トップ

【ミャンマー市場調査】通信会社の決算書から今後の動向を考える

こんにちは、Healthy Humanity Myanmar co.,Ltdです。

弊社はミャンマーにて現地人向けのモバイルコンテンツ(アプリ、ウェブ)を提供しています。
現地に進出している数少ないIT企業として、ミャンマーにおけるデータ関連の情報を主に発信していきます。


今回はミャンマーにおける3大通信会社のうちの2つ、Telenor(ノルウェー)とOoredoo(カタール)の2017年決算書から各社の「現状」「今後の方向性」を見ていきたいと思います。(他1社 MPT:KDDIと住友商事が共同で事業に参画しています)

ミャンマーでは2014年に通信事業の自由化により、外資であるTelenorとOoredooが参入し、3社間で激しい価格競争がおこりました。
その結果価格が下落したことで爆発的にスマートフォンが普及し、最近ではsimカードの発行枚数が累計で5400万枚超え(人口比100%超)するなど、2014年以前は一桁%だったインターネット・スマホ人口が急激に増えているという現状です。


通信会社の基本公式

早速ですが、基本的に通信会社の売上として

売上 = ユーザー数 × ユーザー1人あたりの売上(ARPU)

という公式が成り立ちます。

ここからは上記の公式、各社の売上、ユーザー数、ARPU(1ユーザーあたりの月間売上高)、EBITDA(営業利益 + 減価償却費)に焦点を当てながら考察していきたいと思います(今回はEBITDAを企業の利益として考えていきます)。



2社の現状(2017年各社Annual Reportより)

下記2社の数字をまとめた表から比較していきます。

※1NOR=13.61円、1QAR=30.17円(2018年5月2日)
※2017年Annual Reportより

Telenor Myanmar(以下Telenor)
2017年の売上が約903億円、ユーザー数が約1950万人となっています。
ARPU(1人あたり月間売上高)は386円あるということになります。
EBITDA(%)は売上の中のEBITDA(利益)が占める割合です。
EBITDA/月が162円なので、Telenorはユーザー1人から毎月162円の利益をあげていた、ということがわかります。

Ooredoo Myanmar(以下Ooredoo)
2017年の売上が約400億円、ユーザー数が約790万人となっています。
ARPU(1人あたり月間売上高)は421円あることになります。
EBITDA(%)は売上の中のEBITDA(利益)が占める割合です。
EBITDA/月が46円なので、Ooredooはユーザー1人から毎月46円の利益をあげていた、ということがわかります。
Ooredooは2016年までEBITDAがマイナスだったのを2017年でプラスに転換しています。EBITDA(%)が11%というのは通信会社においては低い数字ですが、今回プラスに転換しているのでこれからどんどん改善していきそうです。


考察
2017年の結果を見ると現状の数字は上記のようになりました。
日本の通信会社(docomo、au、softbank)はEBITDA/月が約1500円なので、そこと比べると大きな差があるのですが、国民の所得が増加するのと比例して今後1人あたりが使用する料金(ユーザー1人あたりの売上)が増えていくことは間違い無いと考えてます(もちろん各社の努力もそうですが)。
なので通信会社の売上を考えた時に、

売上 = ユーザー数 × ユーザー1人あたりの売上(ARPU)


上記の公式から今後どれだけ多くのユーザーを囲うことができるかが一つの重要な数字となってくると思われます。
(ミャンマーはsimカード購入が簡単で1人で何枚も所有することができ(プリペイド顧客)、日本(コントラクト顧客)との違いはあるので料金比較は参考までに)



今後の方向性

ここでは各社が決算書に示している今後の事業の方向性をまとめていきます。
Telenorは2017年のAnnual Reportにミャンマー事業の詳細がなかったので、2018年Q1からの方向性を抜粋しています。

Telenor(2018年Q1)

"The revenue trend from reduced voice usage and price reductions continued this quarter and resulted in revenue decline of 6% compared to last year.
Capital expenditure continues to be driven by network expansion and 4G roll-out."
“音声電話の減少と価格の低下による収入の動向は今四半期も継続し、昨年に比べて6%の収入減をもたらしました。
設備投資は、ネットワークの拡大と4Gの導入により引き続き推進されています。”

