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「社会課題への意識の深さ」と「その先の世界観」を共有する3人のビジョナリーが、ともに目指す未来とは 〜シリーズBラウンド資金調達に至るまで〜

株式会社ヘンリーは、シリーズBの資金調達を行いました。

今回は、引受先となったグロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)の福島智史氏とヘンリー逆瀬川と林による鼎談を通じて、プレスリリースではお伝えしきれなかった、資金調達に至るエピソードや双方の思い、描く未来の姿について紹介します。

最初に会ったとき、「ヘンリーは行ける」とピンと来た

GCP 福島智史氏

ー ファーストコンタクト時のお互いの印象についてお聞かせください。

福島:既存の投資先の経営者や他のVCからご紹介で投資につながることが多いのですが、ヘンリーに対しては僕からダイレクトに連絡をとりました。この仕事を始めて8年になりますが、自分から起業家にメールを送ったのは久しぶりかもしれません。

「病院経営のアップデート」というテーマには長年注目していて、そこにトライしているヘンリーの名前はそれとなく知っていて、頭の片隅にありました。適切な医療行為の提供とサスティナブルな経営とは必ずしも一致しない部分があり、実は赤字の病院も多いため、その課題の解決は社会的にも大きなニーズがあります。私が担当する他の投資先を通じて医療現場におけるシステムの古さや非合理性、リアルタイム性の欠如が経営課題として挙がっており、改めてこのテーマへの需要を感じて逆瀬川さんにご連絡しました。

逆瀬川:僕らもちょうど資金調達を始めたタイミングで福島さんからご連絡をいただいて、「なんて幸運なんだ!」という気持ちでお会いしました。

私たちがピッチに出てプレゼンするとVCの反応が2つに分かれるんです。「誰もやっていないから、絶対に儲からない」と突き放されるか、「すごく難しい、渋いところを攻めるね」という視点への評価をいただくか。

でも、そこから先への話につながることはあまりありませんでした。福島さんとは初対面なのに、その先の議論まで盛り上がって、一緒にやりたいという気持ちになりました。林にもそのテンションをすぐ伝えて、オンラインで福島さんに会ってもらいました。

福島:オフィスも見せてもらって、このステージの会社にしてはいろいろなことを先回りして準備されていて、キャッチボールのスピードがベテランの起業家を彷彿させるようなコミュニケーションが印象的でした。

パワポの資料を見ながら議論することもあまりなくて、資料なしで互いの世界観だったり、ここは課題解決に必要だよねとか、これでビジネスとしてもうまく行くんじゃないかといった話を交わしましたね。

僕たち投資担当者は初回にお会いしたときに投資するかしないかって、けっこう心の中で決まるケースが多いんです。最初に会ったときに、ヘンリーは行けるんじゃないか、このチームと一緒に仕事したいとピンときました。

逆瀬川:電子カルテやレセコンを入れた後の世界の医療費の話といった議論をしたとき、キャッチボールがスムーズでこれまでにないくらい議論が深くなりました。僕らとしても、ここまでしっかりと議論ができることはほとんどなかったので、かなりうれしかったです。

福島:技術的な難しさもあるし、作り上げるまでの時間や工数もけっこうかかるから、そこに取り組むってこと自体がまずちょっと変ですし(笑)。大きな課題だから、誰かがやらないといけないから俺がやる、という人は多いんですよ。重要なのはその時間がかかる取り組みをチームで行えるかという点です。ヘンリーはすでにチームを作って、企業として展開まで始めていることに魅力を感じました。

ー 事業会社として、そして投資会社として「病院経営のアップデート」に向き合う醍醐味はどこにありますか?

林:お金を稼ぐことと社会の役に立つことが両立できる領域ってあまりないと思うんですよね。でも、「Henry」を売って広げるだけでどんどん世の中がよくなる、世の中に役立つ商品をみんなで作っているんだと説明できるところが、今の仕事のすごくいいところです。

福島:僕のなかのVCの定義では、より良い未来を作ることに投資できるかが非常に大きなポイントです。具体的にいえば、世界のなかでももっとも早く高齢化し、国家予算の大部分が社会福祉に割り当てられている日本の状況を、未来の世代に説明がつく状況にすること。これはなによりも必要だと思っています。

シルバー民主主義という言葉が象徴するように、大人世代を含めた多数決での意志決定ではお金が回らない分野や企業がどうしてもあります。その分野や企業へ投資を一部代替し、大人世代から預かった資金を未来世代の生活に反映させるのも、VCの役割と考えています。

