見出し画像

古民家再生と税務調査

築100年を超える古民家に対する再生工事(1000万円超)が相続発生の数年前に行われていて、相続税の税務調査で問題視されたということがありました。
建築会社のウェブサイトに古民家再生実績として掲載されており、新築同様に美しく生まれ変わったように見える写真がいっぱいです。それのプリントアウトが税務署から送付されて来ました。

家屋の相続税評価について簡単に記載します。
家屋の相続税評価は固定資産税評価額によります。固定資産税評価額は3年に一度評価替えされます。
古民家再生といった工事で家屋の価値が上がり、それが評価替えによって固定資産評価額に反映していればよいのですが、評価替えの対象は建築確認申請等によって行われ、全ての家屋について行われるのではありません。

工事による家屋の価値の変動が固定資産税評価額に反映されていない場合、
以下の算式の金額を固定資産税評価額に加算することになります。

(工事費用のうち家屋の価値を高める部分-償却費相当額)×70%

国税庁 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価 に基づいてハマダ会計で作成

工事費用が家屋の価値を高める部分(資本的支出)か、修繕費なのかは判断に迷うところです。
床が抜けそうになっていたり、畳がぼろぼろになっていたのを直すのは修繕ですよね?
天井の板を撤去して梁が見えるようにしたのは、スタイリッシュにしたのでなくて工事代の節約のためですよ?
昭和の台所や浴室、トイレを21世紀水準のものにするのはどうでしょうか?

長らく空き家で、たまに立ち寄って管理するだけだが、倒壊の危険性が出てきたために行った工事でした。エアコン等の空調も一切ないので、活用は考えられません。
そういう背景もあり、納税者の方も建築会社の方も、修繕(価値がマイナスのものをゼロとする)のであって資本的支出(家屋の価値を高める)ものでないとのお考えでした。ただ、では1000万円を超える工事費が全て修繕かというと、これも荒っぽい感じがします。建築会社のウェブサイトの写真を見たら、税務署がそれでは納得できないのもわかります。

まず、所在地の市町村に固定資産税評価額を見直してもらえば、その評価額を利用することができると考え、連絡を取ってみたところ断られました。元々が建築年不詳で評価額なしのためでしょう。市町村は、相続税申告のために評価しているのでないので、この対応もやむをえません。

次に、建築会社の人に工事内容をヒアリングし、工事前の状況の写真の提供を受け、それらを元に協議を行いました。
結果として、ある程度は修繕費であることを認めてもらいました。茅葺屋根に被せた金属カバーの更新、これも見た目はすごく新しくなったように見えますが、これも修繕費となりました。

(ここからは実体験でなく、調べた結果や感想です。)

固定資産税評価の見直しがされていればよいのですが、建築確認を要さない場合は市町村でも工事があったことを把握できず、工事内容を反映してない評価になることが通常でしょう。
固定資産税評価の見直しの依頼の公的な仕組み(申請書とか)があってもよいと思うのですが、そういったものは探せませんでした。

「固定資産税 リフォーム」といったワードで検索すると、減免申請の話がいっぱいでてきます。減免申請の対象となる工事が含まれていれば、家屋全体の固定資産税評価額もその時点で見直されるのではないかと思います。

「固定資産税 リフォーム」といったワードで検索すると、固定資産税が上がるのを避けたいという観点での記事、黙っていればわからない式の記事もいっぱい出てきます。相続税との関連で得になりそうなときだけは評価額を見直してほしいというのは、市町村の担当の方は納得感がないかもしれませんね。

当事務所としては、今後同様の案件があった場合、目先の固定資産税は上がるかもしれませんが、市町村に相談することをお勧めすることとします。
こういう物件を保有している方や工事を行った方も、固定資産税が上がらなければよいとだけ考えることなく、改めてご検討ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?