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スーツを仕立てる日と様になる

 これは私の偏見なのだけれど、どうしてか日本のサラリーマンのスーツ姿はどうしてもスマートなカッコよさというものを感じられなかった。頭にネクタイを巻いて泥酔するというイメージは、恐らくテレビコメディの擦り込みだとは思う。あまり、スーツを着て仕事に行く人が身近にいなかったせいもあって、それよりも礼服として見ることが多かった。

 今の本業の画商業に転職してからスーツは「着こなし」と「自分に似合うサイズ感」がどれだけ重要なのかを知った。季節の寒暖に合わせるだけではない生地の違い、カラー、ジャケットの丈、ベストのボタン……。立っているだけで様になるような、思わず隣を歩いていてこちらがドキドキしてしまうような。
 日本人というよりもやっぱり西洋人の方が似合う服装なのだろう、足の長い人は特に似合う。

 スーツは高価でなかなかそう何着も買えないものだと思っていたのだけれど、これは私がスーツを着る仕事をしていないからで、相場にもとんと疎かった。それが先日たまたま仕立て屋の前を通りがかった時に驚いた。今はセミオーダーのスーツが5万円で買える。ならば尚更既製品よりも自分の体形や肌の色に合ったスーツを仕立てた方が良いだろう。
 立ち止まったガラス越しに自分の姿をそのマネキンに重ねた。これからも着る機会はないかもしれない。それでも、自分のために服を仕立てるという経験はしておきたいなと思うのだった。

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