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自己肯定感について

「私ゆりちゃんとこ教えた〜い!」
「私も〜!」

今でも忘れない。
中学に入ったばかりの頃、ゆりちゃんという、小柄でリスみたいな可愛い友達がいて、その子と部活見学に行った時のこと。
部室に入ったとたん、先輩たちの目線は私の隣にいる可愛いゆりちゃんに集中した。そして間髪入れずに「私ゆりちゃんとこ教えた〜い!」「私も〜!え、てかめっちゃかわいいコ来た!」
まるで私は空気にでもなったかのようだった。
急に自分の足元だけ真っ暗な闇がぽかりと開き、そこに静かに落ちていくようなあの感覚は、忘れようとしても忘れることができない。
リーダー格っぽいクールな先輩が、「じゃ私は烏さんのとこ教えるね」と私の相手をしてくれて、その場はとりあえず済んだ。

保育園のころ、いじめっ子の男の子に「デブ!!」と言われたのが、記憶に残る最初の私への罵声である。この頃からすでに、私は太っていてブサイクだという認識でいた。
だから、ゆりちゃんがちやほやされて私が取り残されるのはまあ当然だよな、ゆりちゃんかわいいし、それに比べて私はデブスだし、はいはい分かってます分かってます、と妙に冷静な自分もいたが、保育園の頃と比べて心身ともに成長しているわけなので、結構深いキズが残った。

この、ある種の呪縛のようなものは、割と最近まで続いていた。いや、いまだに続いている部分もあるかもしれない。
たとえば、朝メイクして「うん、とりあえず良い感じにメイクできたかな」と思っても、一歩外に出て綺麗な女の人とすれ違ったりショーウィンドウに映った自分を見ようものなら、う…無理…、という感じで一気に気分が沈む。
あとは、デパコスとかランジェリー屋さんとか、とにかくキラキラしたところに入っていけない。ああいうお店は、スタイルが良くて美人な女の子しか行っちゃいけないところなんだ、私みたいな女が一歩でも入ってしまったら、周りの美人たちの冷たい視線がザーーーーーッと私に注がれる…そんなものに耐えられるワケがない。
とまあ、文章にすればただの過剰な被害妄想のようになってしまうが、とにかくこんなことを本気で思っているのである。
(昔よりは改善したが、完全には治っていない。)

そんな私でも、大学2年の頃になると、自分に合うスキンケアだのコスメだのと興味が出始めた。
それまでは、母が使っていた洗顔料や化粧水なんかを見よう見まねで使っていたに過ぎなかったし、化粧なんて正直どこからやっていいのかさっぱり分からなかった。引越した直後、アパート近くの名も知らぬスーパーで、とりあえず入学式に向けてファンデくらいは買わなきゃと、コスメコーナーで適当なファンデを買った。
母親は遠く離れた地元だし、友達も知り合いもいない。メイクのことを相談できる人なんて、どこにもいなかった。

大学生活に慣れてくると、相変わらず田舎臭さから垢抜け切ることはできなかったが、大学の派手メンバーの子たちを遠くから眺めて、自分はもっと思い切ってもいいんじゃなかろうかと思う時があったり、友達のメイクやファッションを見て、これいいな〜とか、私も真似してみようかな〜とか、思うようになった。
最初はファンデだけ買ってただ肌に塗りたくるだけだったのが、次第にアイシャドウ、マスカラ、リップと、コスメが増えていき、世間一般の言う「メイク」というものにゆっくりと馴染んでいったように思う。
大学4年になり、就活をし始めるころには、それなりに「メイク」をした「就活生」が出来上がっていた。

信じられないと思うが、私は割とこのころまで、美人が美人なのは生まれつきで、しかも高いスキンケアやコスメを使っているからで、デブスは何をやっても無駄、と真剣に思っていた。
美人の髪がサラツヤなのは生まれつき。高級なオイルやトリートメントを使っている。
美人の肌が白く滑らかなのは生まれつき。高級なスキンケアや日焼け止めを使っている。
美人が美ボディなのは体質。ジムやヨガに通っていたり、食事も管理している。
この状況から程遠い私は、どれだけ頑張っても無理だ、と。


でも。

全部、全部、間違っていた。
これは全部、言い訳なんだと、気づいた。

まず髪。毎日きちんとドライヤーで乾かし、ヘアクリームで保湿して、セットする時は毛先中心にワックスをつける。ただこれだけで、クセが少なくパサつかない髪になった。

次に肌。自分に合った化粧水や乳液を見つける。同じでいいや、ではなく、肌質は十人十色なので、自分はどういった肌質で、どんなトラブルが起こりやすいのかを調べ、それに合うスキンケア品を使う。値段の高い低いは関係ない。安くても自分に合っているものもあるし、逆に高いのに全然合わないものもある。とにかく色々試してみる。
顔を拭く時は絶対に擦らない。化粧水や乳液をつけるときも擦らない。
夏以外でも、メイクの前に必ず日焼け止めをつける。ただこれだけで、毛穴も目立たなくなりニキビも減り、ギトギトだった顔も少し落ち着いてきた。

朝起きたら必ず白湯、食事は野菜から、ご飯・パンは少なめに、楽しんでゆっくり食べる、間食はできるだけしない、飲み物はお茶、水、白湯。ちょっとしたお出かけには白湯を入れた小さな水筒を持参してこまめに飲む。我慢しすぎるとストレスで逆に暴食してしまうので、どうしても食べたいと思った時は我慢せずに食べる。フェイスラインと脚のマッサージはできるだけ毎日寝る前に行う。エレベーターやエスカレーターより階段を使う。近場は車ではなく歩く。
ただこれだけで、MAX体重から半年で4㎏落ちた。

高級なものは何ひとつ使っていない。
高い会費を払ってジムやヨガに通ったわけでもないし、スーパーフードを食べたわけでもない。
そうか、でも、変われるのか、私でも。
こういうことを避けてきて、それで美人を批判し妬んでいた自分の、なんと醜いことか。
こういうことを当たり前に毎日やっている世の中の女の子たちに、心から敬意を表する。
私、やっと追いついたんだと思う、あなたたちの足元に。

そこからは、ゆっくりとではあるが、自己肯定感が上がっていった。
近所に出かける時はすっぴんでも全然抵抗が無くなったし、「肌綺麗」「痩せた?」と言われることもわずかだか増えてきた。
最初のうちは、全然そんなことないよ…と否定していたが、最近は外見の変化に自覚も出てきたので、「ありがとう‼︎意識して生活してるんだから、当然よ‼︎」と思うことにしている。
自己肯定感が上がると、不思議なことに姿勢も態度も変わる。胸を張って歩くようになったし、会話する時も以前より相手の顔を見れるようになった。卵が先か、鶏が先か、なんてよく言うけれど、まさにマインドが先か、外見が先か。
マインドはこうも外見を変えるものなのかと、嬉しさが込み上がる。

こういった努力をしなくても、生まれつき可愛い子やスタイルが良い子は星の数ほどいる。
だからたまに、そういう子たちを妬む気持ちも顔を出す。でも私は、努力すれば改善することを経験できたし、かつての辛さも経験しているし、すごく自分の中で得たものがあると思っている。

やっと世間一般の女の子たちに近づけた。
いや、もしかしたら、マインドだけ見れば彼女たちより上かもね😊

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