見出し画像

自己組織化がこれからの組織のスタンダードになっていくという話

こんにちは。RELATIONSの長谷川です。今日はティール組織の一つ形態である自己組織化について書いてみたいと思います。

まずは、山口周(@shu_yamaguchi)さんが投稿されていたtweetを見てほんとそうだよなと思ったので、掲載します。

スクリーンショット 2020-01-06 6.26.03

今の私たちは人類の進化のど真ん中にいます。あらゆる領域でイノベーションが起き、取り巻く環境は刻一刻と変化しています。後述しますが、大きな変革が起きるとそこから次第に、人の意識は変遷していきます。意識が変遷していくと人の中にある根底の価値観が変わります。つまり、これまで価値を感じていたものが、突如として必要ないものに感じられるようになったりします。

例えば、今から約13年前の2007年6月29日。iPhoneの発売日です。頭の中をこの時代にワープさせ、当時の自分になり、未来がどのように変わっていくかを想像していくとどのようなことが頭に思い浮かぶでしょうか?

今の世の中のようにスマホが85%を超える普及率となり、Slack、twitter、Facebook、メリカリなどを今のように活用する日々は想像できたでしょうか。一握りのビジョナリーには想像できたかもしれませんが、多くの人にとっては予想以上の進化に映るのではないでしょうか。

こうなる要因は2つあります。1つは、スマホが私たちの日常に普及し、活用をしていく中で様々なことに変化が起きています。一例ですが、コミュニケーション、仕事の仕方、情報量などです。そうすると、意識レベルでの変遷が実際に起きてきます。それらが、今と過去の自分の価値観の違いに直結してきます。そして、もう一つは、現時点から未来を見通す場合には、変化への恐れと今の当たり前がバイアスになり、保守的な想像をしてしまう人が多いという点です。これは人間の脳の構造に関わる部分でもありますが。この辺りが山口さんの記載したtweetには密接に関連しているのかなと思います。

特に今はVUCAワールドと言われ、情報量が増え、変化の速度が速くなっている時代です。物事が大きく変わる台風の目の中にいるのだと常に認識していくとより冷静に物事が見えてくるのだと思います。

自己組織化が実際にこれからのスタンダードになるという話はここまで述べてきたことと密接に関わります。抑えておくべきは、根底が変わるような歴史的変化が起こると、段階的に個人の意識構造が変遷し、その意識段階に応じて組織が変化していくという流れです。組織の起源にも同様のことが起こっているので、まずはそこから見ていきたいと思います。

組織の起源の話

組織の歴史の事例として「サピエンス全史」の一節が非常に参考になったので、一部抜粋します。

七万年前から三万年前にかけて見られた、新しい思考と意思疎通の方法の登場のことを、「認知革命」という。
これにより、それまでにない形で考えたり、まったく新しい種類の言語を使って意思疎通をしたりすることが可能になったのだという。

伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。それまでも、「気をつけろ!ライオンだ!」と言える動物や人類種は多くいた。だがホモ・サピエンスは認知革命のおかげで、「ライオンはわが部族の守護霊だ」と言う能力を獲得した。虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語の特徴として異彩を放っている。

この虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。聖書の天地創造の物語や、オーストラリア先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。

ホモサピエンスは、「共通の物語(虚構)を信じる力」によって他の動物とは全く違う生物となった。

サピエンス全史(上)より部分抜粋

この本の中で「認知革命」とありますが、文字や言葉の普及が、組織という概念ができるトリガーになっています。認知革命以前の人類は、大胆に言ってしまうと、チンパンジーやゴリラのような類人猿とほぼ変わらない動物でした。群れをなして、その群れの長が率いていく。猿山のような感じですね。ここに言葉と文字という変化が訪れて、人の意識構造の変遷が起きています。文字や言葉という新たなイノベーションを生活の中で使いながら、創意工夫をしていく過程で、組織という枠組みができてきたと解釈ができるのではないかと思います。

また、ここで記載されている共通の物語(虚構)というものが、現代の組織における共通の目的であるミッションやビジョンと同様に機能しているのだと思います。この時に初めて人間の頭の中にある共通の物語が集団に共有されて、社会に具現化するために協働していく組織が成立したのだと思います。そこから発展し、国家や宗教などの概念が世の中に生まれてきています。先程のiPhone同様に言葉や文字という新しいイノベーションが人類を他の類人猿と差が生じさせ、新たな人類の当たり前を創り出してきているということです。

歴史的な変化と人間の意識の変遷段階について

意識構造の変遷についてここで少し深堀りをさせていただきます。ベストセラーになった「ティール組織」に出てくる色(ティール、グリーン、オレンジなど)は皆さんご存知の方も多いかと思います。その研究の背景にあるのは、ケン・ウィルバーの「インテグラル理論」というものです。その本で使われていたスパイラルダイナミクスという意識構造の変遷の研究データと意識構造の出現時期、さらには、どのような歴史的なイベントがあったかを簡単にまとめてみました。面白いことに意識の変遷段階と人類の進化の歴史は大部分で出現時期が符号しています。スマホやインターネットの普及に応じた意識の変遷を私たちは今味わっていますが、歴史的にも同じようなことが起こっているのです。表を御覧ください。

スクリーンショット 2020-01-06 19.07.55

※「インテグラル理論」より抜粋し、加工

10万年前はチンパンジーやゴリラと変わらず、自然の中で通常の動物と同じように群れで住んでいました。その時代は、本能によって生きている状態です。

そして、前述しましたが、5万年前に認知革命があり、文字や言葉を使いこなすようになり、組織的に共同生活していくようになります。ここから部族などが生まれます。

レッドの出現時期である1万年前は、部族間の戦争が初めて見られた時期と符号します。自分たちにとってより豊かな生活をしていきたいという欲求から侵略が始まります。時代が少し進んで、5000年前ブルーが出現するのは、首長制国家や宗教などが起こり始めている時期と概ね一致します。