Telenorは価格の低下などによる収入減が続いているようです。ちなみに2017年は、ミャンマーに進出して以来初の減収となっています。
今後の方針としては引き続きネットワークと4Gの拡大に力を入れていくようです(ヤンゴンに住んでいる個人的な感覚だとTelenorが一番通信速度が早いです)。


Ooredoo(2017年Annual Report)

"・In addition, Ooredoo Myanmar launched 2G nationwide. 2G services provide access to a wider market that was previously untapped. These were key initiatives for the company, as the network expansion to rural areas supported Ooredoo’s goals of digitisation.
・Looking ahead to 2018, Ooredoo Myanmar is going to extend its 2G and 4G coverage and further tap into a wider customer base. Mobile financial services and digitisation will continue to remain key priorities, as well as focused regional execution. These initiatives will support long-term revenue and customer growth ambitions moving forward. "
“・さらに、Oredooミャンマーは全国的に2Gを立ち上げた。 2Gサービスは、これまで未開拓だったより広い市場へのアクセスを提供します。 農村部へのネットワークの拡大がOredooのデジタル化の目標を支持したことから、これは同社にとって重要な取り組みでした。
・Oredooミャンマーは、2018年に向けて、2Gおよび4Gのカバレッジを拡大し、さらに幅広い顧客層に浸透します。 モバイル金融サービスとデジタル化は引き続き重要な優先事項であり、焦点を当てた地域執行のままである。 これらのイニシアチブは、長期的な収益と顧客の成長の野望を前進させることを支援します。”

Ooredooは2017年から2Gサービスを全国的に立ち上げ、これまで未開拓であった農村部への展開と、同じく2017年からスタートしたモバイル金融サービス「M-Pitesan」に力を入れていくようです。

考察
今後の方向性は2社間で違いが見られました。Telenorは4Gの拡大に焦点を当てる一方、Ooredooは4Gの拡大とともに農村部での2Gの拡大も考えています。
さらにこれは個人的な見解ですが、Ooredooの金融サービスである「M-Pitesan」も同じく農村部での展開・拡大を考えていると思います。農村部などでは銀行がそもそも近くになかったりすることもあるので、2G通信と金融サービスで農村部のインフラを先に構築できれば、ユーザーは他の通信会社への乗り換えがしにくい状況が作れるので長期的な視野での収益を見込んでいるのでは、と考えます。
(あとはヤンゴン市内で全く広告を見たことがないため)


下記画像は各通信会社の通信エリア(強弱)を表した図になるのですが、

MPT

Telenor

Ooredoo

若干の違いではありますが、農村部(地方)に多く展開しているのはMPTとOoredooで目立ちます。一方Telenorは範囲は他の2社と比べると範囲は狭いように見えますが、赤の点(通信が弱い場所)が少ないようです。
各社の今後の方向性と一致しているように見えます。
https://opensignal.com/networks/myanmar/mpt-coverage (OpenSignalより)


売上 = ユーザー数 × ユーザーあたりの売上(ARPU)

通信会社の基本的な売上公式から、「ユーザー数を増やす(囲う)」ことを1つの指標として考えた時、
料金や通信範囲・速度などはもちろんですが、多くの人がスマホを持つようになった今、「M-Pitesan」のような自社サービス・自社プロモーション(他サービスとの連携)など、「通信以外のサービス」に焦点を当てることも重要になってくると考えています。
そこで次は各社の提供している自社サービス・プロモーションを比較してみます。



自社サービス・プロモーションや機能の現状

Telenor
主な自社サービス
・Wave Money(モバイル金融サービス)
・占いサービス

プロモーション・機能
・トップアップ決済(プリペイドでチャージしているものから決済ができる)
・ストリーミングサービス等との連携
https://www.telenor.com.mm/en/personal/music-video-pack

