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1.「質と量」の両立 自分のライター人生を振り返る雑記


「質も量も」。明確にこの信念を持って働いてきました。理想論に思えますが、それぞれ意識する工程が違うので、実は両立できます。仕事を請けるときは量を第一優先にし、制作工程に入ってから質を第一優先にする感じです。

あとで質を担保すると自分に約束しながら、とにかく量を集める。社会人2年目で会社を辞めた私はこの精神で仕事を請け始め、思いの外肌に合っていたので、その後プレスラボという編プロに入って編集者になってからも副業のライターでこのスタイルを続けてきました。

というわけでまず、量の話。

基本的には、来た案件は全て受ける。フリーランスの世界では、ゲームでいう経験値の概念が色濃く出ます。クレジットの残る仕事はそのまま実績になるし、残らない仕事も、自分のスキルの糧にはなる。実績として提示できなくても、例えば「これと類似の案件を担当したことがあります」程度なら話しても怒られないはず。

つまり担当した仕事は、そのまま営業手段になります。株式会社自分の営業担当は、過去の仕事たち。何より、たくさん仕事をして記事を納品している人は、”安定稼働”という面でも安心感を与えられる。フリーランスに仕事をお願いする側の心理として、「フットワークの軽さ」「コストの低さ」というメリットと、「その人に何かあったら終わり」というデメリットは、いつもくっついているようなものだから。

だから、依頼が来たら絶対に引き受ける。引き受けたら絶対にやる。

…というのが普段のスタンスの9割。1割ぐらいは、「そうはおっしゃいましても今これを引き受けたら間違いなく死にますね」というアラートが正常に働くように、常に冷静さも残していた。だから断った仕事も正直あります。徹夜してどうにかなる繁忙なら引き受けてたけど(体質の相性もあるから真似しないでね)、そういうレベルでなく間違いなく倒れるなっていうやつ。それで泣く泣く断ったお仕事もありますが、そういうときはなるべく「この人良いですよ」とオススメのライターさんを伝えていました。←これ、同業者に喜んでもらえるし巡り巡って自分に声がかかることもあるので、良きです。

引き受けておいて、やっぱり納品できませんでした、がもっとも論外なのである。自分のキャリアのためにたくさん仕事を集めておいて、自分の都合で納品できなかったというのは、全然クライアントのことを考えられていない。

ただ、フリーランスのみなさまにはわかっていただけると思いますが、このバランスが本当に難しい。毎日違う動き方をするフリーランスにとって、「いけると思ったらいけなかった」(あるいはその逆)は往々にして起こり得ますよね。だからせめて「やばいかも」と思ったらその瞬間に相談しましょう。今だけ編集者視点で話しますが、これがあるとないとでは対応のしやすさが全然違うので…〆切前夜の深夜とかでも良いので恥ずかしがらずご相談ください…(懇願)

その上で、質の話。

そもそも私のライター仕事は、ほとんどの場合クレジットが出るので、質の低い原稿を納品してしまうと、自分の首を締めることになります。何より、自分の原稿は(客観的に100点でなくても)せめて主観的な100点ではあってほしい。これは言葉で説明しづらいのですが、作品か商材かでいうと、私は圧倒的に作品を書いているのだと思います。

誤字脱字などのミスがないことは最低限ですが、「ここの表現、あっちの方がより的確だったな」なんて後で思いついた日には地獄でして…。そうならないように、「書いて出し」は絶対にしません。初稿を書いて、推敲して、自分も原稿も一晩寝かせて、類語辞典片手に推敲を繰り返して、最後に音読して、提出。正直なるべく修正はもらいたくないので、構成の意図も簡単に添えたりして。

こうやって量と質を両立するためなら、徹夜もそんなに苦じゃなかった。日中は会社で編集者をしているので、ライターの仕事をするのはだいたい夜。それでも自分にとって、「誰にも邪魔されずに時間をかけて文章を書く」という時間は、これ以上なく贅沢なものでした。忙しいとか眠いとかすぐ口にする私だけど、あの時間がなかったら、それこそ辛かったと思います。


そういう生活をして、2年近くが経ちました。お世話になっている各編集部とも良い関係性を築かせていただき、好きな仕事ばかりいただけるようになった。めちゃめちゃ幸せ。会社では新人としての扱いが薄れていき、頼られることが増えた。めちゃめちゃ誇らしい。人生で一番生きやすい時期だった。


一方で、ふとした悩みが生まれる。「いつまで量も質も追い続けるんだろう」。双方をスマートにやり続けられるならまだしも、それまでの私は脳筋的にがむしゃらにやっている部分もあって、いつまでもこのスタイルは厳しいかもと思い始めた。偶然他のライターさんや編集さんとお話をする機会が重なり、考えました。体力的にも、そろそろ限界な気もする。


そして考えた結果、やってみたのが「アシスタントを雇う」「個人仕事の単価を決める」「会社の仕事を(一旦)減らす」…あたりのことなんですが、長くなっちゃったのでこれはまたの機会に。気が向いたら書きます。

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