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映画『旅するカジの木 倭文(しづり)』

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 言葉に替えてしまうのは無粋だが、
 それは「秩序(order)」
 と呼び表される力ではなかっただろうか。

(文字数:約2800文字)


   『倭文(しづり) 旅するカジの木』
    (こちらが正式なタイトル表記ですが、
     記事のタイトルは映画視聴時の、
     オープニングロゴの流れ順にしました)
    北村皆雄監督 119分

    大阪では十三じゅうそうのミニシアター、
    第七藝術劇場にて、
    6月21日まで。


ミニシアターまでアナログで

  大阪メトロの御堂筋線で、
  西中島南方駅まで行っちゃえば、

  阪急線の南方駅で乗り換えて、
  十三までひと駅で便利。

  と思いきや、
  十三駅から第七藝術劇場までの、
  行き方をメモした紙を忘れちゃった。
  いや〜ん私ってばドジっ娘。てへっ♪
 
  とは言えそりゃ手書きでメモしたから、

  西改札から出て、
  喜八州きやす総本舗を横目に、
  アーケードを抜けて、
  SAKAECHOのゲート下を通ったら、
  ボウリングのピンが目印の、
  サンポードビル6階、

  って全情報を記憶してたから、
  迷わず来られたよ。


木の皮から糸を取って作った布の話

  誰が観んねん、

  と呆れられそうだが、
  現に13時40分上映開始の場内は、
  多めに見積もっても、
  客席四割程度の埋まり具合だったが、

  私が観るんだよ。

  麿まろ 赤兒あかじ率いる大駱駝艦だいらくだかんと、
  コムアイ(@水曜日のカンパネラ)が、
  神々に扮して戦うってんだよ?

  そりゃ観るだろ!

  彼らと彼らの世界観を、
  ある程度知っていて、
  お好きな方には分かって頂けると思うんだが、

  そんなん、
  そこはかとなく気品を漂わせたドエロだよ。

  観るっきゃないだろ!!

  大駱駝艦の皆さんの、
  奇妙独特でありながら、
  いかにも星の神々らしい、
  笑い声が繰り返される時点でトリップするよ!

  私はな!
  誰しもに共感されろとは思わんが。

  あ、あとナレーションが、
  モデルの冨永愛さんってのも粋です。


それはともかくあらすじだ(ここからだ)

  天上界から遣わされた
  二柱の武神は、
  地上の邪悪な神、草木、
  石の類のものをみな平定した。
  征伐できなかったのは
  星の神だけだった。
  それで織物の紙〈倭文〉を
  派遣すると服従した。
         『日本書紀』より

オフィシャルガイドブック6p 

  京都の帯匠、誉田屋源兵衛十代目当主、
  山口源兵衛さんから、
  「しづり」で帯を作りたい、と聞かされた、
  監督の北村皆雄さんは、

  調べていくうちに古代の神話に魅せられ、
  武力で制圧できなかった星の神を、
  服従させた「衣」の力に興味を抱く。

  本作はつまりその謎を、
  (可能な限り)解き明かすための映画。


実はみんぱくシンポジウムで予習済み

  そもそもこの映画を知ったのは、
  民族学博物館でのシンポジウムで、 
  監督の北村皆雄さんが講演者だったから。

  15分くらいの短縮版も視聴済みだったし、
  新たに知った知識は、

  ・樹皮布は第二の皮膚
   (布を纏うことでヒトになれる。)
  ・長野県諏訪神社の神紋はカジの木
  ・徳島県木頭村では今も樹皮布を作る
  ・日本古来の染料、水銀朱とベンガラ
  ・大阪府羽曳野市(割と近隣地域)に、
   ベンガラ職人の方いらっしゃる

  くらい。

  まぁ知識量は実のところどうだっていい。
  要は厚みだ。

  長野で採取したカジの木を、
  楮布かじふ織の石川文江さんに託して、
  糸にしてもらうところから始まって
  その時点で相当な職人業だったんだが、

  出来上がった糸で、
  先述の山口源兵衛さん、
  染色家の西川はるえさん、
  紙布しふ作家の妹尾直子さん、

  3人の職人・現代作家が、
  それぞれの技術と、
  それぞれの知識を背景にした感性を駆使して、
  それぞれの倭文しづりを創るというね。

  職人好きの職人リスペクターには、
  イントロからサビまで全てがたまらねぇよ!
  正直眼福と申し上げて差し支えないよ!

  正味な話、
  北村監督が創る神々の衣装も含めて、
  それぞれの必殺倭文を繰り出す、
  文化的な特撮戦隊ものと思いながら観て、
  あながち間違ってないんじゃないだろうか。

  山口源兵衛さんが着て歩く、
  お着物の仕立ての見事さときたら、
  映画か!(映画だった。汗)
  って思ったしな。


とは言え観客席でぐでだら

  いやさー。
  個人プレーヤーの小説家としては、
  観ながら切なくなっちゃってさー。

  現実に材料と技術と完成品が存在して、
  その工程が映像として記録されてもいて、
  もちろんその裏側には豊かな人脈による、
  関係性と協力体制も尽力して、

  それら全体を通した圧倒的な説得力を前にして、
  私一人が書き遺せる程度の、
  文章総量の軽さに薄っぺらさときたら……!

  おかしいな。
  なぜ私は人生の大半を、
  孤軍で奮闘しているのだろうか。

  いやそこが哀しいわけでは実は無い。

  単独個人である意義や役割も、
  集団や人脈とはまた別に、
  存在してはいないかと、
  いるのではないかと、
  日々暗中模索しているんだが、
 
  そこを見出せる可能性があるのは、
  やはり集団じゃないだろう。
  個人プレイヤー側だろう。

  とか内心忸怩たる思いを馳せていたら、

  カガセオ(星の神)は暗闇の中で輝く

映画中のナレーション

  とか聞こえて単純に胸が熱くなったね。

  私自身もカガセオ側に属する存在だろう
  (ただし九州起源)と思っているからね。


神々の姿で終幕

  そりゃ冒頭で世界観に引き込んだからには、
  現実世界に引き戻すのも神々の役割だよな。

  やはりそこは映像の力すさまじいと思うんだが、
  言葉以外の内容が、
  神々パートには表現されているから。

  私文章でそれやろうとするから、
  我ながら矛盾してるし時々しんどいんだよね。

  ってか今書こうかどうか迷ってる話と、
  中心に潜むものは割とかぶってるっぽい。
  舞台こそ九州・西日本側だけど。

  布を纏わない間はじゃあ何者だ、ってのと、
  服従した、だけだよな征伐されずに、ってとこだ。



  秩序の力、
  (これは私の解釈であり、
   劇中ではあくまでもマジカルな神秘の力、
   といった感じに表現されているが)

  コイツはわりかしあらがい難いかもしれない。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。  

  

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