とても暗くて憂鬱になる超短編小説③
ハンブン
ある日 魔法使いが現れて国民のハンブンに魔法をかけた
ある者は豚のような人間になって
ある者はネズミのような人間になって
ある者は犬のような人間になってしまった
国民はパニックになり国外へ逃げ出そうとしたが
逃げようとする人々を魔法使いは次々と消していった
そして魔法使いは意地悪く笑ってこう言った。
いいかい、お前たちは一生この場所で生きていくんだ。
私はその姿をずっと見てるからね逃げたら全員殺す
そう言い残しいつの間にか最初からいなかったように
どこかへ消えていった。
その後この国は孤立し他の国から忘れ去られる魔法もかけられた
国民に残されたものは絶望と
魔法をかけられたハンブンの人間たちと
魔法をかけられていないハンブンの人間たちだった。
すると最初こそ協力しあっていた人間たちだったが
いつしか秩序は崩れ始め
ハンブンの人間たちは魔法をかけられた
ハンブンの人間たちを人間として扱わなくなっていった。
犬のような人間を犬のように扱い
豚のような人間をからかって笑った
見世物小屋にして商売を始める連中も現れその姿を嘲り差別した
ネズミの姿をした少女は泣きながら
私たちがなにしたっていうの?と
悲痛な叫びをあげいつかきっと誰かが助けてくれるはずさと
少女に諭したかった豚の青年も自身の姿が目に映るたび
絶望的な気持ちになり口をつぐんでしまっていた
そして5年経った。
5年前の平和だったこの国は消え去り
スラム街のような変わり果てた国になっていた・・
そんな荒廃したこの国に魔法使いは再び突然に姿を現した
すると魔法をかけられたハンブンの人間たちは
驚嘆をあげ泣きながら懇願し始めた
どうか私たちを元に戻してください!
どうか私たちを元に戻してください!と
その滑稽な姿を見ながら愉悦に浸る魔法使いは
意地悪くヒッヒッと笑い
そうだねぇ、そろそろ戻してあげても
いいけど元に戻すには条件があるんだよと言ってあたりを見渡し
残りのハンブンの人間たちに魔法をかけていいかい?
そうすれば元に戻してあげるよと悪魔の取引を提案してきた
この話を聞いて魔法をかけられていない
ハンブンの人間たちは真っ青になり同じように泣きながら懇願し始めた
やめてください!お願いします!許してください!
それを聞いて魔法使いはヒッヒッヒッどうしようかねぇ?
と嫌らしく笑い魔法をかけられた人間たちに意見を委ねた。
魔法をかけられた人間たちの答えはもう決まっていた
今まで虐げられてきた数々の恨み辛みが蘇り
気がつくとコイツらに魔法をかけてくれ!!と皆が叫んでいた
その言葉を聞き魔法使いは満足したのかそうかい。じゃあそうするよ
と呟いて人間たちは入れ替わりになった
それからの魔法を解けた人間たちの復讐は壮絶だった。
あのネズミだった少女もあの豚だった青年もあの犬だった男も
全員が人間の心を無くし悪魔に取り憑かれていた
もはやこの国には人間と呼べるような存在がいなくなっていた
人間と呼べない見た目の人間のような存在と
見た目が人間の人間とは思えない心を
持った存在のどちらかになってしまったのだった・・・
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