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Red

昨年のパンテラの再結成に1人でかなり盛り上がった私ですが、今年のBeat結成は、私の中で今のところ、今年最大のニュースです。

Beatは、ロバートフリップさんの認可のもとで結成された1980年代のキング・クリムゾンの楽曲を演奏する新しいバンドです。

1980年代以降のキング・クリムゾンのメンバーとしても有名なエイドリアン・ブリューさんとトニー・レヴィンさんに、スティーヴ・ヴァイさん、トゥールのダニー・ケアリーさんを加えた4人が1980年代のキング・クリムゾンのアルバム『ディシプリン(Discipline)』、『ビート(Beat)』、『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア(Three Of A Perfect Pair)』の楽曲を演奏するバンドです。

1980年代のクリムゾンは、結成当初、ディシプリンという名前で活動していたバンドです。

クリムゾンの一度目の解散は、1971年の『アイランズ』発表後でした。

ロバート・フリップさん以外のメンバーが一斉に辞めてしまったという散々な出来事でした。

それから1972年に『太陽と戦慄』で鮮烈な再結成を飾ったクリムゾンですが、74年の『レッド』で再び解散します。

創作面ではピークを迎えていました。

その後7年間の沈黙を経て、再デビューした際に発表されたアルバムが『ディシプリン』でした。

『レッド』発表後、ロバート・フリップさんは一旦は引退を決意しましたが、フリッパートロニクスと呼称する独自の機材を用いたソロ活動や、デヴィッド・ボウイさんやピーター・ガブリエルさん、ブライアン・イーノさんといった偉大なアーティストたちとのコラボレーション活動をしました。

その後、再び自身のバンドでの活動を志向するようになったフリップさんは、後期クリムゾン(スターレス・クリムゾン)のメンバーだったビル・ブラッフォードさんとブライアン・イーノさんを通して面識のあったエイドリアン・ブリューさん、ピーター・ガブリエルさんを通して共演歴のあったトニー・レヴィンさんを迎えて新バンドを結成しました。

それがディシプリン・クリムゾンです。

最初はディシプリンという名前で活動していましたが、ヒットを狙って商業的な理由でキング・クリムゾンと改名したということです。

ディシプリンは戒律や規律という意味があります。

サウンドにアフリカの民族音楽を基調としたポリリズムや、当時流行していたディスコサウンドを導入するなど…かなり軽くなった印象の以前のクリムゾンとはガラッと変わったスタイルに賛否両論が巻き起こりました。

他にも“クリムゾンはイギリス人のバンド”という固定観念を根強く持つファンのエイドリアン・ブリューさんとトニーレヴィンさんへの批判や、それまでの歌詞に見られた文学的な世界観がなくなってしまったことや、軽快なステージパフォーマンスをするようになったこと(ブリューさんとレヴィンさん)への批判もありました。

ちなみに、フリップさんだけは変わらず椅子に座ったまま黙々と演奏していました。

70年代のクリムゾンはアルバム毎にメンバーチェンジしていましたが、ディシプリン・クリムゾンはメンバーチェンジすることなく『ディシプリン』、『ビート』、そして『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』の3枚のアルバムを残して1984年に解散しました。

当時のフリップさんは最後の2作品をレコード会社との契約枚数消化の為に作ったと発言していました。

その後、クリムゾンは1994年にこの時期の4人に2人(トレイ・ガンさんとパット・マステロットさん)を加えてダブルトリオ・クリムゾンとして再結成しました。

『ヴルーム』と『スラック』のサウンドが物凄く完成度が高かったことから、90年代以降はディシプリン期への再評価の機運が高まって、『ディシプリン』も名作と考えられるようになりました。

フリップさん自身も、歴代クリムゾンの傑作として『クリムゾン・キングの宮殿』、『レッド』と一緒に『ディシプリン』を挙げています。

そんな複雑な時期の楽曲を演奏するバンドのBeatですが、楽しみで仕方ないです。

いずれ、90年代のダブルトリオ期の楽曲もやってほしいものです。

ここまで長らくディシプリン期のクリムゾンについて書いてしまいましたが、今日の本題はスターレス期の最終作について書きたかったわけです。

本日の“こずや”のBGMは、キング・クリムゾンの1974年の『レッド』です。

ロバートフリップさんとジョン・ウェットンさん、ビル・ブラッフォードさんの3人が尋常じゃない緊張感の中で生み出した名盤です。

現在、第一線で活躍しているトゥールやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどにも多大な影響を与えている作品であり、1990年代に社会現象を巻き起こしたニルヴァーナのカート・コバーンさんも好きな作品として挙げていました。

