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夜の散歩

ダメ元で、君を夜の散歩に誘った。

君がどう感じているのか、どう思っているのか不安で仕方がなかった僕は、10月半ばまで会わないって言ってたのに、我慢が出来ず君を誘ってしまった。

絶対来ないだろうなって思っていたのに、優しい君は来てくれた。「酔っ払いだし、すっぴんだから無理」だと言っていたのに。

TYハーバーの近くを散歩しながら、君の夏休みの旅行の話を聞いたり、最近の仕事の話をしたりしたよね。

そして、運河沿いのベンチに座って、僕は君の気持ちを聞いてみた。

「なんで私のことが好きなの?なんで私にこだわるの?」
「私に拘らなくていいんだよ。義務感で好きだと言わなくていいんだよ。」
「営業的なマインドで失注や解約されるのが嫌だからそう言っているのじゃないの?」

そう君は言った。

僕は胸をぎゅっと締め付けらたように苦しくなった。君から見た僕はいつしかそういう存在に成り下がっていたんだと知って苦しかった。

君は、お客さんを大切にしてて、仕事を取るためにあることないことを言ったり、表面を取り繕う人を毛嫌いしていたよね。僕は君のそういう凛とした姿勢を尊敬していた。

でも、いつの間にか僕は、そういう君が毛嫌いするタイプの人種だと見做されていた。

「私たちって隙間の関係でしょ。お互い忙しくなって隙間が少なくなれば、今までの関係は成り立たないんだよ。」

僕は、君との関係を当たり前なものだと勘違いしていたのかもしれない。君と過ごす時間が貴重だということを忘れ、大切に扱っていなかったのかもしれない。それは君にとっては、顧客がお金を払うのが当然だと考え、顧客を大切にしない会社と同じように映っていたのだろう。

「違うんだ。僕は本当に君のことが大好きなんだ。ただ、君の優しさに甘えてしまっただけなんだ。」と言いたかった。でも何を言っても「表面的に取り繕ろう営業マン」の言い訳に聞こえてしまうだろうなと思って、絶望的な気持ちになった。。

結局、僕は「ちがうよ、、、」としか言えなかった。

君に会いたいのも、君と話したいのも、君の笑顔が見たいのも、君と同じものを見たいのも、君とご飯に行きたいのも、君に触れたいのも、何の対価も打算もなくて、ただ君が好きだからなんだ。理由なんかないんだ。

そう、言いたかったけど、しどろもどろになっちゃった。

君と最後に会った時、僕はとても意地悪だったよね。とても嫌な言葉を君に投げつけちゃったよね。本当にごめんなさい。本当に反省している。

「あれは僕じゃない」とは言わない。意地悪で我儘な醜い部分も僕の中にあると思うから、あんな嫌なことを言えば君から嫌われても仕方がないと思う。

だけど、あの意地悪なのは僕のごく一部であって、僕の99.9%は、君のことが大好きで、大切に思ってて、君を喜ばせたい、君のファンなんだってことを時間がかかっても分かってほしいと思っている。

あの時僕が見た、運河の水面は、Vincent Van Goghの"Starly Night over the Rohne" にそっくりだった。

散歩の最後に、君は「残業後に僕を誘って軽く飲みに行きたい気分の時が時々ある。そういう時は誘ってもいい?でも僕にはメリットないよね?」って言ってくれたよね。

僕は嬉しかった。君から残業後のお誘いがくるのを楽しみに毎日、仕事が出来そうな気がするよ。

メリットなんかいらない。君に会えること、それだけで僕は十分なんだ。

(君とのデートまであと46日)

T.Y.HARBOR BREWARY RESTAURANT
場所: 140-0002 東京都品川区東品川2-1-3
URL: https://www.tysons.jp/tyharbor/

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