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バッシングの根本

  運が良いとか悪いとか
  人は時々 口にするけど
  そういう事って 確かにあると
  あなたを見てて そう思う
         さだまさし『無縁坂』


 あらかじめ言っておきたいのだが、
 私はさだまさしさんが好きだ。
 小学生の頃に『無縁坂』の上記歌詞を聴いて以来、
 この方は天才だと心から思っている。

 しかしながら『関白宣言』発表時における、
 さだまさしバッシングが、
 きちんと音楽を聴いてくれれば分かるものを、
 流行りに乗った狭量な主婦達の愚行であったかのように、
 まとめられつつある事に関してだけは、
 異議を申し立てたい。


 当時の主婦、しかも底辺に近い庶民階層に、
 「きちんと音楽を聴く」余裕どころか、
 機会すら持てるものか。

 よしんば機会が設けられたとして、
 個人の感覚で受け止めた感想など抱けはしない。
 家長の感想こそが正義になる。

 主婦達が勘違いする以前に、
 夫どもがうわべだけを聴いて頷いて、
 「さださんがこう歌ってるんだからこれが正しい。
  お前もこの通りにしろ」
 とかしたり顔でぬかしていたんだよ。

 「なんて歌を出してくれた💢」
 とひと言物申したくもなるだろう。
 怒りの矛先はもちろん間違っていた。
 さださんに向けるべきものじゃなかったけれども。


 繰り返すが私はさだまさしさんが大好きだ。
 『遥かなるX'mas』は日本全国民が、
 年に一度くらいは座して聴いて欲しいと願っている。
 『天然色の化石』のサビ部分、

  ♪あなたが永遠に幸せでありますように

 さえ歌い続ければ、
 私の作品など不要ではないかとすら感じている。


 しかしながら勝ち負けではなく、
 それが実態だ。

 世間で思われているほど裕福ではなかったと、
 さださんは述懐しておられるが、
 それも真実であろう御苦労をされただろうとは思うが、

 同県民とは言え我が家は谷合いの限界集落、
 佐田家の御長男に生まれついた時点で、
 我々の感覚ではお坊っちゃま様々だ。

 異なる世界における、
 異なる言語で歌われた歌であったから、
 我々には理解し切れず不快に感じたまでだ。

  おどみゃ島原の
  おどみゃ島原の ナシの木育ちよ
  何のナシやら 何のナシやら
  色気無しばよ しょうかいな
            『島原の子守唄』

 が通訳無しで染み渡る土地柄なんだこちとらは。
 「梨の木が生えた家で生まれました」
 なんて訳が付いている時もあるがごまかすんじゃねぇ。

  おどま かんじんかんじん あん人たちゃよか衆
                  『五木の子守唄』

 も近い土地だし染み入るんだが訳してくれるかな?

 明石家さんまさんが口ずさむ度に、
 さんま御殿では「暗い」「気持ちが悪い」と、
 失笑が起きるだろう。
 (さんまさんには話題に出してくれた時点で有り難く思う)

 「子守唄」とは奉公に出された子守娘が唄った歌だ、
 という知識までは必要無いが、

 同じ国土にも異なる世界に、
 異なる言語が存在する事くらいは、
 認識して頂きたいと思う。

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