旅の終わり

画像1 のたうつ触手で空をまさぐり、それは灯の位置を探るかのように蠢く。武闘家は思わず後ずさった。目らしきものは見えない。熱に反応しているのか? ゴボゴボと泡だつ口をだらしなく拡げ、じりじりと距離を詰めてくるそれが何かを、彼女は知っていた。〈這い寄る落とし子〉。〈深淵〉の禍つ神々が手慰みに造った不定形の悪魔である。今やすべての仲間を喪った武闘家にとって、この遭遇を生き伸びる望みはない。不思議と恐れはなかった。ただ喉が乾く。水袋の残りを飲み干しておかなかった事を後悔しながら、彼女は斧槍を構えた。

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