ヘンリーがまさに取り組んでいる医療の見える化や、努力している人が報われるような世界観作りは、私自身のミッションとも非常に強くリンクしていて、恐らくヘンリーで働くみなさんも経済合理性だけではなく、新しい世界が自分たちの手で作れるところにパッションを持っているのでしょうし、僕自身も同じ思いでVCという仕事を選んでいます。

「短期的には合理的に見えないプロダクト開発」と「それを実現するチーム作り」の2つに成功していたことが、投資決断の決め手に

ヘンリーCEO 逆瀬川、林

ー 福島さんのお話から、あらためてヘンリーが向き合う課題の大きさを感じましたが、これまでの向き合ってきた課題と比べるといかがでしょうか?

逆瀬川:電子カルテとレセコンの何が難しいかといえば、UXを外す可能性もあり、同時に法令の落とし穴に落ちる可能性もあるし…。これほど難しい二軸が併存する分野はなかなかないと思います。楽天時代にはアプリやWEBサービス単位でいうと15〜20くらい、ウォンテッドリーでは新規事業を3年間で3つくらい経験しましたが、それらと比べてもこんなに難しいと思ったのは一つもありません。

林:ビジネスとしての難しさの根源がどこにあるかといえば、コストとリターンが全然見合わないところだと思うんですよね。病院向けのクラウド版電子カルテに取り組んでいるプレイヤーがほとんど日本にいないことにも、課題の大きさと難しさが示されていると思っています。我々もその難しさは分かっていて、もっと稼げる方法は他にあるものの、最終的に世の中に返ってくるリターンが大きいから取り組んでいる。

逆瀬川:そうですね、経済合理性は最終的には合うけど、準備期間がものすごく長い(笑)。

林:電子カルテとレセコンとなると、カルテとして医療的な証跡を正しく残すと同時に、レセコンで日々の会計のところまでユースケースを担保しなければなりません。医療情報とお金の問題との両方が絡むので、間違いがあれば大きな問題になるし、問題が複合的になる要因が多いプロダクトでもあります。それも敬遠される原因ですね。

ー シリーズBラウンドへと進むヘンリーが、今後抱えるであろう課題としてどのようなことが考えられるでしょうか?

福島:日本でも世の中で一番優秀な方々が起業する時代になったと思っていて、そのためにタレントの取り合いという人材問題も顕在化しています。特にエンジニアは国内でもパイが限られていますので、国内外のエンジニアのリソースを確保できるかが、経営発展の必要条件になってきています。チームを集められたとしても、そのメンバーをしっかりとまとめていくリーダーシップの部分がより従来よりも強く求められます。

その観点でいうと逆瀬川さんと林さんが話されていた、短期的には合理的に見えないプロダクト開発と、それを実現するチーム作りという難易度の高い二つの事柄ができているのが、ヘンリーに投資した一番の理由といっても過言ではありません。

その観点で聞きたいのですが、プロダクトができるまで病院版で3年くらい、外来機能だけでも2年くらいかかる難易度の高いプロジェクトで、チームのモチベーション維持はどうやったんですか?

逆瀬川:そこでモチベーションが落ちるとは、実は思っていなくて…。

福島:そういう人は採用してなかったってこと?

逆瀬川:入社のときにけっこう難しいことは伝えていましたね。

林:それと、プロダクトができあがる前から、ちょこちょこ売っていたというのは大きいです。ヘンリーのメンバーは全員ゼロから勉強して、医療事務の現場で働く経験をメンバーにもさせるとか、やっぱり他の会社の営業とか顧客対応の方と比べて、対応できる知識の幅が全然違います。「Henry」という製品とともに、企業としても顧客に気に入ってもらっています。

福島:潜在的な顧客からの期待を感じながら開発を続けられた、という感じですかね。

逆瀬川:ビジネス的に金額規模が大きくて、世の中に受け入れられそうだという認識を共有できていたこと、リリースできれば導入してもらえることも分かっている状態がずっと続いてたことですね。先に顧客を獲得してから導入する形でセールスしていたのも期待感を維持するためで、実際にクリニック版をリリースしたら売れて、「思っていた通りだ」と確認できたのが、ここまでモチベーションが落ちずに進めた理由だと思います。エンジニア側も、もっとよくできるけどまだ直せていない部分に対する完成へのモチベーションがキープされている感じです。

