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バイイング イン インド☆my traveling diary Ⅳ 旅情そそるカトマンドゥ

かつて小さなお店をつくり、旅をしながら遊ぶように仕事をしていた6年間の記憶をつづりたいと思います。買い付け女一人旅。出会った人々。私にとってのインドとは? 新しい旅をはじめるための心の整理。同じように新しい旅路に直面している人たちとこの物語をシェアできればとても幸せです




ネパール、カトマンドゥの空港はそれまで数か国の空港を経験してきた私にとって、一番独特な雰囲気の空港だった。近代的でないというだけではない。薄暗く、セピア色帯びていて、絨毯張りの埃っぽい古びた洋館のような。。。あくまで私の記憶の印象で、本当に絨毯が敷いてあったのかなど定かではない。私にとってこの東洋っぽいけど、なんだか初めての異国感はたまらなかった。

空港を出るとたくさんのタクシーの客引きがおり一瞬たじろいだが、90年代後半に訪れたベトナムほどではなかった。また、Yが一緒だったこともあり余裕をもって対応できた。

ネパールでの最初の宿は、紹介してくれた私の日本の友人らしく、ダルバールスクエア近くの思いっきりヒッピー風の宿だった。スタッフも外国人慣れしたイケメン揃いで、壁にはサイケデリックなペイントが所せましと描かれている。とにかく私たちは長い移動でとても疲れていた。まだまだダウンが必要なくらいカトマンドゥは寒かった。しかしほんの数分でシャワーのお湯は冷水に変わってしまった。なるべく水が体にかからないよう髪を洗い、水の温度に慣れてきたころ、体を少しずつ洗った。逆にポカポカとしてさっぱりとした後、決して清潔とはいえないベッドで重たい毛布をかぶって眠りに落ちた。

カトマンドゥの景色は、私の期待を裏切らなかった。レンガ造りの建物に、でこぼこの未舗装の道。民族衣装に身を包んだ人々。チョークと呼ばれるいくつかのバザールは地元の人でにぎわう青空市場になっている。野菜や生鮮品、布や衣類、日用品などチョークごとに特色がある。チョークとチョークをつなぐ細い道を歩いていくと、小さな商店やカフェ、旅行会社などに交じって、お香の煙がたちこめるヒンドゥのお寺が頻繁に現れる。

私が街で特に心惹かれたのはものの容器や包装だった。ヨーグルトはなんと蓋なしの素焼きの容器に盛られ売られている。お土産品を売るほとんどの店では、商品を小さな巾着袋に入れてくれるが、その余り布を利用した手作り巾着は、極小さいサイズであっても凝ったつくりで、布柄や色合わせが絶妙で可愛かった。モモ(チベット風餃子)スタンドでは、葉っぱをプレスしたお皿にほかほかなモモを入れてくれる。日本では失われたこのような風景が私にとってはとても気持ちよく、そして美しく感じられた。

滞在していたダルバールスクエアからバックパッカーの聖地タメルまでのエリアでは食事に困らない。しかし外観は西洋的でいかにも旅人向けのおしゃれなお店であっても、オーダーした食事が出てくるのは総じて遅い。フライドポテトは注文を受けてからじゃがいもを切る。春巻きは皮づくりから始まるのだ。そのかわり、いちから手作りの出来立ての味が楽しめる。メニューは西洋的な食事が多く、一緒にモモやダルバート(カレー定食)といったネパールのメニューも混ざっている。レストランで食べるダルバートはあまり口に合わなかったので、私はよく、チベット料理のトゥクパ(うどん風)や、チョウミン(やきそば風)を食べていた。

冷え込みの増す夕暮れのダルバール広場で、私はウールのストールにくるまり、青空チャイ屋のおじさんのチャイ作りの様子にぐっと引き込まれる。街のあちらこちらの家の窓から、祈りの鐘の音が聞こえてくる。ブクブクと沸騰するミルクの泡と、鍋の下の炎を見つめながら熱くて甘いチャイを待つ時間は、なんてことないようなネパールの日常でありながら、濃密な時間であった。

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