![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/9019987/rectangle_large_type_2_cfb8f2059b4acd64ddb1b10d7bfce7cc.jpg?width=800)
Good night ~ 6夜:命名~
ーーーーーーーーーーー
《昨晩のこと》
ある晩。僕の影から手が飛び出してきた。その影は僕に害を及ぼすモノではなかった。話を聞いて今の状況を整理しようと考えていると、母が僕の部屋までやってきた。母から逃げるために影を手足にまとい僕は窓から飛びだした! 影の力は僕の想像を超えるものだった。その力を楽しむように、僕は深夜の街を跳びまわった。最後にマンションの屋上で日の出をみようとした時、僕の目から涙が流れだし止まらなかった……
ーーーーーーーーーーー
ズッ~~! と音を立てながら鼻をすする。ようやく涙が止まり、高ぶっていた感情が静まる。そのころにはすっかり日が昇っていた。
僕が涙を流している間、影は一言もしゃべらずにいてくれた。ありがたいことなのだが、今はこの沈黙が少しばかり気まずく感じる。
その時、あることを閃く。
「そうだ! 名前付けてやるよ?」
「ぬわぁん⁉︎」
驚きで影が変な声を出す!
「誠でございますか? 私に名をつけて下さると!?」
あまりのテンションの上がり方に、僕の方がビビッてしまったが話を続けた。
「だって、ないと不便だろ? いつまでも『オマヘ』って呼んでられないし?」
「あ~~なんと素晴らしい! 私の様な、ただの影に主は名を与えて下さるというのか……。本当に素晴らしい主だ、あ~主様‼」
「もういいから、何かこういうのがいいとかあるか?」
「主が下さる名でしたら何でもかまいません」
何でもいいっていうのが一番困るんだよな……。ん……と、軽く声を出しながら考える。その時、僕はふと後ろを振り返った。朝日に当てられ自分の影がマンション屋上の床に見えた。
僕はその影がゆらめいているように見えた。きっと、目に残る涙が影響したのだろう。その影を見た時だった。一つの名が頭に浮かんだ。
「……『カゲロウ』」
とても静かな声で、頭に浮かんだその名を囁いた。
「カ・ゲ・ロ・ウ」と影が繰り返した……。
「あ⁉︎ ごめん、ただの思いつきだから嫌な『すっっばらし~~‼ 名前です‼ 是非、今この時よりその名で私めを及び下さい‼』」
僕の言葉を途中で遮り「カゲロウ」は喜びを爆発させた!
「わかったよ。じゃ、改めて『カゲロウ』これからよろしくな!」
「ありがとうございます、主。頂戴した名に恥じぬようこれからも主に使えてまいりますのでよろしくお願い致します!」
少し重いなと、感じたがあえて言葉にはせずにそのままにしておいた。
「よし、そろそろ戻るか!」
僕はその場で立ち上がり、軽く屈伸した。
「そうですね。そろそろお戻りになった方がよろしい時間でしょう」と言いながら、カゲロウは影を僕の腕と足に延ばし覆った。
「よし!」
自分の腕と足に影が付いたのを確認し、僕はマンションの屋上から四階にある自分の部屋の窓めがけて飛び降りた。
【続く】
読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。