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【書評】データ分析者・AIエンジニアを目指す方へ、おすすめの本を紹介

滋賀大学データサイエンス学部の教授であられる河本薫先生著の『データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考』を読みました。河本先生と言えば、前職となる大阪ガスで長年データ分析業務に従事されていた方だそうで、データ分析を上手く活かすことが出来ない既存産業で早くからデータ活用を推進されてきた「データサイエンスのパイオニア的な人物」です。

この本の目次紹介

  • 序章 データ分析に成功して、ビジネスで失敗する理由

  • 1章 データ分析をビジネスの成功につなげる
    1-1 問題発見と課題設定を意識する
    1-2 ビジネス課題を意思決定プロセスの課題と捉えなおす
    1-3 データ分析をビジネスの成功につなげるフレームワーク

  • 2章 データドリブン思考を身に着ける
    2-1 データ分析をするために意思決定プロセスを整える
    2-2 A.反復選択型の意思決定プロセス
    2-3 B.体制選択型の意思決定プロセス
    2-4 C.原因特定型の意思決定プロセス
    2-5 D.計画策定型の意思決定プロセス
    2-6 E.仮説試行型の意思決定プロセス
    2-7 F.経営判断型の意思決定プロセス

  • 3章 データドリブンな企業に変革する
    3-1 企業の変革を阻む3つの壁
    3-2 社員の心理的な抵抗を行動から返る


この本を推す理由

あなた自身、過去に取り組んだデータ分析を振り返ってみてください。「そのデータ分析をやったのとやらなかったのでは、会社の利益はかわりましたか」と問われると、答えに窮するのではないでしょうか(同著、P13より引用)

同著は「どうすれば、ビジネスの役に立たないデータ分析から脱却し、ビジネス的に価値のあるデータ分析が出来る様になるのか? 」を説いた本になります。この手の書籍は多く見かけますが、同著で語られる内容は考察が鋭く、且つ、実用性の高い話がてんこ盛りでして、他の本よりも一線を画す優れた本だと感じています。

現役データサイエンティストのみならず、これからデータサインエンスを学ぶ予定の学生や新卒・ビジネスパーソンにも読んで欲しいですし、読んでおいて損はない一冊だと思います。


この本の概要

データ分析とは、つまるところ「ビジネス上の判断・選択の正確性を高めたり、自動化する」道具です。よって同著では、データ分析をビジネスで役立てるためにはまず業務の意思決定プロセス(判断・決定を行う一連の流れ)自体を改める必要があると説きます。データ分析を活かせるように、ビジネスプロセスの方をデータ分析にアジャスト(適用・寄せる)させるイメージでしょうか。

1章(データ分析をビジネスの成功につなげる)では、上記内容について著者の経験も踏まえながら、ロジカルに分かり易く解説しています。河本先生の論点整理能力・問題定式化能力などが際立つ章となっています。

2章(データドリブン思考を身に着ける)では、1章で述べた内容を前提に「では実際にどうすれば、ビジネス的に価値のあるデータ分析ができるのか」を6つの分析ユースケースに大分し解説。かなり実用的なレベルまで落とし込んで解説されています。

3章(データドリブンな企業に変革する)では、組織論的な側面・心理的な側面から、どうすれば1章や2章で語ってきたことをやらせることができるか?会社を動かすことが出来るか?について論じます。


最後に

河本先生自身、前職の大阪ガスで『データ分析をするものの、現場の業務改革に繋がらない』『一生懸命分析したにもかかわらず「参考になりましたの」一言で片づけられてしまった』など、悔しい思いを経験されてきたとのことで、執筆に対する熱意を強く感じます。

繰り返しにはなりますが、現役データサイエンティストのみならず、これからデータサインエンスを学ぶ予定の学生や新卒・ビジネスパーソンにも読んで欲しいですし、読んでおいて損はない一冊です(Amazonの評価も★4.4とかなり高いです)。もっと色んな人に知って欲しいと思い記事を書かせていただきました。

最後に、河本先生自身、同著に書かれている内容について「数学やプログラミングは、教えやすいし、学び甲斐もある。テストで良い点をとるという達成感を持てますから。それと比較して、本書の内容は教えにくいし、学びにくい。」と説明されていて、このお言葉が妙に心に刺さりました。この手の話は理解に少々、頭を使うこともあろうかと思いますが、読んでみてはいかがでしょうか?


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