「お大事に」
「本日の業務しゅーりょー、みんなお疲れー」
腹を切り裂かれた患者が大声で叫ぶ。
「おつかれーッス」
「おつかれでしたー」
血塗れのメスを持った医師が応え、
全身傷だらけのナースがそれに続く。
「おつっすー」
「いやーきついッス」
ベッドに横たわった下半身のない老人や
自身の生首を抱えた清掃員もだ。
ここはテーマパーク「フジサン王国」に設置されたお化け屋敷「戦慄!総合病院」の控室だ。
スタッフ達がお互いの疲れをねぎらっている中、俺はアンケート用紙に目を通していた。
・ズタ袋かぶって鉈持ってた人が一番怖かった
・鉈持って吼えてた人、あまり病院に関係ないんじゃ?
・へんなふくろをあたまにかぶってこわいです
・ズタ袋の人? あれだけなんで超リアルなの
・鉈持ってた人の臭いは何とかしたほうがいい。
・ズタ袋の男…
・ズタ袋の…
・ズタ袋…
――このアトラクションにズタ袋で鉈持った奴なんていない。
入り口のドアが閉まる音がした。
【続く】
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