次にジョインする人は、成長速度をドライブさせる「社長」を任せられる人

ー 次のラウンドに向けて、どんな人と一緒に仕事をしていきたいと考えていますか。

林:ヘンリーを始めたころからずっと逆瀬川とは同じ話をしていて。ある程度のフェーズまで行ったら、社長は自分たちじゃなくてもいいんじゃないかと。代わりに社長ができるくらいの力がある人に入ってほしいです。会社作りの面倒くさいところはだいたいやったと思っているので、ここから先の、広げるところを受け持って世の中に大きな価値を残したい人にぜひ入社してもらいたいです。「僕と逆瀬川ではできないけど、自分だったらできる」という活躍のイメージを持っている人に入ってほしいなと思います。

逆瀬川:そういう人たちがいたほうが、僕らもよりアップデートされてより強くなれるので、切磋琢磨できる環境が社員だけでなく経営レベルでも構築できるのはメリットですね。

福島:スケールのある組織をドライブさせた経験値や肌感のある人がいいですよね。

この仕事を始めた当初、サブ担当としてしばらくの間、メルカリ社の経営会議に参加させていただく機会がありました。ちょうど現会長の小泉文明さんが経営に参画した直後のタイミングで、山田進太郎さんをはじめとする創業経営陣がプロダクトを集中してアップデートしていたなかに小泉さんがMIXIからジョインしたことで、あの当時のスタートアップでは異例のサイズのファイナンスを実現して、一気にマスプロモーションをかけていったんです。売上のないスタートアップのテレビCMなんて考えられなかった時期に大きな一手を打って、その勢いがユーザーはもちろんのこと多彩な人材を呼び込んで、とんでもないスピードで進化していきました。

他の投資先でいうとネクストユニコーンとの呼び声も高いANDPAD社も、CFOとして元マクロミルの荻野泰弘さんがジョインして以降、年間の採用人数やそのペースの目線を大きく上げて、ANDPADの成長スピードが大きく変わったタイミングがありました。

そんな規模感の、桁が二つくらい違うアクションの経験がある人をヘンリーの2人が口説けるかが、いつどのくらいの大きさで世の中にインパクトを与えられるかという試金石になると思います。

逆瀬川:間違いないですね。また、今後ヘンリーに入ってくれる方に対しては、より深く現場に入って得られた知識をベースに、自分でルールメーキングしてより良い世界を作れるところが一番大きな価値だと思います。

林:ヘンリーの掲げる「ノーベル平和賞を目指す」というスローガンを、ムーンショットだと思わず「いいね」と感じてくれる人を共通して採用していました。これからジョインしてくれる人とも、その思いは共有したいです。

福島:そうですね、プロダクトの先にルール作りやルールのアップデートまで関与できる可能性のある領域は、そんなに多くないですよね。多分、40年〜50年前なら官僚の仕事だったものが、起業家と、起業家を支えるベンチャーキャピタル業界に預けられているのが今の時代です。もしかしたら逆瀬川さんも林さんも、そのころだったら経産省とか厚労省にいて、同じことに取り組んでいたかもしれません。民間からでも世の中のアップデートができる時代だし、スタートアップに対する政府の期待も大きくなっているのは明確なので、自分たちがエビデンスを作ってルールを刷新し、アップデートしていくための提言をする会社は増えています。ヘンリーもその中核になれるんじゃないかと期待をしています。

顧客に向き合う真摯な姿勢と粘り強さを兼ね備えたこのチームならできるかなと思っていますし、僕らも最大限に協力して、よいチーム作りをサポートします。

【鼎談者プロフィール】

グロービス・キャピタル・パートナーズ/パートナー 福島智史

ドイツ証券株式会社 投資銀行統括本部にて、M&Aアドバイザリー並びに資金調達業務に従事。2014年4月グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。東京大学経済学部卒。

ヘンリー/共同CEO 逆瀬川光人

楽天にて複数の新規事業開発を経験。2016年にウォンテッドリー株式会社に転職し、新規事業室長として、ビジネス・マーケティング領域全般を統括。デザイン、営業、マーケティングを担当。林とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業。2020年より慶應義塾大学病院眼科学・研究員を拝命。

ヘンリー/共同CEO 林太郎

学生時代、アフリカで日本の中古重機をレンタルする新鋭スタートアップで現地リーダーとして活躍。楽天株式会社入社後、楽天カード全体のSEOマーケティング業務や、楽天市場・楽天カードのビッグデータ分析等を実施する。逆瀬川とともに2018年5月に株式会社B&Wを創業し、2021年10月に社名を株式会社ヘンリーに変更。

インタビュー:Go Tsuneyama


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