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湧水からみる松本市街地の地形的特徴

 今回は、まつもと城下町湧水群を切り口に、松本市の地形的特徴をごく簡単に見てみたいと思います。
 湧き水の場所や水質は地形や地質が大きく関係してきます。

「湧水ある所、地形や地質的特徴あり」

です。

 ただ、自分は地理や地質の専門家ではないので、知ってたら湧水の特徴や背景をより楽しめるよ、という特徴を2つだけ書きます。

地形、地質的特徴

 松本盆地は複合扇状地形になっています。扇状地は河川が山から平地に流れ出る際に、泥や砂や礫(れき:砂より大きい石)が扇状に堆積した地形のことです。

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扇状地 (産総研地質調査総合センターより)

 松本市街地周辺は女鳥羽川、薄川などの河川が流れており、これらの河川による複数の扇状地が重なるようにして地形が形成されています。

 河川が運んだ砂礫や泥等がどのように重なっているかによって、どこから水が浸透して、どこに水が溜まり、どこから水が出てくるかが変わってきます。

 藪崎氏の報告[1]によると、これらの扇状地は比高約100mで、砂礫(透水層: 水を通しやすい層)と粘土など(難透水層: 水を通しにくい層)が重なっていて、幾つかの帯水層(水が溜まっている層)に分かれていると考えられるそうです。

 市街地中心部を流れる女鳥羽川、薄川、田川は松本市東側の美ヶ原周辺の山麓に水源がありますが、中心市街地の湧水群の水質は一様ではありません。これは同じ涵養源(河川や雨水)だったとしても、地質的特徴(透水層の構成や帯水層の深さ)によって水質が変わるということを意味しています。

 簡単に言ってしまえば、上記のような地形、地質的特徴によって、一口にまつもと城下町湧水群といっても、それぞれの井戸で異なった特徴の水が湧き出ている、というわけです。

湧水の標高

 特徴の2つ目は標高です。湧水ポイントをプロットすると、標高600mあたりを境にそれより標高の低いところで水が湧いているのが分かります。

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松本市街地の主要な湧水をプロットした図。国土地理院地図より。

 扇状地での湧水は扇端(扇状地のはじっこ。扇型の孤の部分)に発生する場合がほとんどなので、標高600mあたりが扇端であるということができます。

 つまるところ、女鳥羽川など各河川による各扇状地の扇端が中心市街地にあり、そこに地下水が集まってくるというわけです。いや、むしろそうした地形的特徴の場所に街ができた、と言ったほうが正しいかもしれません。

まとめ

 まつもと城下町湧水群は、それぞれの湧水・井戸で水質が少し違います。それは地形や地質的な違いを反映していると思われます。
 また、ほとんどの湧水は標高600m以下で見られることも分かりました。湧水・井戸の場所と水質の差は、扇状地形とその地質、流れ込む川が大きく関わっているのです。

 「湧水ある所、地形、地質的特徴あり」の一端が垣間見えたでしょうか。

 そうすると、この場所に街ができた理由も、地形や水が関係しているかもしれませんね。
 前述のように4本の河川と湧水が豊富なため、現在の市街地中心部あたりは古代には湿地帯だったと考えています。そこから今の街がどのようにできていったのか、興味深いところですが、それはまたの機会に。

参考文献

[1] 藪崎志穂. 松本市街地における地下水の水質特性とその季節変化. 地球環境研究. 2011, Vol.13, p33-p41.

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