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グノーシス神話とモモの類似性/ミヒャエル・エンデ『モモ』【×えるぶの語り場】

シュ:ソフィーはグノーシス主義についてどこまで知っている?

:あまり知らないんだよね。「グノーシス」という言葉がギリシャ語で智識という意味であるということを知っているぐらいかな。
あとは、英語のcognition(認識)の由来になっているよね。
キリスト教の異端という印象が強いけど、実際のところどうなのかな?

シュ:ソフィーの言う通りキリスト教の異端という面を持つグノーシス主義者たちもいたのだけど、グノーシス主義の定義はとても広くてマニ教なんかもそのカテゴリに分類されることもあるんだよ。

彼らの一番の特徴としては、独自の二元論(物質と霊)をベースにした神話を持っていて、グノーシス(智識)の獲得による自身の魂の救済を目指しているところかな。

前振りが長くなってしまったけれど、最終回は『モモ』に描かれているグノーシス主義的な思想について話せたらと思う。
かなり強引な部分もあるかもしれないけど、そこは許してね(笑)

:最後の最後で一気にシュベール色が出たね。そもそもどうして『モモ』とグノーシス共通点に気が付いたの?

シュ:前回話した「マイスター・ホラ」について考えている時に思い付いたんだよね。
マイスター・ホラは「時間の国」で時間の正体と灰色の男たちを止める方法について、モモに教えたよね。
結果、その智識のおかげでモモは灰色の男たちから奪われていた人々の時間を取り戻して世界を救うことに成功した。

この話をさらに簡略化すると「謎の存在から少女が知恵を授かりその知恵で世界を救う」という図になるじゃん?
この図がグノーシス主義者が残した文献の記載とかなり似ているなと思ったんだよ。

:具体的はどの辺が似ているの?

シュ:グノーシス主義の神話には「アイオーン」という「至高者」(神)の使い魔のような存在がいるんだよね。
キリスト教系グノーシスでは、イエスも父なる神から派遣されたアイオーンであると解釈されたりもしているんだよね。
つまりアイオーンは人間に本当に救済される方法を伝える存在として描かれているのよ。

少女モモに人々を救う方法を伝えたマイスター・ホラはアイオーンなのかなと。

他にも「灰色の男は人間が生み出した」とマイスター・ホラが言っていたけど、それもグノーシス主義者の文献に似通っている記載があって、
『イエスの知恵』という文献に「有限の存在から生み出される存在は同じく有限なので悪です」という旨の記載があったりする。

まさに、本作品の悪役として描かれている灰色の男は有限の人間から生み出された悪い存在だなと...。

他にも思い返すと色々と気になる箇所は沢山あるんだよね。

:面白い考え方だね。
ただ、ミヒャエル・エンデとグノーシス主義は何か関連性があるのかな?

シュ:直接的には関係が無いけれど、エンデに影響を与えたとされているルドルフ・シュタイナーはグノーシス関連の雑誌を編集・刊行していたみたいなので、何かしらの関係性はあると睨んでいる。

あとグノーシス主義者とシュタイナーの提唱する宇宙論は似ている多分に類似箇所があるのでね。

:今回で『モモ』の対談企画は終了だけど、ぜひ記事として深堀して欲しい内容だな。

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