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超短編小説「ケモノ」

世界を滅ぼすために作られた殺人兵器は「ケモノ」と呼ばれ人間も動物も森林も何もかも見境なく食い尽くす化け物のことだ。この「ケモノ」のせいで大半の国は滅び世界は「ケモノ」を開発したある一国のもとに落ちたも同然であった。そしてこの「ケモノ」を自由に操作する通称「レクイエム」という名の私たち死の演奏隊は全身真っ黒な装束を着て感情を殺しメロディーを奏でるために産まれた死神のような者の集まりであり、私たちが目の前に現れると人々は恐怖と絶望で錯乱し私たちに罵詈雑言を浴びせ歯向かってくる者もいれば逃げ惑う者もいた。そんな人々を見つめながら始めましょうとフルートを吹く彼が一言呟き殺戮は始まる
「テメーらぶっ殺してやる・・」グシャン
「ママ助けて!」グシャン
「さよなら・・」グシャン
「絶対許さない」グシャン

次々とケモノに踏みつぶされる人間や動物たち、そしてその肉体はケモノに食べられ一掃されていく。ケモノは恍惚の笑みを浮かべ美味しそうにぐちゃぐちゃと咀嚼音を立て私たちのメロディーに酔いながら街を人を物を破壊していった。そんな最中も私は一心不乱にチェロを弾いた 些細なミスもしないように完璧な演奏をしてあのケモノを操作するために・・・
それが私の運命であり宿命なのだと信じて・・・

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