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フロリダグレープフルーツの日とギザギザスプーン

 グレープフルーツの食べ方は、やっぱり丸ごとを半分に切って、ギザギザのスプーンですくって食べるのが1番だと思う。

 グレープフルーツは、あまり好きな果物ではなかったけれど、ピンクグレープフルーツというものが出てから少し認識が変わった。キウイで言えば、グリーンよりもゴールドが好きなのと似ている。

 生家にはギザギザのスプーンが用意されていて、それはいつもグレープフルーツを食べるのに使われていた。グレープフルーツ以前は、何に使っていたのか覚えていない。あのギザギザで、硬いアイスクリームでもつついていたのだろうか。

 生家で柑橘類は冬に箱で買う蜜柑と、親戚の誰かが時折手土産に持ってきてくれるボンタンくらいで、あまり馴染みがなかった。ボンタンは「ボンタン飴」の、あの大きな黄色い柑橘だ。生家では「ザボン」と呼んでいたと思う。仏壇にはそういったお供物が絶えず、来客があったその日の夜や次の日に家族で食べた。ザボンは祖母がむいて、私は食べるだけ。

 一人暮らしを始めてから、ザボンは高級品だと知り、しかもあの大きなものは1人では食べきれず、そうすると自ずとグレープフルーツに目がいった。ただ私はギザギザのスプーンを用意していなかったので、皮と皮の間にスプーンを差し込んでも果肉がすくえず虚しく果汁がしたたるばかり。結局、それはグリグリと絞られてジュースになった。あれは悔しかった。

 半分に切ってスプーンで食べると、いくつでも食べられてしまえたグレープフルーツ。未だにギザギザスプーンは買っていない。

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