プログレッシヴ・ロックという音楽のジャンルを構成する要素の多くは1970年代のキング・クリムゾンが築き上げたものです。

現在も数多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

前作の『暗黒の世界』の後にヴァイオリン奏者のデヴィッド・クロスさんが脱退し、3人体制になったキング・クリムゾンが1974年に発表したのが『レッド』です。

ロバート・フリップさんがギター、ジョン・ウェットンさんがベース兼ボーカル、ビル・ブラッフォードさんがドラムです。

ゲストに、メル・コリンズさんがソプラノサックス、イアン・マクドナルドさんがアルトサックス、デヴィッド・クロスさんがヴァイオリン、マーク・チャリグさんがコルネット、ロビン・ミラーさんがオーボエで参加しています。

旧メンバーあるいは過去作にもゲスト参加の経験を持つミュージシャンたちが迎えられた形です。

収録曲は…、

01.レッド
02.堕落天使
03.再び赤い悪夢
04.神の導き
05.スターレス

この『レッド』が発表される直前に、キング・クリムゾンの解散がフリップさんから宣言されました。

『眩惑のブロードウェイ』で創作面でピークを迎えていたジェネシスからピーター・ガブリエルさんが脱退したのもこの時期…。

ピンク・フロイドも『狂気』が大ヒットしていた時期です。

その後のバンドのバランスが崩れていったところを見るとピンク・フロイドもやはりバンドとしての創作面のピークだっと言っても問題ないでしょう。

1967年から始まったロックの多様化…拡大期の1つの時代の終わりの時期でした。

タイトル曲の「レッド」はディストーションをかけたギターのハードなリフを前面に押し出した重厚な曲で、従来のキング・クリムゾンの音楽性とはまた違うメタル度が増した作品です。

「堕落天使」はクリムゾン史上最高のメロディを持つバラードですし、「再び赤い悪夢」はプログレとメタルとジャズを融合したクリムゾンの集大成的な名曲です。

「神の導き」で気持ちを落ち着かせて…いや、攪乱されて…なだれ込む「スターレス」は初期の「エピタフ」や「クリムゾン・キングの宮殿」を彷彿とさせるメロディアスで叙情的な前半部と、サックスとギターによる激しい即興演奏を聴かせる過激な後半部が交わって成立した大作です。

この5曲がまとまった時にまた1つの塊となってガツンときます。

完璧なアルバムです。

ドラムはビル・ブラッフォードさんです。

クリムゾンの他にもイエスやジェネシス、U.K.といったバンドで活躍したプログレの象徴のようなドラマーです。

幼い頃からジャズに興味を持ち、10代の頃からバンド活動を開始して、イエスに加入したことから頭角を現しました。

一度、学業に専念する為に脱退しましたが、再びイエスに復帰して本格的にドラマーとして活動しました。

イエスの黄金時代を築き上げた後、キング・クリムゾンに加入してクリムゾンの最高形態を築きました。

ジェイミー・ミューアさんの神憑かったパーカッションに刺激を受けた『太陽と戦慄』から始まり、『暗黒の世界』、そして、『レッド』へと上り詰めましたが、クリムゾンが解散することになり、 その後はピーター・ガブリエルさんが脱退してフィル・コリンズさんがボーカルをすることになったジェネシスのツアーメンバーをやったり、U.K.の結成などプログレッシブ・ロックの歴史を作り続けました。

80年代と90年代もクリムゾンでの活動を中心に音楽活動を行い、演奏活動は60歳を機に引退しましたが、その後もクリニックや指導を行っているそうです。

とんでもなく複雑なフレーズを顔色一つ変えずに冷静に叩いている姿が印象的なドラマーです。

真面目に丁寧なドラムを叩き、野生的に激しく叩くことはほとんどありません。

計算し尽くしたような無駄を一切排除したプレイをします。

自由奔放な天才肌のジェイミー・ミューアさんとのコラボの時は物足りなさを感じたぐらいですが、それから僅か1年少々で『レッド』での作品を支配するようなプレイですから、負けず嫌いな面もあるのかもしれません。

シャープで研ぎ澄まされた硬質なサウンドが格好良くて、『レッド』の…特に「再び赤い悪夢」では、甲高いスネアと乾いたチャイナシンバルの音がたまりません。

キング・クリムゾンをドラム的な視点で聴く時にまず挙げられるべき作品は、『クリムゾン・キングの宮殿』のマイケル・ジャイルズさんのジャジーなドラム、『太陽と戦慄』のジェイミー・ミューアさんとビル・ブラッフォードさんのバトル、『ディシプリン』のブラッフォードさんのエレクトリックサウンドを交えたトリッキーなドラム、『スラック』のダブルトリオによるブラッフォードさんの最終形態となるプレイだと思います。

『レッド』はどちらかと言うとバンドを…音楽そのものを総合的に聴いた方がおもしろいので、やはり、創作面でいうとクリムゾン史上最高の状態だったのだと思います。

高校生の頃から今もそうなのですが、キング・クリムゾンを聴くと頭の悪い自分が賢くなれた気分になれるので…あぁ~ステキ♪

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