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手話通訳者の募集をはじめます。ろう者が、自分の言語で会議やイベントに参加することが当たり前の社会に

ヘラルボニーでは2023年7月より、福祉施設やグループホーム、障害者雇用など、障害のある人の新しいインフラを構築するための新規事業を展開する「ウェルフェアチーム」を新設しました。同部門立ち上げメンバーの1人が、ろう者であり、一般社団法人「異言語Lab.(いげんごラボ)」の代表理事である菊永ふみです。「異言語Lab.」では、「異(ことなる)を楽しむ世界を創る。」をミッションに、手話を使った謎解きゲーム「異言語脱出ゲーム」等の体験型エンターテインメントを創り、新たな価値を提供しています。

現在当社では、ろう者と聴者が同じオフィスで心地よく働くための様々な取り組みを進めていますが、将来的にヘラルボニーの中核事業としてだけでなく、障害福祉の社会にとっても大きな精神的支柱になり得る「ウェルフェアチーム」の中心メンバーである菊永と伴走し、共に未来をつくっていく手話通訳者を募集します。

ヘラルボニー入社までの経歴や、「異言語Lab.」立ち上げのきっかけ、当社でろう者と聴者が心地よく働くために推進している取り組みについて菊永に話を聞きました。


菊永ふみ

ろう者。東京学芸大学特別支援教育専攻科を修了後、児童指導員として10年間勤務の傍ら、一般社団法人異言語Lab.を立ち上げ、代表理事を務める。異言語脱出ゲーム開発者。コンテンツクリエイター。謎制作とコンテンツ提供を主に、ろう者・難聴者が主体的に取り組めるチーム作りを意識している。これまでの異言語Lab.での経験を踏まえ、さらに障害のイメージを変えたいという想いを胸にヘラルボニーへ入社。ヘラルボニーが2023年7月に新設した、福祉施設やグループホーム、障害者雇用など、障害のある人の新しいインフラを構築するための新規事業を展開する「ウェルフェアチーム」の立ち上げメンバー。


福祉型障害児入所施設で働くなかで気付いた、様々な背景を持つ人々がありのままでいることの大切さ


ーはじめに、ヘラルボニーに入社するまでの経歴を教えてください。

大学で教育を学び、教員免許を取得したこともあり、卒業後は福祉型障害児入所施設で働いていました。主に聴覚障害があり、様々な境遇にある子ども達が生活していました。私は児童指導員として子どもたちと寝食を共にする日々を過ごしていました。私は口話訓練を幼い時からやっていたため、日本語を上手く発言し、聞き取らなければいけないという思いに駆られていた頃でした。それに伴い、様々なことに対して、できるようにならなければならないという考えが強く、施設の子どもたちにも、もしかすると自分の中の当たり前を押し付けてしまっていたのではないかと感じます。正直に言うと反省だらけの日々でした。ただ、子どもたちと一緒にイベントを開催したり、料理を作ったりすることがとても楽しくて、私自身の喜びでもありました。ろう・難聴の子どもたちが主体的に考え、行動できるよう、子どもだけでの話し合いの場を設けたりといった取り組みも行っていました。

ー施設で子どもたちと過ごす中で、どのようなきっかけで「異言語Lab.」を立ち上げることになったのでしょうか?

たまたま参加した謎解きゲームが面白かったことを施設長との雑談で話していたら、「すごく面白そうだから、今度、子ども達と社員の交流会でぜひやってみたら?」と施設長が提案してくれたのです。その後、交流会でやってみたところ、ろう•難聴の子どもたちと聴者の大人が混ざり合い、手話を使いながら、直接コミュニケーションを取り合う景色が生まれました。そして交流会を手伝ってくれたスタッフから「このまま小さな世界で終わるのはもったいない。このゲームは広く世界に広げるべきだ」と大きな後押しを受けて一般社団法人異言語Lab.を立ち上げました。施設長やスタッフのその一言がなければ、「異言語Lab.」を立ち上げることもなく、ヘラルボニーで働く今の自分もいなかったと思います。

ー「異言語Lab.」について詳しく教えてください。

主にろう者や難聴者を中心としたコミュニティで、手話を第一言語に活動しています。ろう者と聴者の異なる言語を持つ者同士が手話・身振り・筆談等を駆使して試行錯誤しながら伝え合う、分かり合う場を作っています。
「異言語Lab.」でのミッションは、異(ことなる)を楽しむ世界を作ることです。
活動内容の1つに、「異言語脱出ゲーム」があります。これは、謎解き要素を含んだゲームで、手話や身振り、筆談、絵に描く等様々なコミュニケーションツールを活用します。視覚言語と音声言語の、異なる言語を持つ者同士が音声言語では成し得ない手段を駆使しながら直接向き合いながらミッションをクリアしていくゲームになります。

私の主な役割はコンテンツクリエイターです。異言語脱出ゲームの企画・構成を考え、異なる言語やコミュニケーションに重きを置いた謎を作っています。

メンバーの言葉選びに愛があるーー“全肯定の塊” ヘラルボニーとの出会い


ー続いて、ヘラルボニーとの出会いについて教えてください。「異言語Lab.」は2018年4月に設立したとのことで、ヘラルボニー創業とほぼ同じタイミングですね。

私たち「異言語Lab.」が入居したコワーキングスペース「100BANCH(ひゃくばんち)」が、代表の松田さん、創業メンバーの1人である大田さんとの出会いの場となりました。手話をはじめとする視覚言語の魅力を伝えたいと思って「100BANCH」に入居したのですが、音声言語が多い環境下で私たちはある意味 ”異質” の存在で、孤立感を感じていました。でも松田さんの「“普通”じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。」という言葉が、私たちにとっても後押しになりました。私たちの人生を大きく変える出会いだったと思います。

ー初めての出会いから5年経って、今年5月ヘラルボニーに入社した理由は何ですか?

