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行きつけの飲み屋をもつ大人に僕はなりたい。

別に酒をよく飲むわけでもない。特別好きでもない。むしろ酒の場というものに苦手意識をもっていた。大勢で集まって勢いだけで意味のない話を大きな声でする、なんだか疲れる空間。
アルコールを介したコミニュケーションとはそういうもんだと思っていた。

僕の初めての飲酒体験は同窓会。大学にも行かずお酒を飲む習慣のなかった僕には、学生のノリは激しすぎて終わった後にひどく疲れたのを覚えている。
そういうわけでお酒を飲む機会からは比較的距離をとっていた僕だが、友人に後輩が働いているバーに誘われてからは印象が変わった。

そのバーは電車で30分ほど離れた都会の大通りに面したビルの地下にあった。中に入ってみると音楽は流れおらず、人の話す声が心地よく響くほんのり暗く、でも人の顔がしっかり見れる程度には明るいとても雰囲気の良い店だった。

というか雰囲気が良すぎた。僕は緊張した。借りてきた猫のように行儀よく友人の後をついて歩き案内されたのはカウンター。いきなりカウンターはきつい、と思ったが後輩が丁寧に対応してくれたため緊張は徐々に解れていった。

そこはウイスキーを主に出すバーで飲みやすい値段のものから、しっかりとした年代物まで置いてあるらしい。だが僕はウイスキーどころかお酒のことを殆ど知らなかったのでここは後輩に任せてみることにした。

後輩はいくつかの質問をした後にハイランドクーラーというカクテルを出してくれた。それはウイスキーとジンジャエール、そこにシロップとレモンジュースが入ったものでスッキリとした甘さで飲みやすい、それでいてウイスキーの味もする美味しいお酒だった。

今までお酒に対して味はよくわからないが飲むとその後気持ち悪くなる物という認識を持っていた僕にとってこのハイランドクーラーは衝撃だった。
一口飲むたびになんだか気持ちよくなる。
そして気持ちいいまま友人と後輩と気持ちい会話をする。

お酒を飲むのって楽しいなと思った。

しかしそのバーは家から距離があるためなかなか行けない。だから家の近所でそうやって気持ちよく飲める場所、仲間、そういったものがあるのって素敵だなって思ったし、僕もほしいなと心から思った。


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