麻雀と生態学(25) 生き残れ! ~華麗なる脱出計画~
概要
きたぜ、ぬるりと……
(三点リーダー過激派)
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本題
先日、長崎大の研究紹介で面白いものを見つけた。
ウナギの稚魚が、敵に食べられてからも鰓を通って脱出、逃亡できるというものだ。
厳密には、2021年に発見していた行動を今回はバリウムを用いたX線投影によって動画撮影により詳細に辿った、という研究内容のようである。
多くの動物は、そもそも食べられないような作戦を持っているものである。
仮装や隠蔽色・分断色、あるいは警戒色や目玉模様といった擬態(mimic)を行うもの。※1
他には、群れをなすことで薄め効果や捕食者の混乱、共同で防衛行動や見張り(警戒)を強化するなどの効果を得ているものもいる。※1
被食を前提とした戦略といえば、すぐに思いつくのは植物の種子散布。
他には、前回のコラムで取り上げたナナフシの分散などがあるが
いずれも糞に混じるなどの受動的な策略であることがほどんど。
ところが、今回の研究では”食べられてからが勝負”と言わんばかりの大胆かつ能動的な逃避行動が明らかにされている。
胃の中で素早く食道方向に尻尾を差し込み、鰓の隙間から尻尾を出して頭部を引っこ抜くという離れ業。
ウナギはなんとなく生命力が強いというイメージを持っている諸兄も多いであろう。
実際、ヌルヌルとした体に加えて、素早い脱出を可能にする筋力。
さらにはバック走の達人後ろ向きに泳ぐのが得意……などなど、フィジカルエリートであることは間違い無い。私が11人のドリームチームに、ウナギだけは入れてやってもいいレベルだ
絶滅が危惧されているウナギの稚魚についての興味深い行動であると同時に、バリウムを用いた実験手法、こちらもまた大胆で面白い。
GFPが分子生物学の研究を加速させたように、研究手法の開発というのも大切だ。
このように実験対象のサイズやスケール感に合わせて手法について試行錯誤できるのも、行動生態学の面白さ・醍醐味だと言えよう。
生き物たちの生き残りをかけた行動に触れるたび、常々気が付かされるのは諦めないことの重要さ。
ほんの僅かなきっかけを逃さずに、少しでも可能性を追う。
それは劣勢や逆境を跳ね除ける”底力”にもつながっていく。
麻雀もまた然り。
サンマ段位戦、ラスが重いルールでラス目のオーラス。
2位浮上(ラス回避)には満貫直撃 or 跳満ツモ条件だ。
配牌もサンマにしては悪い。ぱっと見、チートイドラドラ北あたりが狙えるか。
早々にドラ🀂を切られて……
🀃ドラがもう少しあれば面子手でリーヅモ狙いもアリだが、両脇に流れる。
しゃーなしで1枚切れの打🀁を選択したが、この順目であれば打🀓でまだいろいろ見たほうが良かったかも。
4枚目の🀃も3枚目の🀂も切られて、もはやドラ無し寸前。
繰り返すが、ここはハネツモ条件である。なんという無慈悲。
ツモもホンイツからは程遠く、なんとも噛み合わない。
🀃込で10巡目、いよいよ余談を許されない状況だ。
もはや捕食者の胃袋にすっぽり飲み込まれてしまっている。
依然絶望的ではあったが、ここで4枚目の🀂というきっかけを掴む。
これでリーヅモドラドラ北、裏や一発という僅かな条件が残った。
やるしかない!尻尾を全力で動かす。
一盃口がつけば条件クリアなので打🀠も選択肢だが、
・順目が余裕なさすぎて、まずはテンパイしないと話にならない
・🀂がもう無いため、対子もといシャンポン受けに価値がない
といった要素を重くみて、打🀙🀚の二度受け払い。正着かどうかは正直分からない。
選択が見事ハマり、ペン🀛でリーチ。
ツモ裏OK、鰓から尻尾を出すところまでは来れた!
きたぜ、ぬるりと……
一発ツモなら裏不要。最悪の配牌からハネツモ条件達成。
これをウナギの尻尾打法と命名しよう。
🀛がだんだんとウナギの稚魚に見えてきたではないか。ウナギなのかサンマなのかはっきりしろ
斯様にしょうもない、性懲りもない麻雀コラムではあるが……
増減するポイントに胃をキリキリさせながら打つ段位戦を、こんなきっかけで不意に笑うことができれば。
それは誰かにとって、無駄ではないのかもしれない。
では、また。
参考文献・図書
※1
行動生態学 原著第4版(共立出版)
著:B. Davies, R. Krebs, A. West
訳:野間口 眞太郎・山岸 哲・巌佐 庸
原著
How Japanese eels escape from the stomach of a predatory fish(Hasegawa et al., 2024)
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)00926-6
長崎大学Webページ
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