので少数部数でしたが、今では一部Webでも読めるようにしています。

みきさん:年配の方も多いので、今取材しないと来年にはもしかするといなくなっちゃうかもしれない。仲間との風景写真って年をとると撮らないから、残す必要があるのかなって。取材していると、おじちゃんが点滴しながら話してくれたり、若い子に優しくジュースをあげたりしていて。そういう日々の営みにふれると、ちょっと泣けるんですよね。

いつかこの写真展をしたいと思っているんです。取材したおじちゃんたちに来てもらって。真ん中にお菓子や柿ピーとか置いて(笑)。

豊作を祈る地区の風習を取材した時のひとコマ(NEST IN OBAMAより)

「誰かのイメージをカタチにする」をコンセプトに
小浜で活動を続けてはや5年。
最近では写真や文章を通して地域を表現する
クリエイターを増やす活動にも注力しています。

最後に今後やってみたいことについて
ふたりに話していただきました。

みきさん:小浜に家族で引っ越そうと決めたのは、「この人のために絵を描きたいし、世界に行きたいなら手伝ってあげたい」と思える人たちと出会えたから。例えば、和菓子屋さんのあの人が毎日あんこを練ってるなら、私も頑張ろうって思えるんです。自分のためじゃなくて誰かのために無理してる人が好きなので、そんな人の役に立ちたいという思いがあります。

今やってみたいことは、小浜の隠れた魅力のある場所でサーカス団みたいにキラキラした時間をつくること。まちが元気になるようなことをして盛り上げたいですね。

一孝さん:僕は今やらせていただいていることで結構満足しているので、やりたいことはそんなにないかもしれません。でも、小浜に暮らす人たちが今以上に仲良くなればこのまちはもっと面白くなるし、お互いの頑張りを褒め合えば、さらに良い循環が生まれていくと思います。これからも地元の人が気付かない魅力にスポットを当てて、その人やコトが元気になるきっかけづくりをしていきたいと思います。

【取材協力】
UMIHICO
https://umihico.net/

【移住のご相談はこちらから】
福井暮らすはたらくサポートセンター ( 福井Uターンセンター )
〒910-0858 福井県福井市手寄 1 丁目 4-1 AOSSA7 階
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福井の各市町について
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福井県公式就職情報サイト「291JOBS」
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