超短編小説「天国と地獄」
松田が地獄で作業中
監視役の鬼に呼ばれた
「あの どうしたんでしょうか?」
何か自分に不手際があったのではないかと
恐る恐る尋ねてみると
鬼はこれを見ろと言わんばかりに
その場に映像を映し出す
そこには松田の墓前に集まってる
友人たちが映し出され
友人たちは各々松田の墓前に声をかけ
生前の松田がいかに素晴らしい人間であったことを語る
「松田は積極的にボランティアに参加していた」
「松田は困ってる人がいたらほっておけない性格だった」
「松田は誰に対しても親切で優しくて愛に溢れていた」
「松田は自分の財産を投げうって恵まれない人に寄付をしていた」などと
「まさかそんな奴が地獄にいるとはな(笑)」
鬼は松田の友人たちの称賛を嘲笑いイヤミを一つ吐くと
嬉しそうな表情で松田の方を見た
たしかに松田自身なぜ地獄にいるのか腑に落ちなかった
見返りを求めて人助けをしてきたつもりはないが
悪いことをしていないのに
なぜ地獄に堕ちなきゃいけないのか
松田はどうしても納得がいかなかった
しかし地獄の中を見渡してみれば
皆 良い人ばかりが地獄にいるようだった
「同族嫌悪ってあるだろ?」
鬼が松田の気持ちを見透かしたように突然そう呟いた
「俺らはな悪人が嫌いなんだよ」
「逆に天使達は悪人を制裁するのが大好きらしくてな」
「天国みたいな退屈な場所 面白くないだろう?」
「だから反抗的な人間を徹底的に制裁して
言いなりにするゲームが流行ってるらしい(笑)」
そう鬼は吐き捨て また映像の方に目をやった
「実は俺たちもさおまえを見習って
みんなでボランティアでもしようかなって話しててさ」
「そうそう 松田君の真似(笑)」
「良い事したらなんか起きるかな?」
「ちょっと見返り求めてんの?」
「いやそうじゃないけどさ~」
「まぁ頑張るから天国で見守ってくれよ」などと
友人たちが嬉しそうに語り合ってる様子を見ながら
思わず松田は涙を流して
「やめろー!」
「やめてくれー!!」
と懇願するように泣き叫んでいた・・
あとがき
この小説は僕が高校生の時に考えたものです
別に作家になりたかったわけでもなかったんですが
どこかひねくれた人間だったので
良い人間が幸せになるなんて限らないと
人生なんて理不尽なもんだと
多分そういうことを言いたかったのかな?と思います
あと読んでる人の期待を裏切りたいという
気持ちが凄く強かったような気がします
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