あたみ桜とインバウンド

あたみ桜が満開を迎えている。
あたみ桜は開花時期が日本で一番早いと言われており、毎年1月〜2月に開花し、開花期間も約1カ月と長い。
糸川沿いの桜並木が有名で、満開の桜を眺めに、平日でも多くの観光客がシャッターを切っている。
もうしばらく見頃は続く。

熱海の観光客数は平成23年に250万人(宿泊客数)まで落ち込んだものの、その後回復し、300万人を超えるところまで伸びている。
民間と行政の様々な取り組みによって、熱海に観光客が戻ってきている。
ただ、この数字は直近数年を切り取っただけの数字であり、昭和40年代のピーク時には、年間500万人の宿泊客がいたことを忘れてはいけない。
もちろん当時は企業の団体客であったという、現在の個人旅行中心の客層とは大きく異なる背景は鑑みるが、それでもその頃と比較すれば、熱海の真の復活はまだまだこれからという感じだ。

なので、熱海で商売する多くの人たちは、今に満足しているわけではなく、さらに高みを目指している。
今はまだ復活の「きっかけ」を掴んだに過ぎず、ここから先、どのような仕掛けをして、また、どのようなチャレンジをして、より魅力的な熱海に進化させていくかが重要だと思う。

「温泉と新鮮な料理」という枠に捉われない、熱海の資源を存分に生かした新たな魅力の発掘とアレンジ、情報発信だ。
すでにそういうチャレンジをしている企業や宿泊施設もあるが、だいたいが熱海外の資本の企業だったり、外の人間を活用する企業だったりする。
枠に捉われない柔軟な発想と行動が、これまでの熱海の良さにプラスαの魅力を加えている。

熱海の宿泊客数のうち、外国人観光客がどれくらいを占めるのかというと、僅か1%程度に過ぎない。
お近くの箱根は11%程度。大きな差だ。

先日、とある熱海の宿泊施設の経営者が「日本人観光客しかいない観光地があってもいい」と発言していた。
残念ながら、熱海のインバウンド対応は遅れている。宿泊施設や飲食店、観光施設の外国語対応ですら、進んでいないところが多くある。
その背景に、おそらく先の経営者のような考え方があるのだと思う。

先日、インドネシアからのゲストを十国峠へのハイキングにアテンドした。
彼は日本には観光やビジネスで頻繁に来るが、熱海に来ることは初めて。熱海のことすら知らなかった。
その日家族はディズニーに行ったが、彼は自然の中で何か体験をしたいということで、私に声がかかった。
彼はハイキングと十国峠からの富士山の眺望を楽しみ、半日ほど熱海を満喫して東京に戻っていった。
温泉も勧めたが、温泉は日本の他の場所で何度も入ってるからと、入らずに帰った。
もっと綺麗な海が自国にあるインドネシア人にとって、熱海のビーチには魅力を感じていなかった。

私のハイキングツアーには現在、各国の旅行者から問い合わせが届いている。
彼らの目に、熱海がどう映り、何を求め、どんなことに魅力を感じるのか。
熱海がこの先、どこを目指していけば良いのか、そのヒントが隠されているように思える。


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