そして、今の主流であるオレンジは、300年前に出現してきており、産業革命の時代と概ね一致します。この時代から資本主義が世界的に進み、世界大戦なども繰り広げられるようになりました。

150年前には、グリーンが出現してきております。戦争や行き過ぎた資本主義的へのアンチテーゼとしてそういった意識段階の人が出現してきていると考えられます。そして、イエロー以降は通信や電話、インターネットなどあらゆる領域でイノベーションが生まれており、特に30年前以降は、インターネットやスマホなどが飛躍的発展をしてきた情報革命と密接に関連していると考察できます。もちろん、歴史認識は諸説あるので、一つの仮設として捉えていただければ幸いです。

何よりも大事なことは、大きな変革やイノベーションに伴って世界中に住む人々の意識段階の大きな山が移動してきており、その移動に伴って世界の情勢や物事の価値基準が変わっていっていることです。この移動に伴って世の中に新しいトレンドが生まれたり、ムーブメントが起きています。特に昨今起こっている情報革命は、情報の流通量やコミュニケーションの仕組みに大きな変化が起きています。

組織と自己組織化とは?

では次に、組織と自己組織化について考えていきたいと思います。まずは、組織の定義を確認してみます。

・組織とは?

組織の定義 by wikipedia
共通の目標を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステム

個人的にはシステムとなっているのがいいなと思っています。集団ではなく、システムとして捉える方が組織の実体を正確に掴み取りやすいと感じています。

この定義は、チェスター・バーナードという方が提唱がベースになっています。さらに、バーナードは、組織には3つの成立要件があると言っております。詳細は下記。

チェスター・バーナードの組織成立の3要件
①共通の目的
②協働意欲
③コミュニケーション

これらが一つでも欠けると組織としては成立しえないという訳です。結構しっくりとくるのではないかと思います。

・自己組織化とは?

自己組織化というのは、組織形態の1つであり、自然界においてはあらゆるところで見られる現象です。人間の身体、鳥の群れ、アリや蜂などのコロニーも同様に自己組織化と言われています。

その定義は下記のようになります。

自己組織化の定義 by wikipedia
物質や個体が、系全体を俯瞰する能力を持たないのに関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のこと

例えば、コケて肘を擦りむけば、人体の37兆個の細胞が誰が指示をするまでもなく自然に反応し、互いに連動して傷の治癒をしていきます。
また、鳥が群れで飛ぶとき、それぞれの個体は、周囲の変化を感じ取りながら、主体的に群れの飛行に適応します。これにより少ないエネルギーで長時間飛行できるようになります。誰が指示するのでもなく、同じ速度、接近する、衝突回避という3つの暗黙のルールが働いているだけです。

自然界では普通に見られるものですが、人間界においてはなぜ難しいのか。それは、人間の持つ意識構造や感情による部分が大きいと思います。ミツバチなどは、コロニーを維持するために女王蜂、雄蜂、働き蜂と役割が違います。感情や意識構造というものが昆虫にはないので、それぞれの役割に冷静に徹することができています。

ただ、意識や感情を持った人においても人体のように心臓の役割、脳の役割、腎臓の役割というように区切って組織全体を構成し、ロール主体で運営していくような組織は成立するのではないかと私は感じています。それを作り込んでいるのがまさに「ホラクラシー」だったりします。これまでの過去の時代に実現するのが難しかったのは、人の意識構造の変遷段階とコミュニケーションに課題があったからだと感じています。

情報革命が組織を「自己組織化」へ推し進める

今では私たちにとって当たり前になっているインターネットやスマホなどのイノベーションは私たちの意識構造の変遷を急速に速めています。

今のヒエラルキー型の組織はオレンジやブルーなどの意識構造と非常に相性が良いです。しかし、今のインターネットを含めた情報革命はターコイズへと段階的に私たちの意識構造を誘っています。

ここで認識しなければならないのは、進化の過程はこれまではもっとゆっくりだったことです。数百年、数千年かけて次の意識段階へと以降しているのに対して、今は急激な変化が外部環境では起こっています。人の意識が進化するスピードとイノベーション速度との間で歪みが生じているのが、現在の社会のあちこちで起こっています。

ただ、これらは今過渡期だからこそ生じる歪だと感じています。10代の子どもたちはすでにスマホがある社会しか経験しておらず、意識構造の変遷のスピードも実際上がっているという研究もあります。インターネット自体が人間の脳でいうシナプスのような役割を果たし、これまでのコミュニケーションのあり方をさらに進化させていきます。昔ならば、会わなければ話すことさえできなかった状況が、Slackだけで文字情報、通話、動画などあらゆるコミュニケーションができます。バーナードの組織の成立要件の3要素であるコミュニケーションという部分に格段の進化が生まれています。

本来、人間は自分の人生は自分で決めていきたいという欲求があります。誰かに指示をされて働くよりも自らが自己決定し、未来を切り開きたいという願いは人類共通ではないでしょうか。今までは意識構造や感情、コミュニケーションなどの前提が整っておらず、ヒエラルキー構造が組織の主体でしたが、今後はヒエラルキーを選択する妥当性が薄くなる。

これからはむしろ「自己組織化」が主流の組織へシフトしていくと思いますし、インターネットの概念とのものすごく相性が良い。自己組織化へシフトしていけば、自分たちの願いにも近づく組織になり、働くことへの楽しさへつながると思います。ホラクラシーやティールが突然変異のように生まれたのではなく、歴史的過程から必然だったのだと思います。

50年後の未来から今を見れば、「自己組織化」が組織の当たり前になっているのではないかと私は信じています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?