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風が吹くとき

1986年イギリス


核戦争と老夫婦をテーマにしたアニメーション
イギリスの制作だからか、どうもこの老夫婦の持ち家の風景が原作版のパディントンと被ってしまうくらいに前半が夫婦の隠居生活のほのぼのした描き方、ほんわかした絵も手伝って何気ない何処にでもいる老夫婦の日常を写し出しているが、日常の中にじわりと密かに潜び込む戦争の足音も老夫婦の日常にパッケージされながら、物語の中に割り込んで来る。

こんなアニメ映画に出演しなければ、この老夫婦も定年後の余生を庭の芝を刈り、庭でお茶を飲み、家庭菜園を楽しみ、何でもない事で夫婦喧嘩をして仲直りし、テレビをみながら画面に文句を言い、新聞を読んで世の中に文句を言い孫が遊びに来てごちそうを振る舞い…

普通の老夫婦のありふれた日常だけで、ドラマを作れたらなんて幸せなことなんだろう…
何の盛り上がりも何の事件性もなく、ただ時が淡々と流れていくそんな一日を描いたドラマを、観客不在でも観客全員が寝ていても文句すら言わせないドラマを。
スクリーンの向こう側で老夫婦がフィッシュ&チップスを食べるのを観客がただ眺めるそんな映画があってもいい。

世界情勢が刻刻と変化し核戦争の脅威がすぐそこにやって来た。
家の中に政府公認の簡易核シェルターを作りながら、息子に電話をして同じ簡易核シェルターを作れと言うがバカにされて笑われた。

いよいよ戦争のカウントダウンが始まり、
老夫婦は食料の買い出しを始める。
買い占めの人が多数いるのであろう、街はパニック状態で食料は品薄だった。

いよいよ終わりの時がやって来て、ソビエトからイギリスに向かって核ミサイルが発射されたとラジオの臨時ニュースでアナウンサーが、自宅待機するようにアナウンスする。
核ミサイルがロンドンに落ちる…衝撃でロンドン近郊は破壊され老夫婦の家も1部破損するが老夫婦は死なない、ここで死ななかった事が、幸いなのか災いなのかわからないがこの後に生き残った故の地獄が待つ。

ロンドンに核ミサイルが落ちたなら、全世界同様に核ミサイルが飛びまくったのであろう。
ドラマの終焉は老夫婦が信じる政府のマニアル通りの生活をするが、これが見ていると余りにも痛すぎるのでテレビに向かって思わず突っ込むのだが、冷静に考えれば今日本で起きている事と同じじゃないか!!
食べて応援?100ベクレルという法律で定められた黄色のドラム缶に入れる放射性廃棄物基準値まで食べてOK?
でもそれを言ったら病院のレントゲン室の放射線防御の意味すら吹き飛びレントゲン技師も要らなくなる、国が定めた法律を国が破ると言った訳がわからない事をやってるこの国は一体なんなんだ?

全てのインフラが遮断され、電気も水も電話ももう二度と使えないだろう。
隣国の脅威と軽々しく言うが、要らん挑発をしてるとこの映画と同じ事を国民は味わう。
備蓄の水がなくなったら放射能塗れの雨水でも飲めるか?放射能塗れの食料でも食えるか?
まあ今でもベクレている食べ物を食べているからきっと大丈夫でしょうけど。

この老夫婦は政府の言うことに全く疑問を持たない。放射能に対する最低の知識すらなく、政府が新しい治療役を持って助けに来てくれると死ぬまで信じて多分急性放射線障害で生命の炎が消えた。

#アニメ #映画 #コラム #エッセイ #小説 #核戦争 #放射能 #被曝





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