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ラストダンサー

馬鹿みたいにCDを買って、ディスクドライブに挿れて、何倍の速さで取り込むのかを見ながら少しそわそわして待っていた。

その間は歌詞を読んだり、和訳を見てどんなメロディなのかと想いを馳せる。

無意味にクレジットにも目を通してみたりしてね。

そんな生活を離れて3年ほど経った。
割と遅れてApple musicに加入した。
割と遅れた理由は便利とはわかりつつも、何となく名残惜しさを感じていたからだ。

ひとつの時代が終わるんだな。
そんな大袈裟なことではないのに。

それでも大袈裟だった。大問題だった。
流行の濁流には逆らえず、やむなくサブスクリプションの渦に巻き込まれていった。

とても便利だ。なんでもあるからね。
手当たり次第ダウンロードをしていったよ。

でも気づいたのは自分の好きな音楽を忘れちゃっていっているってことだね。
ipod classicのホイールの触感の先にある音楽は全部好きだったのに。聞いたことないサントラもあったけど。

何が好きだったっけ?
そんな気持ちになった。

何でもいいよって言われると少し困るのと同じで、何でも聴いていいんだよって言われると何を聞こうと困惑してしまう。

会話や、思い出や、マッチする香りに引きづられてたまに好きな音楽を思い出したりするけど何だか記憶に紐づけておいた音楽も丸ごと忘れちまったような気持ちになるよ。

何だか調子が悪いなって思うとき
何だかイライラするなってとき
何が何だかわかんねえよってとき

好きな音楽を聴いていないことに気づく

だから馬鹿みたいに、馬鹿だったあの頃に戻ってあの頃のままの気持ちで音楽を聞きたくなる。

今も聴いてるよ。

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