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0159:役所と法律

 行政は、民事法の他に、行政特有の多数の法令の規定を受けている。いわゆる「行政法」だ。一般的には、組織の組織体制を規定する行政組織法、行政に権限を与えたり逆に縛ったりする行政作用法、そして行政の違法・不当な判断と戦うための行政救済法の三つに分類される。

 日々の役所の業務に様々な関わり方をする中核は、やはり行政作用法だ。現実に出来する様々な出来事に法令を当てはめ、為すべきことを為し、戒められるべき則を守る。役所とはそのような「法の解釈と適用」の現場だ。

 ただし、部署によって法令をあまり意識する必要のないところもあれば、日々条文解釈と取り組まねばならない部署もある。行政を大きく規制行政・給付行政・支援行政そして内部管理に分けると、規制・給付は法律と密接に関わり、給付を除く支援は比較的に法律上の権限や縛りがなく、内部管理はいろいろ、という感じだろうか。

 規制行政とは、例えば悪質な事業者に業務停止命令を掛けたり、誇大広告について訂正広告や改善などの措置命令を発出するものだ。いわゆる不利益処分、法令が行政に与えた取締の刃=行政権限であり、不利益処分を受けた側はその内容に応じた負担を被ることになる。当然行政が恣意的に行使していいものではなく、要件事実の認定を慎重に進めなければ取消訴訟で敗訴の憂き目に遭う。

 給付行政とは、例えば生活保護などの扶助費の給付に関わるものだ。どのような人にどれだけの額を給付するかは、法律・政令・省令・通達通知・行政実例など膨大な決まり事によって決まり、担当職員の裁量の働く余地は基本的にない(実務運用上の例外は今はさておく)。金銭ばかりではなくサービスの提供もある。その代表は医療で、私たちは医療機関を受診する際に被保険者証を提示すれば、窓口では自己負担額(若人一般は3割)のみ支払えば医療行為を受けることができる。これはサービスの現物給付だ。その対価の残り7割を、医療機関は国民健康保険団体連合会(国保系)または診療報酬支払基金(社保系)に請求し、これら団体が保険者に請求して医療機関に支払う仕組みになっている。その全ては法令の規定に基づいている。

 支援行政とは、広義には給付行政を含むこともあるが、今はひとまず給付行政を除いた部分を指している。例えば農林水産部門で事業者の相談に乗る。例えば地球温暖化対策で啓発活動を行う。それは規制や給付のような厳格なルールは必要なく、公共課題を官民で解決するための行政側の創意工夫の余地の大きな活動だ。

 行政の各部門は必ずしも綺麗に上記の区分を当てはめられるとは限らない。それでも自分の公務員人生を振り返ると、規制行政を担当したことが5年、給付行政は2年、内部管理が5年、残りは支援行政と大まかに言えるだろう。法令運用は間違いなく規制行政・給付行政で鍛えられ、その感覚が他の領域でも生きたと実感している。

 本日のヘッダ画像は島根県津和野町・津和野城趾に登る途中(太皷谷稲成神社表参道)から撮影した津和野線の電車。さだまさし「案山子」の風景だ。

■本日摂取したオタク成分
『刀使ノ巫女』第6~7話、淡々と流し観。『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』第8話、戦場モノだねえ。

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