これは誤解のないように書いていただきたいのですが、「異言語Lab.」のためでもあります。ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げて障害のイメージ変容と新たな文化の創出を目指していますが、その中には「異言語Lab.」の存在も含まれていると思います。そして「異言語Lab.」のミッションである「異(ことなる)を楽しむ世界」の根底は、ヘラルボニーのミッションと深く繋がっていると考えました。

また、もう1つの大きな理由は、私にまだまだ足りない経営の力が、ヘラルボニーにはあることです。5年間、「異言語Lab.」の代表を務める中で、ビジネスとして組織を運営することの難しさを感じてきましたが、そんなタイミングで松田さんから話をいただき、これは素晴らしい機会だと感じました。ヘラルボニーで学んだことを「異言語Lab.」に還元し、「異言語Lab.」がさらに発展することがヘラルボニーにとっても非常に重要です。お互い協力しながら、高め合う結果、”異彩” と ”異彩” が繋がっていく。自分の立ち位置としては、どちらも向上させることで、社会を変えていければと考えています。

ー様々な期待、そして不安もありながら入社されたと思いますが、入社してみて感じたギャップはありますか?

やはりコミュニケーションの差は大きくて、使用言語が異なるので当たり前なことではあるものの、改めてその現実を突きつけられたというのが正直なところですヘラルボニーは障害福祉の常識を変えることをミッションにしていますが、実際のオフィスは健常者中心で、その状況に違和感を感じたんですよね。自分はここではマイノリティで、どうやって仕事ができるんだろうと。これは誰が悪いというわけではなく、やはり社会側の問題だなと思います。

でも、入社して以降仕事が楽しく、共に社会を変えたいという思いを変わらず持てているのは、ヘラルボニーのメンバーが本当に素晴らしい方々ばかりだからです。驚くほど1つひとつの言葉選びに愛があり、どんな意見も肯定する “全肯定の塊” な会社だと感じました

ーふみさん主催の手話講座など、ろう者と聴者が同じオフィスで心地よく働くための取り組みを推進してくれていますが、社員の反応などで何か感じることはありますか?

まるで新幹線のようなスピードで、覚えた手話を使ってすぐに伝えようとしてくれる人が多いなと驚きました。上手い下手ではなく、伝えたい、分かり合いたいと思うかが大切だと改めて感じています。ただ、当然言語が異なっているので、やはりさらに深いコミュニケーションを取るには、通訳の存在が必要だと強く思います。ろう者が、自分の言語で仕事をし、会議やイベントに参加することが当たり前の社会になればと。

ランチタイムを活用し、社内で実施している手話講座の様子。

障害のある人々が自ら表に立ち、リーダーシップを発揮できる社会を共に目指したい


ー「ウェルフェアチーム」での具体的な業務内容について聞かせてください。

様々な企業でD&Iを推進する研修コンテンツ作りを主に担当しています。自分の異彩、チームの異彩を創り出せる環境を構築するためのコンテンツをまさに今考えている最中です。「異言語Lab.」での経験を活かすことのできる私ならではのミッションだと思いますし、チームメンバーとコンテンツを検討する上で、心地よく直接コミュニケーションを取りながら分かり合えるペースで進めることが嬉しいです。また障害者雇用に関する新規事業の設計も始まります。

ウェルフェアチームの取り組みについて話す菊永。「ウェルフェア」を手話で伝える際は、「みんな」「しあわせ」という手話を掛け合わせて表現する。


ー今回手話通訳者を募集しますが、どんな方と一緒に働きたいですか?

試行錯誤しながら進めていくことを、共に楽しんでくれる方と働けたら嬉しいです。何が正しい、間違っている、ということはないので、今の環境で社会を変えるためにどんなチャレンジができるか、共に見つけていける仲間を募集しています。

ー最後に、今後ヘラルボニーでの取り組みを通して成し遂げたいことを教えてください。

今まで障害のある人というと、仕事上で表に立つ機会があまりなかったように思います。あったとしても、福祉分野において支援の文脈で語られることが多いですよね。そうではなく、例えば飲食店や遊園地、ホテルなど、自分から表舞台に立ってお客様におもてなししたり、主体的にリーダーや責任者を務めることが当たり前にできる社会に変えていきたいです。

ーありがとうございました!

左からインタビュアーを担当した安藤(ヘラルボニー広報)、菊永ふみ、手話通訳者の小松智美。


■手話通訳者の募集について

ヘラルボニーが目指す未来を実現していくためには、多様なメンバーと共に事業を前進させていくことが不可欠です。メンバー同士やクライアントとのコミュニケーションの障壁を取り除き、より多くの人と共に未来をつくっていくために、手話通訳者のポジションを募集します。ヘラルボニーが目指す未来を共に目指したい想いのある方の応募をお待ちしております。

<応募資格>
・ヘラルボニーのミッション、バリューに共感いただける方
・手話通訳士資格
・または、手話通訳者として活動経験のある方
・週2日以上、1日4時間以上の勤務が可能な方

募集要項の詳細・ご応募はこちらhttps://open.talentio.com/r/1/c/heralbony/pages/79212


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