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社内ベンチャーからの独立。「共進化」しつづける存在であるために【対談】みらいマルシェ

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。

今回は、RELATIONSの社内ベンチャーから独立・起業したみらいマルシェ株式会社のお二人と対談しました。

みらいマルシェが独立してから4年半が経過。いまだからこそ語ることのできる事業譲渡当時の心境や、ともに影響し合いながら進化しつづけている現在の関係性まで、ありのまま互いの想いを話しました。

私たちの経験が、社内で新規事業に取り組んでいる会社や、事業譲渡・事業譲受して奮闘している方々への、何かしらの気づきにつながるとうれしいです。

みらいマルシェ株式会社について

2018年に創業。生鮮品流通のDXを推し進める企業として、法人向けに生鮮品取引プラットフォーム「みらいマルシェ」を展開。
産地と生鮮小売店をマッチングし、毎日の取引を円滑に進めるための”クラウド版の市場”をスマホアプリやWEBサービスとして提供する。

みらいマルシェを起業したお二人。土屋さん(左)と代表・井口さん(右)。

1.「みらいマルシェ」 誕生のきっかけは社内の新規事業。原点は社会を良くしたいというピュアな想い

ーーみらいマルシェはどのように立ち上げたのでしょうか?

土屋: 私は元々RELATIONSの共同創業メンバーの一人としてさまざまな事業に携わってきました。そのなかのひとつで、2016年に事業立ち上げをしたのがみらいマルシェです。当時、会社は「世の中にあるマイナスをプラスに転換する」というミッションを掲げていて。顧客に寄り添うことで課題を特定し、それを解決していけるサービスを立ち上げていこう!という時期だったんです。実際に4~5つのさまざまな領域のベンチャー事業が立ち上がっていましたね。

井口: 当時はコスト改善やITコンサルティングをさせていただく食品スーパーの顧客が多く、支援するなかで生鮮食品の仕入れに業界全体として課題があることを発見したんです。アプリで出荷側と仕入れ側の情報をスムーズに交換することでより良い取引になるはずだ、そしてそのモデルは全スーパー・全小売店に展開できるし、社会を前進させるものに成長するはずだという確信がありました。
元々私がエンジニアだったこともあり、コンサルティングという形ではなく、プラットフォームの形で、仕組みをつくることで課題解決したいという想いも強かったです。とにかくワクワクしていましたね。

長谷川: いま振り返っても、創業からすべての新規事業に共通しているパターンは、サービスの形を市場から見て作っていくのではなくて、現場にどっぷりと入り、そこから顧客課題を発見し、サービスに落とし込んできたことだよね。

土屋: そうですね。どの事業においても、創業時から変わらず「目の前のお客さんが困っているから助けたい」という情熱が最大のモチベーションでした。みらいマルシェについても、最初は生鮮食品に詳しいわけでもなく、得意な分野でもなかったのですが、「これが実現できたらお客さんが喜んでくださる!そして社会にも大きなインパクトが出せる!」と考えたら迷いは一切なく、実現に向けて一直線でした。

2.「社員とのつながり」と「事業成長」の二者択一。共同創業企業だからこその苦悩

ーーみらいマルシェの顧客も増えてきた中で、立ち上げから2年半後の2018年には独立・起業されていますが、当時はどのような状況だったのでしょうか?

長谷川: その頃はミッションを最上位に見据えて、複数の新規事業を展開しており、社員も増えて50名以上に。会社の柱となるコスト改善コンサルティング事業の収益を、残りの事業の投資に回すという構造でした。
結果として、「自分たちの事業投資や報酬にも還元してほしい」というコンサルタントからの声も上がり始めていました。各事業が全体最適を見るよりは、部分の事業の最適化を模索するエネルギーが強まり、成長をつづけるためには構造全体の整理をやる必要があることを感じていました。
全社として何を大切にするのかをあらためて考え、新しいパーパスの策定に時間を使うように。そこから「ええ会社をつくる」というパーパスに変更しました。大きな変化としては、会社として事業ドメインの「スコープの境界」を改めて線引きすることになったことです。
私自身を振り返ると、スコープを明確にしなければいけない、という一方で、大切なメンバーたちとのつながりは切り離したくないという、相反する気持ちの狭間で苦しんでいた気がします。そういった葛藤によって意思決定が先に伸ばされていたように思います。