Ooredoo
主な自社サービス
・M-Pitesan(モバイル金融サービス)
・SitePyo(農業関連メディア)
・占いサービス

プロモーション・機能
・トップアップ決済(プリペイドでチャージしているものから決済ができる)
・ストリーミングサービス等との連携
http://www.ooredoo.com.mm/en/Personal/Entertainment.aspx


考察
自社サービスとしては2社とも金融サービスを展開しており、Ooredooがより多く自社サービスの展開をしているようです。ただ、現時点での個人的な感覚では、どれもそこまで頻繁に使われているという印象は今のところありません。
機能に関しては2社ともスマホにチャージしている残高から決済ができるトップアップ決済があったり、
プロモーション(連携)に関しては、Telenorは国際的なサービス(JooxやYouTube)との連携が多いのに対し、Ooredooはローカルのサービス(音楽、ラジオ、美容、妊婦向けメディア)と連携しているものが多いようです。また、2社ともすでに連携しているサービスもいくつかあるので、やはり差別化を考えたときにどのような自社サービスを展開するかが1つの分かれ目となりそうです。


ちなみに少し古いデータになりますが、2015年と2016年でミャンマー人の携帯の使用目的とその割合が変化しているというデータもあります。

※Mobile phones, Internet, information and knowledge Myanmar 2016より(n=7,204)
http://lirneasia.net/wp-content/uploads/2017/09/Mobile-phones-Internet-information-and-knowledge-Myanmar-2016.pdf

上記データによるとゲームや音楽、ビデオなどエンタメ要素のサービス利用者が増えています(個人の感覚としてもエンタメサービスが増えているのは感じます)。
今後はショッピングやユーティリティなど、他カテゴリのサービスもどんどん増えてくると思うので、どんな自社サービスを提供していくかユーザーがどんなサービスを求めているのかが難しいところになってきそうです。



まとめ

2社の現状(2017年Annual Reportより)
Telenor:売上903億円、ユーザー1950万人、1ユーザーあたり売上(月)386円
Ooredoo:売上400億円、ユーザー790万人、1ユーザーあたり売上(月)421円
■ 1人あたり売上は今のところ大きな差はなく、今後所得の増加につれ金額も増えると考えられます。よって、いかにユーザーを囲うことができるかが重要。

今後の方向性
Telenor:ネットワークと4Gの拡大に力を入れる。その他詳細は不明。
Ooredoo:2Gと4Gの拡大、自社モバイル金融サービスを優先事項とする。
■ Telenorは通信の質に力を入れ、Ooredooは現状の改善にプラスして長期的な視点で農村部への展開・拡大に力を入れていく。通信のクオリティはもちろんだが、自社サービスの展開・拡大でユーザーを囲うことも必要になってきそう。

自社サービス・プロモーションの現状
■ 今のところ大きな違いはないが、今後ユーザーを獲得・維持するにあたって大きな要因になると考えられる。ユーザーの興味関心も年々変わっているのでどのカテゴリで展開するかが難しいところ。


また、今回記述していませんが今年から第4の通信会社としてベトナムのMyTelがサービスの提供を開始しています。
既存の3社に加え、MyTelも今後どのように展開していくかが見どころです。

MPTもポータルサイトのLotayaや占いサービスなどいくつか自社サービスを展開していますが、今後もどんなターゲットを狙ったどんなサービスを展開していくのか気になるところです。
個人的には、ミャンマーで複数あるがまだパッとするようなサービスは出ていないモバイル金融サービスもいいですが、ゲームやメディアなどのカテゴリで勝負するのも面白いのではと考えています。



さいごに

長くなりましたがHealthy Humanity Myanmar co.,Ltdではミャンマー人向けのモバイルコンテンツを現地で展開しています。(現在約20万人ユーザー)
同時にそのユーザーを活用したミャンマーの市場調査サービス(オンライン・オフライン)も日系企業様向けに提供していますので、ミャンマー人の生活・興味関心や市場動向に興味のある方はぜひお気軽にご連絡ください。


Telenor 2017 Annual Report

Telenor 2018 Q1

Ooredoo 2017 Annual Report


#ミャンマー #アジア #市場調査 #サーベイ #決算書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?