見出し画像

地方が移住者・定住者を増やすには

地方自治体の移住者・定住者増加政策について分析をしたいと思います。
移住者・定住者増加政策で成功を収めているような自治体には2つのパターンがあると思います。

(1)自然環境特化型自治体

Ex. 千葉県一宮町のサーフィン、北海道ニセコ町のスキー

近年は個人が趣味を満喫し、生活の質を高める動きが盛んです。それに伴い、各人が生活を見直し、自身の幸福感を高めるために移住をします。


例えば、一宮町は東京五輪のサーフィン会場になっている地域です。
『一宮町転入者アンケート集計結果』では一宮町を居住地として選んだ理由では、「豊かな自然環境」「サーフィン」「不動産価格の安さ」「都心へのアクセスの良さ」が多く挙げられています。

この中で、他の自治体と明確な差別化なるのは「サーフィン」であり、サーファーを惹きつけています。実際に、下図(RESAS)より社会増減を見ると、2013年〜2019年は転入者数の方が多く、人口の流出を防いでいると言えます。

年齢階級別純移動数_一宮町


また、他の地域としては、世界有数の雪質の中でスキーが楽しめる

ニセコ町が挙げられます。

なお、スキーだけに頼るのではなく、カヌーや登山夏のアクティビティをも充実させ、一年中楽しめる環境にまで拡充させています。そして、観光地としての町の魅力をさらに高めるため、ニセコ景観条例も制定されています。


さらに、日本人だけでなく、外国人の移住者をも呼び込むことに成功している点が特徴的です。(下図はニセコ町HPの「ニセコ町人口統計」より)

ニセコ町人口統計

もちろん、このタイプの自治体も移住者・定住者を呼び込むためには、当該地域の自然環境の魅力を発信する必要があります。そのため、自然環境の存在だけで人口流出を食い止めているわけではないはずです。

(2)生活環境型自治体 Ex. 通常の自治体

(1)自然環境特化型自治体ほど、自然環境に強みを持たない自治体はこちらに該当すると思われます。人口減少に悩む地域は基本的に自然環境が豊かです。そのため、スキーやサーフィンといった特定分野で日本有数・世界有数の自然を誇ることが難しい場合は、他の自治体との差別化に苦しみます

従って、このような自治体は以下3つの政策を土台にして、移住者・定住者を呼び込みます。(この3つの政策は「移住・定住施策の好事例集(第1弾)」を参考にしました。)

(a)地場産業の活性化と雇用の創出

(b)子育て環境の充実(特色ある教育・子育て支援)

(c)コミュニティづくり(移住者予備軍創出・定住後支援)

(a)地場産業の活性化と雇用の創出について

若者が移動する理由として、「進学」「就職(転職)」「転勤」の3つの理由が挙げられます。

「若年層における東京圏・地方圏移動に関する意識調査」2019年4~5月調査より「あなたが各年に住民票を移した理由として最もよくあてはまると思う選択肢を1つお答えください。」に対する回答参照。そもそもこの3つに関係しない場合は「その他」になってしまいますね。)

「進学」によって若者を地域に呼び込んだとしても、その後の「就職」「転勤」によって転出する可能性が十分あるため、効果はイマイチです。

従って、その地域で「就職(転職)」先が存在することが若者の移動に大きな影響を与えます。

地域に雇用を創出するにしても、1つの大企業やその工場を誘致する場合には、その企業の業績に大きく左右される可能性があります。(そんな可能性が顕在化した例としては、三重県亀山市のシャープの工場誘致でしょう。こんな記事があります。https://gendai.ismedia.jp/articles/-/32524 )

これでは、地域経済が不安定化します。むしろ、地域経済を支える地場産業を担う複数の中堅中小企業の雇用創出を支援したり、新規の起業者を支援することで、地域経済の基盤を強化に繋がります。

(b)子育て環境の充実(特色ある教育・子育て支援)について

移住者・定住者を呼び込みたい理由は、人口減少に悩むためです。そして、至極当然ですが、子育て環境を充実させて少子化を食い止めることで解決できます。また、子育てと移住意欲には強い結びつきがあります。

「若者の移住」調査』によれば地方移住に関心のある既婚世帯が地方移住に興味関心のある理由(複数選択可)としては、「自然にあふれた魅力的な環境」「子育てに適した自然環境」「子供の教育・知力・学力向上」が上位3つの理由です。

よって、子育て支援政策は「移住者・定住者の増加」+「少子化対策の根本的解決」の2つを図れると言えます。


なお、近年は情報通信技術の発達でどんな場所でも働けるような若者も存在します。そのため、(a)の雇用創出だけでは取りこぼしが生じます。

(c)コミュニティづくり(移住者予備軍創出・定住後支援)について

移住者・定住者の予備軍となるような関係人口を創出するため、お試し移住や地域の魅力を発見する企画が催されます。そこで、コミュニティを形成し、移住・定住に向けた不安を解消することが移住・定住のハードルを下げます

また、(b)と関連しますが、移住後に生じる不安、特に子育て面をも解消できるコミュニティも地縁のない移住者にとっては重要です。コミュニティ形成を移住者・定住者に委ねることもできますが、サポートできるに越したことはないと思います。

まとめ

以上の2つに分類しましたが、この政策を進めれば成功するというものはありません。地域ごとに+(α)を加え、自然環境+(α)、(a)~(c)+(α)によって、地域の魅力をさらに高める差別化の必要性が今後もますます重要になるはずです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?