井口: 「会社としての意思決定が難しく、臨界点に来ている」という感覚を私も受けていました。一方で、みらいマルシェがもっと早く売上で会社に貢献できるところまで成長し、社内の全メンバーが当たり前に納得できる状況をつくることができればよかったな、という反省もあります。

土屋: みらいマルシェを始めたころは、事業のこと「だけ」を考えて邁進していたのですが、社内の歪みが出だした頃から、「社内メンバーの理解を得るためには、事業成果をどう説明しよう?ほかの事業とどうやってシナジーを生み出そう?」と顔色を伺うことに時間を費やすように。
全社的な課題解決と、個別事業を成長させること。2つの整合性を取らなければいけないことが、いつしか葛藤になっていました。

長谷川: それぞれの立場で葛藤があり、会社全体が変わろうとしているタイミングだったのかも。
あと、共同創業というRELATIONSの創業形式も影響しているのだと感じます。一緒に創業した一人ひとりが会社に対して想いを宿していて、根っこではつながり合っている。ただ、具体的な事業方針となると意見が異なることも出てきて、人のつながりを重視しようとすると矛盾が生じて。
根っこが絡まり合い、価値観が完全には擦り合っていない中、それでも先へ先へと進もうとして苦しかった。自分からの見え方にはなりますが、どの選択をしても、それなりの痛みはあっただろうなと思います。

3.独立を決意。魂の宿った事業を受け渡し、継承していくということ

ーー対話の末、「みらいマルシェは”ええ会社をつくる”というパーパスのスコープからは外れる」という意思決定をされました。事業譲渡し、起業する決心したときのそれぞれの心情を教えて下さい。

長谷川: 正直、みらいマルシェは自身の魂が宿っている感覚を持てた事業だったので、なんとか自社で成長させたいという思いも強かった。だから「寂しい」という感情が一番に湧いてきました。会社と事業を、親と子のような関係で捉えて、まるで自分の物のような感覚に囚われていた。
そうではなく、お互い自立した存在であるという前提で見る視点があればもっとフラットに対話できたのかなと、いま冷静に考えるとそう思いますね。

土屋: なるほど。子どものように思っていてくださったというのは聞いて納得しました。私としては、対話の終盤には「独立がベストな選択だな」と思えていました。みらいマルシェのサービスによって顧客が喜んでくれる姿をすでに見ていたので、今後はすべてのパワーを事業と顧客に注ぐことができるんだ!という気持ちでした。

井口: 自分たちから「独立したい」と出ていった訳では無かったですし、不安がゼロだったと言ったら嘘になります。しかし決断したときには「新たなチャレンジがここから始まるんだ!」という使命感が強かったです。二人とも前を向いていこう!というエネルギーで溢れていました。

長谷川: 事業をする上で一番大切なのは、根源から湧き出てくる「衝動」だと私は考えていて、当時も何度も確認していましたが、やっぱり井口さんと土屋さんにはそれがしっかりと宿っていたんだな、と感じますね。

▼衝動についてはこちらに詳しく綴っています。

4.事業を「我が事化」できたときに見える景色

ーー独立されてからの一番の変化はなんでしたか?

井口: ライフと事業が同一化された感覚で、より自然体で仕事をできるようになりました。一方で、会社経営のすべてを見る必要があり、そのすべてが自分たちそのものを投影してしまうという怖さも感じました。二人が成長しない限り、事業も育たないという感覚。
社内ベンチャーの頃は、まだ言い訳の余地を持っていたのかもしれません。

土屋: 自ら資本を入れて一連託生になったこともあり、より良いサービスにしよう、成長しようというパワーや想いは、倍どころではないくらい強いものになりました。以前も幸せでしたが、いまはもっと幸せです。

長谷川: 私も27歳でRELATIONSを創業したときに、同じ原体験があります。会社員のときと経営者では、我が事化の度合いがあまりにも違う。逃げられないので、内面にも向き合わざるを得なくて。その体験以前・以後での自身の変容が大きかったんですよね。
ただ、決して辛いことだけではなくて、本当に会社や事業が我が事化できたとき、人生で得られる楽しさや鮮やかさはガラッと変わります。そんな経験を多くの人がしやすい会社の仕組みや社会構造をつくっていきたいという思いはありますね。

