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デザイナーの地味な日常

グラフィックデザイナーとして働いてきて20年以上、
仕事の話になると必ずといって聞かれます。
「で、結局何をしている仕事なの?」
おそらく私の家族もはっきりは説明できないはず。
「グラフィックデザイナー」っていう響きだけで華やかそう、派手そうって
印象を持たれることも少なくないですが、実際の作業は地味!
基本はずっとデスクに向かって、延々と作業を続けています。

「校正」という作業

写真はイメージです

日々の作業のひとつに「校正」があります。
ちょっと前になりますが、
石原さとみさんが主役の「校閲」をテーマにしたドラマを
思い出していただけるとわかりやすいかもしれません。

ちなみに、「校正」と「校閲」では意味合いが違ってきます。

・校正:文字の間違いを正し、ルールに基づき修正を行なうこと
・校閲:事実に基づく間違いを正すために行なう指摘

私たちが日々しているのは「校正」です。
クライアントからいただいた原稿と制作した文字情報が間違っていないか、
提出前に校正をします。

以前旅行のパンフレット制作の担当をさせてもらっていた時は、
とにかく内容が細かい、文字情報が多い、そして最後の校了
(クライアントからのOK)をもらうまでの文字の修正が多いこと、多いこと!
原稿の余白がなくなるほどの修正をもらうことも日常茶飯事でした。
(実際の校正紙をお見せできないのが残念です・・・)

ダーマトグラフという筆記用具

そんな時、使うのが今回紹介する「ダーマトグラフ」です。
(正式名称は私も今回初めて知りました・・・)
旅行パンフレットには旅行の行程や、観光地の情報、旅行代金、
旅行に関する注意事項などで埋め尽くされ、ひとつ情報を間違うと、
情報のつじつまが合わなくなってしまうので、
修正するにも集中力が必要になります。

そこで、「ダーマトグラフ」で修正した箇所をひとつひとつチェックをつけ、
修正漏れがないように確認しながら作業を進めていきます。

私は「黄色」でずっとチェックをしていました。
基本修正は赤ペンで書かれることが大半なので、
赤い文字の上にチェックしても文字も隠れませんし、
この鮮やかなY100のような黄色は、チェック漏れも気付きやすいんです。

地味にスゴイ!ダーマトグラフ

改めて調べてみると歴史は古く、元々は医療用として使われていたそう。
語源となるギリシャ語では「dermato=皮膚」、「graph=書く」と訳され、
皮膚にも書くことができるので、
手術の時にお医者さんが切るマークをするために作られた筆記用具だとか。

最大の特徴は、芯にワックスを多く含むことで、ガラス、金属、
プラスチックにも書けるということです。
なので、ボールペンやサインペンでは書けない、
写真がプリントされた紙でもしっかり書き込むことができます。
現在国内で唯一製造している三菱鉛筆の商標になります。
文房具の色鉛筆などが並ぶコーナーに
今もひっそりと並んでいるのを今もみかけます。

今はデータにしてメールで校正を送る、ということがほとんどで、
紙に印刷して校正を提出する、ということも少なくなりました。
SDGsとしては素晴らしいことですが、
こういった文房具が使わる機会が少なくなるのは寂しいものです。


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