一番好きな作家さんの、一番好きな作品を教えて。
一番好きな作家さんの、
一番好きな作品を教えて。
こう聞かれたら、あなたはなんと答えますか?
私のオススメの本
私はきっと、迷いに迷い、悩んだ挙句こう答えます。
住野よるさんの『また同じ夢を見ていた』
住野よるさんといえば『君の膵臓をたべたい』で有名な作家さんですが、私はそれよりも2作目の『また同じ夢を見ていた』の方が好きです。
読み返せば読み返すほど、涙が止まらなくなるお話。
悲しいわけでもない。辛いわけでもない。なのに、溢れてくる涙が止まらない。この涙に名前をつけられる人を、私は求めているのかもしれない。
とってもオススメです。
もっと’’好き’’が眠っているかもしれない
住野よるさんをはじめ、私には好きな作家さんが何人かいます。
・森 絵都さん
・橋本 紡さん
・三浦しをんさん
…
人にオススメしたい本もいくつもある。
オススメしたすぎてプレゼントしました
だけど、ある時ふと気がつきました。
いつの間にか、好きな作家さんの中から本を選んでいることに。次に読む小説を選ぶとき、すでに読んだことがある作家さんの作品の中から探していることに。好きな作家さんが新作を出す度、飛びついては読み耽っていることに。
それ自体はいいんです。いいことなんです。好きだから。
しかし、同時に疑問も浮かびました。
このまま、すでに出来上がっている’’自分の好きな作家さん’’というカテゴリーの中からしか、私は小説を読まないのか?と。
読んだことがない作家さんの小説を読まずに、あまつさえ知る機会すらもないままでいることは、まだ見ぬ出会いを自ら遮断していることに他ならないのではないかと。
目を向けなくなってしまっているだけで、実はこの世界には、もっと、好きが眠っているかもしれない。私が知らないだけなのかもしれない。
知らず知らずのうちに、自分の世界を狭めてしまっているのではないかと。
それはよくないことだ。
新しい’’好き’’探し
だから、自分の世界を広げるために、新しい’’好き’’を探すことを決意しました。
どうやって探そうかな。
本屋さんで平積みされている本は大抵面白いけれど、自分の好みかと言われればそうではないことも多い。
莫大な本が並ぶ中、0から自分の’’好き’’を探すのは難しい。
なので。友達や先輩の力を借りることにしました。
この人の感性好きだな~っていう人に、質問してみた。
一番好きな作家さんの、
一番好きな作品を教えて。
そして、その人がオススメしてくれる本を、ひたすらに読み漁りました。
①日常に魔法をかける達人
1人目の友達がオススメしてくれたのは、江國香織さんの本です。
一冊目はこちら『つめたいよるに』
短編集です。言葉のリズムや物語の設定が心地よく、サクサク読めました。
毎晩寝る前に一話ずつ読み進める日々。どれも心が温かくなるお話ばかりで、とても健やかな眠りにつけました。
二冊目はこちら『とるにたらないものもの』
江國香織さんのショートエッセイ集です。
とるにたらないけれど、かけがえのないものもの。日常だけど大切なものものに対する、江國さんの温かい思いが綴られています。
こんな何気ないものも、江國香織さんが綴るとこんなにも魅力的に映るのか…!と驚いたのを覚えています。まるで魔法みたい。
江國香織さんの言葉の紡ぎ方が好き。
そう言ってオススメしてくれた友人の気持ちが、分かる気がしました。
触発されて、自分でもこんな企画を始めた。
興味がわいたら読んでみてね!
②論理的に考えられること
2人目。職場の先輩がオススメしてくれたのは推理小説でした。
貫井徳郎さんの『慟哭』
貫井徳郎作品は過去に一度読んだことがあり、多角的な目線から一つの事件を見る視点が面白いと思ったのを覚えていました。
『慟哭』は少し分厚い本ではありましたが、ページをめくる手が止まらない。
早く早く!と次に急ぎたくなる、そんな物語でした。
乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』
こちらも先輩にオススメされた本です。
口コミの通り、ラストから2行目は本当に衝撃。思わず「え?」と声に出して言ってしまいました。
先輩が推理小説を読み漁るのは’’論理的に思考できるから’’とのことでした。
この時にこの行動をとっている。この発言をしている。この場面設定は…
読み終わったあとに、こうやって考えることができる。
だから犯人はこうしたんだ。だから被害者はこの行動をしていたんだ。
もっと言うと、
だから作家はこの描写をぼかしていたんだ。だから時系列がずれているんだ。
と、作家さんの視点にも立つことができる。
こうして、あとからストンと腑に落ちる感覚が、推理小説の魅力なのだと先輩は言います。
なるほど。面白い。
いいね推理小説。
完全に余談ですが、私は推理小説家なら知念実希人さんが好きです。それも天久鷹央シリーズ。医学の勉強にもなる。
ご興味ある方はぜひ!
③心に余裕がある時にしか読めない
3人目。親友がオススメしてくれたのは、読後とっても暗い気持ちになるお話でした。
東野圭吾さんの『白夜行』
読み始めてしばらくは、ストーリーの中で何が起きているのか分からないというのが正直なところでした。どういうことだ?いつからなんだ?と。
しかし、ページを捲るにつれ、断片的にではあるけれど''繋がり''が見えてくる。そして、それらのピースが一つに繋がった時、このストーリーは、恵まれない少年と少女の悲痛な叫びであったことに気づく。
読み終わってもなお、その悲しさが胸に刺さり、すぐに気持ちを切り替えることはできませんでした。
辻村深月さんの『子どもたちは夜と遊ぶ』
こちらも同じ親友がオススメしてくれた本です。
こちらも暗い気持ちになるお話でした。登場人物が何を考えているのか全く読めないことによる恐怖、語られる過去の凄惨さ、誤解によりねじれてしまった人間関係が引き起こす残酷さ。
読み終わるのに、大分心をすり減らしました。
最後の1ページで多少心が救われるけれど、その救いでは全然足りないくらいに惨酷で、読後もしばらくやるせなさに襲われ放心してしまうくらいでした。
ヘビーだ…。
この2冊を読んで、親友は重い話が好きなのかなぁと推察。
重い話を読むと私はそれだけで心が疲弊してしまうことが分かったので、読む前に心の調子をきちんと整えておく必要があるなと思いました。
心が健康であればこそ、読書にも集中できる。これは間違いない。
人のオススメの本を読み漁って感じたこと
この人の言葉の選び方/紡ぎ方、好きだ!と思える作家さんに出会えた。ハッピー。
推理小説を論理的に読むという視点を知ることが出来た。これは大収穫!
私は、読み終わったあとに前向きになれる小説が好きなんだと再認識した。
その人が培ってきた世界の片鱗に触れられる体験となった、今回の読書経験。
その人のオススメを知ることで、その人の’’人となり’’が少し垣間見えた気がしました。面白い経験だった。
それから「オススメしてくれた本読んでみたよ!」と、フィードバックができたのも良かったです。
同じ小説を読むという経験は、同じセカイを一つ共有することになると私は思っています。大げさな言い方をすれば、共通言語を一つ身につけるような感覚。
自分でうまく説明できないことでも「あの本のあのシーンみたいに…」と言って、伝わることが嬉しかったです。伝える手段がまた一つ増えたように感じました。
予期せぬ副産物だったけれど、これもまたよかった。
本だけでなく、それをオススメする’’人の感性’’についても考えることができました。
これからもぜひ続けていきたい。
次は何を読もうかな。
あなたの、一番好きな作家さんの、一番好きな作品を教えてください。
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