5.4年半ぶりのメンバーとの再会。RELATIONSの全社合宿で受け取ったお互いのエッセンス

ーー独立から4年半。それまでは時折情報交換をし合う関係だったと伺いました。そんな中、2023年1月に開催されたRELATIONSの全社合宿に、みらいマルシェも参加。長谷川さんがお二人をお誘いした背景を教えて下さい。

長谷川: 2022年末に3人で食事をしたことがきっかけで。話をするなかで、直感的に「誘ってみよう」と思って声を掛けました。

井口: みらいマルシェはそのとき転換期に来ていたんです。描いている事業構想を実現していくには、二人では到底タスクを捌ききれない。人を増やし、組織、チームを強化するタイミングだと感じていて、長谷川さんにもご相談していたんです。

長谷川: みらいマルシェが独立してからRELATIONSも大きく変化しました。いまの組織を見てもらうことで、何かしらの示唆につながれば良いなという思いと、培ってきた組織づくりの知見をそのまま渡すこともできるかも、と感じたんです。
RELATIONSとしても、昔の仲間から、感じたことを客観的にフィードバックしてもらうことは深い気づきにつながるなと。

井口: 私がRELATIONS の変化を見て感じたのは、組織はデザインできるんだという発見と希望です。長谷川さんが自分で混ぜた絵の具で、経営者として筆を握って絵を描いている。意図したところにちゃんと着地されていることに純粋に尊敬の念をいだきました。
気づいたらこんな組織になっていた、ではなく、意思を持って自分らしい組織の描き方をしなくては、とハッとしました。

土屋: 実際目の当たりにして、いまのRELATIONS は年輪を刻んだ円熟味のある組織に映りました。みんなで一つの方向に向かっていくぞ!という気持ちが場にあふれていて、空気感としては創業時に近いような印象。
2018年当時は、合宿や全社会議といえば、自分の考えを正として意見をぶつけ合う「議論の場」だったのですが、いまは進んでお互いを理解し合い素直に受容する「対話の場」になっていました。安心感を感じましたね。

長谷川: この5年間は、共同創業者から始まり、RELATIONS全体の絡まりあった根っこをほぐして、整理して。根幹にあるものと、組織や事業として現れる表の部分を、対話しながら整合性が取れるように作り直していった。それを感じてもらえたのかもしれないですね。
井口さん、土屋さんは、合宿の場で仲間に溶け込みながらも、客観的にどう見えているのかを伝えてくれた。それがみんなに届いている感覚が大きな収穫だなと思っています。

▼2023年1月の全社合宿レポートはこちら

6.これからも”共進化”しつづける存在でありたい

ーー両社は今後どのような関係性でありたいでしょうか?

長谷川: いまの延長線上で、自立している両社が共進化していくことが理想ですね。助け合えるところは助け合い、ともに影響を受け合いながら進化していく。同じ組織で時間をともにしたからこそ、深い根っこから価値観や情報を共有・共感できる、兄弟のような貴重な存在ですからね。

土屋: 今後もRELATIONSのメンバーとはコミュニケーションを取っていきたいです。元社員として、そして外部の社員としても、相談いただいたらお返しできることも色々あるのではないかなと思っています。お互いに助け合える関係は素敵ですよね。

井口: 私達はRELATIONSや長谷川さんが心のどこかにメンターとして居ることで安心して走ることができます。とはいえ甘えず、独立した以上は、ちゃんと自立した存在として成功することが恩返しになると思っています。そういう意味でも、事業をもっともっと安定したものにしていかないと。
今後、生鮮品流通における「社会基盤」と呼ばれるレベルまで、しっかりとみらいマルシェのサービス拡充や基盤の安定化を図っていきます。毎日新鮮な魚や野菜が出品され、バイヤーさんたちが毎日それらを買い付ける。この「日常」をもっと多くの方たちに届けていく。
これまでは意図してチームを拡大してきませんでしたが、これからは大きくフェーズを変え、チームの強化を図っていきます。「私たちが社会を支えていくんだ!」という情熱にモチベートされるような、使命感に満ちたチームを組成したい。成長して、いつか長谷川さんとお酒を酌み交わすことができたら幸せですね。

 長谷川: 組織も人も、一時として同じものはなくて、変化しつづけていくからこそ、その時々に応じて適切な付き合い方があるんだろうなと思います。酒を酌み交わす世界観に行けるように、今後も成長しつづけ、良い関係性を築いていきたいですね。
ありがとうございました。

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