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盗聴地下鉄トーク ~粋な忘年会セッティング~

忘年会シーズンもたけなわ。実際に顔を出すのも大変ですが、なにげにシーズン・イン前のセッティングも骨が折れるもの――先日、「こんなに粋な忘年会セッティング、あるの?」と驚いたことがありましたので、ここに共有します。

一から説明します。会社の部署単位で行われる、いわゆる公式な忘年会ではなく、ちょっと偉い人主催の6人~8人くらい規模の忘年会のセット、これが結構難しい。ちょっと偉い人から「メンバーは任せるよ」って言われても、主催者は勿論、皆が居心地良く過ごせるメンバーを選ばないと……ということで、頭の中で素早くシミュレーションをする。そして、「あ、この6人で飲みたいな」という構図が思い浮かんだ時、その構図通りのメンバーを集める為に、私がよく使う手がある。

「○○さんのご指名です。是非来てもらえませんか?」――これって、結構魔法の言葉だと思う。「大勢の飲み会だけど、主催者のちょっと偉い人が、名指しであなたを呼べと言っている」こう言われると、どんな人も満更でもないようだ。
まあ全くのウソというのもナンなので、「そうですね~、○○さんとか、○○君なんてどうですか?」と主催者にあらかじめ水を向け、「いいねえ」という言質を取る。それを広義の意味での「ご指名」にしてしまえばいいのだ。勿論、これは男女の集まりにも効果てきめんで、「○○君が、是非○○ちゃんに来て欲しいって言ってるのよ~だから来て、お願い!」と頭を下げると、大抵の女子は、渋々感を装いながらも来てくれるものだ。

そんなこんなで、先日のこと。地下鉄の中でその会話は聞こえてきた。隣に座っている女性二人組。そのうち一人の話が止まらない。
なんでも、20人程度の部署に、分かっているだけでも2組の不倫カップルがいるという。「そのうちの1組は、55才のオッサン(部長)と、25才の女の子なんだけど、もう2人のことは全員にバレバレなのに、本人たちは必死に隠すのよねえ。
夏休みの時も、女の子の方が『カナダ&信州の温泉に行ってきました』って言って、温泉まんじゅうをお土産に配ったんだけど、絶対にオッサン(部長)と温泉に行っただけでカナダには行ってないのよ。
だって、たかが7日間のお休みよ。前半カナダに行って、帰って来てすかさず信州の温泉に行くっておかしくない?そして、カナダか信州、どっちかのみの土産を配るのなら、むしろメイプルクッキーじゃない?なんで、まんじゅうなの?
しかも、そのまんじゅうの製造年月日が、オッサン(部長)の休み開始翌日だったのよ。オッサン(部長)は、女の子がカナダに行ったことになっている前半は休まず、温泉に行ったであろう中盤からの休み取得のテイ。まんじゅうの製造日からして、1泊2日疑惑濃厚!」とのこと。

もう皆にバレているのに、そんな訳の分からない策略を巡らせる二人に対して、呆れているのかと思ったら……。
「でね、オッサン(部長)が部署の有志で忘年会をやろうって言うんだけど、あえてその女の子をメンバーから外そうとするのよ。だから私、言ってあげたの。『○○ちゃん、今度、オッサン(部長)主催の忘年会をするんだけど、来てくれない?オッサン(部長)のご指名よ~』って。
反対にオッサン(部長)側には『○○ちゃんが、オッサン(部長)と是非飲みたいって言っているので、声をかけました』って。こうすれば、二人は自分たちの関係が私たちにバレてないと思って安心するだろうし、同じ飲み会に素知らぬテイで参加出来るのよ。」

毎日のように週刊誌に「ゲス」スクープをされ、「悪いぞ、悪いぞ」とはやし立てられる芸能界なんかより、一般企業の一般市民のほうが、何かよっぽど粋なんじゃないかしら……?と思ったのでした。

それにしても、メイプルクッキー配れ!成城石井に山ほど売ってるぞ。

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